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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十二章 それぞれの日常

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冒険者専用銀行

 ある日。

 ハイセは、討伐レートS+級の魔獣、『ゼノンタイガー』を解体場へ卸す。

 解体場のリーダーであるデイモンが、タイガーの頭をポンポン撫でながら言った。


「ほぉ、今日はいい感じだな」

「口空いたところで一発。強さは大したことなかったけど、依頼の内容に『毛皮は傷付けるな』ってあったからな。少しだけ苦労した」

「ははは。こいつの毛皮を飾りたいっていう道楽貴族の依頼か。ふーむ……毛皮は大丈夫そうだが、頭蓋骨に亀裂が入ってるな」

「それくらいは勘弁してくれよ……」

「わかってる。こいつの骨を標本にして飾りたいってヤツもいる。依頼じゃないがな……どうだ? 骨、売るか?」

「いいよ。骨なんていらないし……美味いダシでも出るなら別だけど」

「出ない出ない。じゃ、骨も売却……ん、どうしたお嬢ちゃん」

「い、いえ」


 同行していたクレアの顔色がやや悪い。

 勉強のためにとS+級の魔獣討伐に同行したが、やはりS級以上の魔獣が放つ威圧感にアテられたのか、ずっと緊張しているクレアだった。

 ハイセは言う。


「最初に比べたら成長してる。ビビッて漏らすこともなかったしな」

「わわわ!! し、師匠それ言わないでっ!!」

「ははは。仲いいな。麗しの師弟愛ってやつか?」

「…デイモンさん。素材代」

「はいよ。ほれ、あっちで入金するぞ」


 素材のリストを確認し、冒険者カードに入金。

 ハイセは、クレアにも冒険者カードを出すように言った。


「え? わ、私の?」

「お前も戦っただろ」

「そそそ、そんな馬鹿な!? 何もしてないです!!」

「剣は抜いた。戦う意思は見せた。あの虎、お前も敵と認識した。おかげで、ほんの少しだけ注意がお前に向いて、その間に仕留められた……報酬をもらう権利はある」

「でもでも、倒したのは師匠……」

「もらっときな。ひねくれハイセがこうまで言うんだ」

「デイモンさん、ひねくれは余計だって」

「……あう」


 クレアはおずおずと冒険者カードを出す。ハイセはデイモンに渡すと、そのまま魔道具にカードを入れて入金……金貨二百枚ほどクレアの口座に入金された。


「に、二百……お、多くないですか?」

「普通だろ」

「牙五本分ってところだ。ははは、S級にもなると金銭感覚が狂うぜ」


 カードを返すと、クレアは宝物を受け取るように、大事に胸にしまう。


「師匠、ありがとうございました!!」

「ん」

「ははは。おいハイセ、今夜どうよ? 一杯やるか?」

「いいよ。クレア、お前はどうする?」

「お供します!! ───あ、その前に……師匠、ちょっと一緒に来てほしいところが」


 クレアはおずおずと、人差し指をちょんちょん合わせ、上目遣いでハイセを見た。


 ◇◇◇◇◇◇


 王都の中心地、というか冒険者ギルドの真正面にある大きな建物。

 冒険者専用の銀行。ハイセ、クレアは建物を見上げていた。


「お前、金くらい一人で下ろせよ」

「その、来た事ないし、下ろしたこともなくて……手持ち、なくなったんですけど、下ろし方とかわからないし……師匠なら」

「……ったく」


 冒険者専用銀行。

 その名の通り、冒険者専用の銀行だ。討伐した魔獣の素材の買い取り金や、依頼の達成報酬など、この銀行に振り込まれる。

 現金で持ち歩く冒険者も多いが、クランやA級以上の冒険者は、冒険者カードに入金することが多い。

 冒険者専用銀行の隣には、一般用の銀行がある。だが建物の規模は半分ほどだ。

 

「買い物なら、カードでできるだろうが」

「でも、現金あった方がいいですし。それに、冒険者カードで買い物って、あまりしたことないし」


 冒険者カードで買い物。

 ハイベルグ王国の七割以上の店で、カードで買い物をするための『カード決済魔道具』が置いてある。

 現金のみ取り扱いしている店は、昔ながらの商店が多い。

 古商業区の店など、ほぼ全ての店が現金決済だ。ちなみに、ハイセの住む宿も現金のみである。

 ちなみに、これからハイベルグ王国で店を開く申請をする場合、カード決済魔道具の設置が義務である。

 立ち話は終わり。二人は銀行内へ。

 すると、ハイセの姿を見た銀行員が、慌てて近づいてきた。


「こ、これはこれはハイセ様!! 本日はどのような御用で?」

「俺じゃない。こいつが現金下ろすだけだ」

「そ、そうでございますか。何かお困りごとがございましたら」

「いい、すぐ終わる」


 と、銀行員を追い払う。

 すると今度は恰幅のいい男性……店長が来た。


「これはこれは、ハイセ様!!」

「……」


 ハイセは無言で追い払った。


 ◇◇◇◇◇◇


 銀行内にはカウンターが設置してあり、何人もの銀行員が冒険者の対応に当たっている。

 壁際には、大型の魔道具がいくつも設置してあり、クレアはそのうちの一台の前へ立つ。


「これで、お金を出すんですよね」

「『自動窓口魔道具』だ」

「えっと……」

「カードをかざせ」

「は、はい」


 魔道具にカードをかざすと、台の一部が光る。

 

「わ、わわ」

「動くな。魔道具がカードと、お前自身の情報を確認している」


 すると、光が消えた。

 台の蓋が開き、金貨が十枚ほど出てくる。


「わ、出てきました」

「この魔道具は、最大で金貨十枚が自動で出てくる。細かい金額を指定したいときはカウンターへ。そうじゃないときはこの魔道具で引き出すんだ。ちなみに、出てくる金額は預金によって変わる」

「なるほどー……あれ、簡単ですね」

「だから言っただろうが」

「えへへ……師匠、ありがとうございました」


 クレアは、金貨を財布に入れてアイテムボックスへ。

 今更だが、ハイセに聞く。


「そういえば師匠、銀行員さんがすごく気遣いしてますけど……何かやっちゃったんですか?」

「んなわけあるか。まぁ……けっこうな金額を預けてるからな。いい客なんだろ」


 ちなみに、ハイセがこれまで稼いだ金額は、ハイベルグ王国年間予算の数年分を超える。仮にハイセが『全額出せ』と店長に命令すれば『不可能です!!』と泣きつくだろう。

 二人は銀行を出る。


「師匠は現金下ろさないんですか?」

「金はある」


 ハイセのアイテムボックスには、大量の金貨袋が入っている。

 カードに入金することもあれば、少額ならそのまま現金でもらうこともある。もう何年も繰り返しており、アイテムボックスにはいくつもの金貨袋があった。

 クレアは言う。


「師匠、現金の下ろし方、勉強になりました!! 次回からはちゃんと一人で来ます!!」

「ああ」

「えへへ。あの、師匠……お礼がしたいので、そこのカフェに行きませんか?」


 クレアがチラチラ見ているのは、オープンしたばかりのカフェのようだ。

 お礼は建前。本当は自分が行きたいのだろう。

 ハイセはため息を吐いた。


「……仕方ないな」

「やった!! えへへ、ありがとうございます、師匠」


 二人はカフェでお茶を飲み、帰路へ着くのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 冒険者銀行は国営でしょうね、ハイセみたいに身寄りのない冒険者が死んだときの預金、王国に行くのかな? ハイセはほとんどお金使わないからねぇ、銀行(国) からすれば優良顧客っすね 褒章金払って…
[一言] この世界はかなり昔は六迷宮みたいに異世界転移の土地や人が有ったんじゃ無いかな?ノブナガが関係してるかとも思ったけどここまで普通に普及してる所をみるとかなり前からある感じがするかな?魔導具の制…
[一言] 銀行システムもノブナガが関わってそうだが、地球ライクになった結果、富の分配も地球ライクになってそう 地球じゃ富豪の上位1%が全体の富の1/3を握ってるけど、この世界ではどうなんだろうね?
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