表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十三章 四十人の大盗賊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

189/422

拷問のやり方

「退屈だ」


 歓楽街からほど近い、どこにでもありそうな普通の町のオープンカフェ。

 そこに、二人の男女がいた。

 男は退屈さを隠そうともせず、椅子に寄りかかり大きな欠伸をしている。

 女は何も言わず、暇つぶしなのか羊皮紙に絵を描いていた……絵といっても、落書きのような……女の近くに座っていた、禿げ頭の中年男性の絵だ。

 男は言う。


「なぁ、どうする? こんなフツーの町に、オレらの仲間になれるやつなんているワケねー」

「……じゃ、どうすんの? ノルマ二人……『四十人の大盗賊(アリババ)』のメンバー補充。全員揃わないと、次の盗みができないじゃん」


 女の意見に、男は「だよなぁ~」と欠伸をして呟く。

 黒いボサボサの髪。ブラウンの擦り切れたジャケットを着ている。外見はどこにでもいそうな格好だが、男は『四十人の大盗賊(アリババ)』の一人、『大鎌』のショディケルという戦闘員。

 女は、神官のようなローブを羽織っているがボロボロだ。ローブの中は派手なシャツとスカートを履いており、耳には大きなイヤリングが付いていた。

 彼女は『三種魔法(トリニティ)』のジュビーナ。ショディケルと同じく、戦闘員の一人である。


「とりあえず、仲間は集められませんでしたー……で、集合場所行くか」

「それしかないじゃん。ま、どうせ他の連中も似たようなモンでしょ」


 特に悪びれることなく、二人はケラケラ笑いあった。

 そして───……そんな二人のいるテーブルに、一人の少女と少年が近づいて来る。


「アンタら、『四十人の大盗賊(アリババ)』ね?」

「あ?」

「は?」


 ヒジリ。

 ヒジリは言う。


「うん、プレセアの言う通りね。コイツら、小声で話してたみたいだけど、アンタの『精霊』はちゃーんと聞いてたみたい。どうする?」


 誰かに話しかけている。

 ショディケル、ジュビーナの表情が変わり───……。


「───っごぁ!?」


 ヒジリの手が、ジュビーナの喉を掴んだ。

 そして、掴んだままヒジリはどっかり座る。


「騒ぐとへし折るわよ」


 すると、ジュビーナの首に『首輪』が巻かれる。

 ヒジリが能力で作った『オリハルコン製の首輪』だ。

 ジュビーナの顔が青くなり、ショディケルが何かをしようと手を動かした瞬間。


「……騒ぐと、刺す」


 イーサンがショディケルの背後に回り、籠手から伸びた仕込みナイフが、ショディケルの首にチクッと刺さった。


「……チッ。詰んだなこりゃ」

「わかってんじゃん。じゃ、移動しよっか」


 ヒジリはニッコリ笑い、立ち上がった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ヒジリたちが向かったのは、町から少し離れた場所にある廃屋。

 ボロい椅子、テーブル、暖炉、破けた毛布などがある、小屋だった。

 ショディケルたちは、ヒジリが金属で生成した拘束具を手、首に巻き付け、椅子に座らされる。

 ヒジリは「ぼろいし、補強しておこっと」と、ボロボロの椅子を金属で補強する。

 ショディケルは、フンと鼻を鳴らした。


「で? オレらを捕まえてどうするんだ? もしかして入団希望か? そんならこんな真似しなくても───……」


 次の瞬間、イーサンがショディケルの顔面を殴った。


「どこだ」

「っぶふ……ってぇなぁ。なにがだよ?」

「姉ちゃんはどこだ!!」


 ショディケルは、ニヤニヤしながらイーサンを見る。


「知らねぇよ。ばぁ~か」

「ッッッ!!」

「やめな。こーいうの、痛めつけてもずーっと笑ってるタイプだから」


 ヒジリがイーサンの手を掴んで止める。

 そして、ジュビーナが気づいた。


「あんた、S級冒険者『金剛の拳(ヘラクレス)』だね? なーんか見たことあると思った」

「お、知ってる? なら、抵抗しても無駄ってわかるわね」

「かもね。アタシらも『四十人の大盗賊(アリババ)』の戦闘員だけど、実力は下から数えた方が早いし。ま、かないっこないわ」


 ジュビーナはあっさりあきらめた。

 そして、ニッコリほほ笑む。


「ね、取引しない? あたしらが持つ情報は全部あげる。だからさ、逃がしてちょーだい」

「お、いいなそれ。オレからも頼むぜ」

「…………」


 ショディケル、ジュビーナ。

 ニヤニヤと、何を考えているのかわからない笑みを浮かべていた。

 どこまで本気なのか。だがヒジリの答えは最初から決まっていた。


「ま、どうするかはアタシが決めることじゃないわ。ただホントのこと話さないと、たぶんアンタら死ぬわよ」


 すると───……小屋のドアが開いた。

 入ってきたのは、顔を真っ青にしたクレア、表情を殺したプレセア。

 そして───手にバケツを持つハイセだった。


「遅くなった」

「ん。ね、コイツら情報くれるって言うけど……どーする?」

「その情報が本物かどうか確認する術がない」


 バケツを、ショディケルとジュビーナの近くに置くハイセ。

 

「「っ!?」」


 二人は驚愕した。

 バケツの中には、大量の、さまざまな『害虫』が入っていた。

 ハイセはイーサンに言う。


「イーサン。一つ、教えておく。相手から情報を引き出すために行う拷問は、いかに相手を長く苦しませるかにかかってる。相手が心の底から絞り出した『本音』を聞き逃すな」

「お、おい……お前、何する気だ?」

「ね、ねぇ……その虫、な、なに?」

「人間は痛みに慣れると耐性が付く。意外にも痛みには強いんだ。だから与えるのは快感か、嫌悪感。こっちは慣れるのに時間が必要だ」

「は、はい」


 ハイセはここに来て一度も、ショディケルとジュビーナを見ていない。

 当たり前を語るように、イーサンに授業をするように語っている。

 そして、ようやくショディケルを見た。


「───っ」


 ショディケルは、ハイセの目を見て怖気が走った。

 自分を見る目が、モノを見るような、人形を見るような、何の感情も籠っていない。


「質問。『四十人の大盗賊(アリババ)』の本拠地は」

「お、オレらの本拠地はダンジョンだ。歓楽街から北にある、人間界では屈指の難易度を誇る『黒の砦』だ。その中層にある『大食堂』が本拠地なんだ……そ、そこまで行くのはS級冒険者でも難しいからな。しかも、大食堂までの道は、『四十人の大盗賊(アリババ)』の正規メンバーしか知らねぇ」

「…………」


 ハイセは、ムカデを一匹掴み、ショディケルの耳の穴に近づける。


「質問。『四十人の大盗賊(アリババ)』の本拠地は」

「う、嘘じゃねぇ!! ま、待て、おい、やめ!!」


 ハイセは、ショディケルの耳の中にムカデを入れた。


「質問。『四十人の大盗賊(アリババ)』の本拠地は」

「っぐぁぁx!? っひ、っき、ぅあぁぁ……」


 そして、ショディケルの髪を掴み、顔を近づける。


「質問。『四十人の大盗賊(アリババ)』の本拠地は」


 ◇◇◇◇◇◇


 数時間後。

 小屋の外に出ていたヒジリたちは、少し離れた場所でテントを張っていた。

 すると、ハイセが小屋から出てきた。


「終わった」


 何の感情もなく、それだけ言う。


「あ、あの……二人は?」

「殺した。聞きたいことは全て聞いたしな」


 ハイセはアイテムボックスから火種を取り出し、小屋に投げた。

 そして、小屋が一気に燃え上がる。


「さて、情報の整理をするか」

「「「「…………」」」」


 燃え上がる小屋に興味をまるで持たず、ハイセは四人に言う。

 イーサンは、ごくりと唾をのむ。そんなイーサンに、ヒジリは言った。


「あれが、非情に徹したハイセね。見てわかりにくいけど、『四十人の大盗賊(アリババ)』を完全な敵と認識してる。そこに情もない。やるべきことをやったら始末する……」

「…………」

「たぶん、『四十人の大盗賊(アリババ)』のメンバーが子供でも、命乞いをしても、ハイセは殺す。本当に、『四十人の大盗賊(アリババ)』はアホなことしたわね……正直、こんなハイセ見たくないし、敵に回したくないわ」


 プレセアも、クレアに言う。


「完全にキレてる」

「は、はい……」

「クレア。あなたに言っておく」

「え?」

「仮に『四十人の大盗賊(アリババ)』の正規メンバーが子供で、命乞いをしてもハイセはきっと殺す。その時、あなたは『可哀想だから』とか『見逃してあげてください』とか言うかもしれない。でも……そんなことを言ったらきっと、ハイセはあなたを置いていくわよ」

「…………」

「ハイセはもう決めてる。シムーンを攫った『四十人の大盗賊(アリババ)』は全員殺す。その理由が何であれ、誰であろうともね。あなたも忘れないことね……敵の手にはシムーンがいる。情けをかけて、甘さを捨てなければ、傷つくのはシムーンよ」

「…………」


 プレセアはそれだけ言った。

 クレアはきっと、プレセアに言われなければ……もしかしたらわからなかったかもしれない。

 

「シムーンちゃん……」


 そして、クレアは拳をグッと握りしめ、燃え盛る小屋を見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[一言] 灰児がカイジの巻。(• ▽ •;)(伊藤さんとこの人が、利根川さんにって漢字の。)
[一言] 盗賊相手は容赦無しっすね、そう言えばサーシャも40人瞬殺してた。 あとまだ28人。本拠地ごと爆砕だと生き残るかもなんで、確実に消して行くのかな。ハイセの怖さを知らしめることになりますね。 …
[気になる点] クレアがこのアリババ編でどう成長するのか気になる。ハイセの行動に疑問を持ち離れるか。それともハイセの行動の真意を理解し師弟の絆が強くなるか。 [一言] ハイセの行動に関しては納得しか無…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ