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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十二章 それぞれの日常

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ソードマスター、二人の休日

「あ」

「ん?」


 ある日。

 花屋で花の種を物色していたサーシャは、私服姿のクレアとばったり出会った。

 クレアは周囲をキョロキョロ見てサーシャに頭を下げる。


「ど、どうも」

「ああ。こんにちは……ふふ、休日かな?」

「は、はい……えっと」


 クレアは緊張している。

 だが、サーシャは特に緊張せず、いくつかの花の種を選び購入。アイテムボックスに入れ、クレアに向き直った。


「どこかに行くのか?」

「い、いえ……暇なのでブラブラしてただけです」

「そうか。暇なら、少し付き合わないか?」

「え……」

「怪しいところじゃない。すぐそこだ」

「…………」


 少し悩むクレア。

 クレアにとってサーシャは『超えるべき壁』だ。サーシャがどう思っているか知らないが、クレアからしたらあまり仲良くする相手ではない。

 でも、笑顔を浮かべ、好意的な目でクレアを見るサーシャの誘いを断るのも悪い気がするクレア。

 ほんの少しだけ悩み、小さくうなずいた。


「ま、まあ……いいですけど」

「よし。じゃあ行こうか」


 サーシャが歩き出し、クレアはその一歩後ろに付いて歩き出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 到着したのは、王都から出てすぐの農園だ。

 

「ここは、貸し農園だ。この中で野菜や果物、茶葉や薬草などを育てられる。冒険者による護衛が常に付いているし、土の品質や栄養状態もいい」

「ここに用事ですか?」

「ああ。私はここの一角を借りているんだ」

「……わざわざ、ここに?」


 クラン『セイクリッド』の土地なら、いくらでも育てられるだろう。

 そう思っていると、サーシャが言う。


「知り合いのエルフもここの土地を借りていてな、困ったことがあればすぐに相談できるようにと、ここを借りたんだ」

「あ、もしかして……プレセアさんですか?」

「ああ。そういうわけで、今日は花の種を植えに来た」


 サーシャが借りたのは、部屋一つ分ほどの花壇だった。

 きれいな柵で覆われ、カラフルな花が咲いている。

 サーシャは、土が剝き出しのところに種を植え、如雨露で水を与える。


「綺麗に咲いてくれよ……」

「……S級冒険者のサーシャさんの趣味が、花壇のお世話」


 ぽつりと呟くと、サーシャは苦笑する。


「らしくないか?」

「え」

「実は、こういう趣味を見つけたのはつい最近でな……それまでは、食う、鍛錬、依頼、寝る、くらいの生活だった」

「そ、そうなんですか?」

「ああ。女らしくないだろう?」


 水をあげると、サーシャは如雨露を置く。


「クレアには、何か趣味があるのか?」

「そうですね……冒険者になる前は、刺繍とかやってました」

「刺繍……す、すごいな」

「簡単ですよ?」


 と、クレアがポケットから出したのは、見事な鷹の刺繍が入ったハンカチだった。あまりにも丁寧、精巧な刺繍にサーシャは唖然とする。


「こ、これを刺繍したのか?」

「はい。自分で言うのも何ですけど、私けっこう器用なので」

「…………おお」


 ハンカチを見つめていると、クレアのお腹がキュ~っと鳴った。

 クレアを見ると、顔を赤くして俯いてしまう。


「はは。お腹が空いたのか……よし、付き合ってくれた礼だ。お昼は私がごちそうしよう」

「そそ、そんな別に」

「気にするな。それに、私もお腹が空いた」

「……じゃあ、せっかくですし」

「うむ。では行くか」


 二人はハイベルグ王国へ戻り、個室のある定食屋へ。

 日替わりランチを注文。料理が来るまでの間、クレアは質問した。


「サーシャさん、最近依頼とか受けてますか?」

「なんだいきなり……」

「いえ。師匠はよく討伐依頼受けてますし、ヒジリさんとかプレセアさんとはたまに会うんですけど……サーシャさんとは全く会わないなぁって思いまして」

「……まぁ、確かに最近は依頼を受けていないな」

「やっぱり……いいんですか? 腕、鈍っちゃいますよ?」


 と、最初こそ緊張していたクレアだったが、無駄口も叩けるようになってきた。

 サーシャとしては何も言い返せない。

 

「クラン運営で忙しい……というのは言い訳か。いちおう、予定はあるぞ」

「予定?」

「ああ。西にある森に住みついたSSレートの魔獣を退治しに行く予定だ」

「あ、クイン・ビーでしたっけ。そんな依頼書があったような」

「そうだ。うちのクランに回されてきた依頼でな、タイクーン曰く、女王バチが完全に巣ごもりするまでまだ時間がある。完全に巣ごもりした時を狙って叩く予定だ」

「巣ごもり……」

「ああ。今は巣ごもりの準備中だ。準備の間は女王も気が立っているし、配下の働きバチも動きが活発化している。巣ごもりすれば、準備で疲弊した働きバチも容易に倒せるからな」

「なるほど……考えてるんですね」

「ああ。そのあとは、『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』で休暇の予定だ」

「休暇!! しかも、世界最大最高の歓楽街でですか!? いいなあ~」


 ここまで話すと、ランチが運ばれて来た。

 今日の日替わりランチはオーク肉の特製ソース掛け。ジュウジュウと鉄板の上で焼けるオーク肉と、ソースの焦げる香りが絡み合い、何とも言えない香りとなっている。


「お、おいしそうです……!!」

「ああ。食欲をそそる……では、いただきます」

「いただきます!!」


 話を中断し、二人はオーク肉を堪能した。


 ◇◇◇◇◇◇


 食事を終え、二人は喫茶店に移動した。

 食事をして解散……とサーシャは考えていたのだが、意外なことにクレアがお茶に誘ったのだ。

 サーシャは果実水、クレアは紅茶を頼み、しばし無言で飲む。

 そして、クレアはカップを置いて言う。


「あの、サーシャさん……いくつか聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

「内容にもよるな」

「……『剣聖』について」

「…………」


 サーシャはグラスを置き、真面目な顔で言う。


「S級冒険者『龍神武剣(ドラゴンエッジ)』クロスファルド・オルバ・セイファート……刀剣系能力者が集まる、刀剣系能力者が誰もが一度はあこがれる五大クランの一つ、『セイファート騎士団』のクランマスター……この世界、最強の剣士にして、刀剣系能力者が敬意を込め『剣聖』と呼ぶ存在」

「ええ。率直に聞きます。サーシャさんは『剣聖』と全力で戦い、勝てますか?」

「不可能だ」


 即答。

 思わずクレアは目を見張る。が、サーシャは続けた。


「少なくとも、今は……な」

「……今は?」

「ああ。以前、一度手合わせをしていただいた。十分の一……いや、百分の一ほどの力で相手をしてもらい、手も足も出なかった。闘気の質も桁違い。美しいプラチナに輝く闘気は、私の黄金とは比べ物にならない強さだ……今だからわかることがある。恐らく、クロスファルド様のあの闘気の色は、本来の輝きではない」

「え?」

「私は、銅から始まり銀、そして今は黄金だ」

「私は、薄い銅から始まって、今は青藍です」

「ああ。恐らく、『ソードマスター』でも、闘気の色には個人差がある。クロスファルド様は意図的に、私と同じ程度まで闘気を薄めて戦ったんだ……見上げても全貌が見えないくらい、高い壁だ」

「…………」

「クレア。最強の壁は高い……ふふ、私程度にてこずるようじゃ、な」

「む……」

「無論。私も超えさせるつもりはないが」


 サーシャは不敵な笑みを浮かべ、クレアを見た。

 二人のソードマスター。クレアとサーシャ。

 クレアは、怖気づいてしまう……なんてことはない。

 むしろ、嬉しそうだった。


「ふふふ。すぐに超えてみせますよ!! だって私には師匠が付いてますから!!」

「む」

「あれ、そういえばサーシャさんと師匠って幼馴染でしたっけ。その辺の話、師匠は全然してくれないんですよねー……サーシャさん、師匠の弱点とか知りませんか?」

「そ、そんなことを聞いてどうする」

「えへへ。師匠との摸擬戦、全然勝てないんですよね。だから、師匠の弱点を責めてみようかと」

「……むむ」

「ということで、何か弱点お願いします!!」

「…………」


 二人のソードマスターのお茶会は、意外にも長く、楽しく過ぎていくのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
以前にも抱いた感想だけど、サーシャより遥かに遥かに強いのに何故に迷宮の踏破をしないのか。
[一言] クレアもエグイ事聞くな(;^_^A サーシャがハイセをセイクリッドから追い出した時はハイセが能力を使い熟せない時だったから戦闘に関しての弱点なんて知ってる方が可笑しい。せいぜい苦手な物や癖位…
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