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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十二章 それぞれの日常

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盗賊退治~ハイセの場合~


 盗賊。

 盗賊には、元冒険者が多い。

 冒険者には『C級の壁』というのがあり、D級からC級に上がるのは一種の試練と言われている。ただ依頼をクリアしていればなれるわけではなく、C級の依頼をいくつもこなして初めてC級へ昇格できる。

 だが、C級依頼をクリアできないと……D級に甘んじることになる。

 自分より若く才能ある冒険者たちが駆け足でC級を超える姿を何度も見せつけられ、心が折れる。


 戦闘系冒険者として長く戦い続けてきたが、冒険者を辞めてどうなるか?

 最も多いのが、盗賊だ。

 C級に昇格できなかったとはいえ、冒険者としての経験や強さは失われることはない。

 戦う技術で、なんの抵抗もできない村人たちを襲う……その経験が快感となり、元冒険者は盗賊として熟成していく。

 奇しくも、冒険者だったころよりも強くなる。


 そんな盗賊を牽引するのが、S級冒険者に匹敵する元冒険者だ。

 たまにいるのだ。盗賊としての才能を開花させ、能力も強くなり実力が遥かに向上する者が。

 いつしか、盗賊は群れて盗賊団となる。

 そして、経験を積み、数を増やし……賞金首となり、名が知られていく。

 

 冒険者ギルドは、盗賊団に等級を付けた。

 冒険者と同じく、最上級の盗賊団はS級。リーダーは討伐レートS級の賞金首。

 現在、S級に分類される盗賊団は四つ。かつては五つあったが、ヴァイスを攫おうとした『夜遊び組』という盗賊団が壊滅した。

 そして、SS級に分類される盗賊団は三つ。


 四十人の盗賊たち(アリババ)

 大海賊(ドレーク)

 山賊王(ヤーノシーク)


 一つの盗賊団が、一国の騎士団を上回る戦闘力がある、とされている。

 この下につく盗賊団も少なくない。

 三大盗賊団。冒険者ギルドでは有名な盗賊だった。


 そんな盗賊団の下に付くことを考えていたのは、S級盗賊団の一つ、『鬼殺し』だ。

 この盗賊団は、先の先を見ていた。

 このままS級盗賊団でいるより、SS級に忠誠を誓い、甘い汁を啜る。

 最後に、『鬼殺し』は小さな村を襲い、若い女を手に入れた。

 この女たちは、『鬼殺し』が忠誠を誓う予定である『四十人の盗賊たち(アリババ)』への手土産のつもりだった。


 だが、彼らは重大なミスを、取り返しのつかないミスをした。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 『鬼殺し』のアジトは、ハイベルグ王国から南西にある山岳地帯にあった。

 この岩場は、彼らの庭。踏み込んだ者は『鬼に食われて死ぬ』と言われている。

 『鬼殺し』が飼う魔獣、オーガたちの餌場でもあり、冒険者たちもあまり踏み込まない。

 だが……現在、この山岳地帯に、オーガはいなくなった。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ!! し、知らせねぇとっ!!」


 『鬼殺し』に所属する盗賊の一人が、真っ青な顔でアジトへ向かっていた。

 アジトに戻り、『鬼殺し』のリーダーであるバルソンに向かって叫ぶ。


「か、頭ぁ!! 冒険者だ!!」

「……あぁ? だから何だ」

「やべぇんだよ!! 冒険者だ!!」

「うるせぇ!! ンな冒険者くらい、さっさと始末しちまえ!! オーガ共もいるだろうが!!」

「全滅した!!」

「…………ぁ?」

「オーガは、全滅しちまった!! こ、殺されたんだよ!!」

「……んだと!?」


 盗賊は叫んだ。


「あいつが、あの黒い(ダーク)……『闇の化身(ダークストーカー)』が!!」


 その名は、S級冒険者最強。

 七大冒険者序列第一位の二つ名だった。

 (ダーク)が、どこまでも追跡(ストーカー)してくる。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセは、山岳地帯をゆっくり歩いていた。

 手はポケットに入れ、ゆっくり、一歩一歩、静かに歩いている。

 向かっているのは、盗賊のアジト。

 山岳地帯の中心、開けた場所の中央でハイセは立ち止まった。

 真正面から、男が歩いてきた。


「よぉ、最強さんよ」

「…………」


 盗賊のボス、バルソンだった。

 部下を大勢従え、ハイセの真正面に立ち、余裕の表情を浮かべている。


「うちの可愛いオーガたちを殺してくれたそうだなぁ?」

「…………」

「お前がどんなに強いか知ってるぜ。でもよ……ここはオレらの庭。場所を間違えたな」


 と、ハイセを取り囲む盗賊たち。

 数は八十。全員がA級冒険者に匹敵する盗賊たち。『鬼殺し』の主戦力たちだ。


「悪いが出し惜しみしねぇぜ。S級最強に雑魚を何匹ぶつけても死んじまうだけだしな……うちの主戦力全員で殺してやる」

「…………」


 ハイセはしゃべらない。

 いまだに、ポケットに手を突っ込んだままで。

 ほんの少しだけ俯いているせいで前髪が下がり、一つしかない目も見えない。

 ハイセが無反応なのを勘違いしたのか、バルソンが言う。


「やれ」


 そして、囲んでいた数名が動き出し───爆発した。


「っ、っがぁぁぁぁ!?」「うぉぉぉぉぉ!?」

「あ、足ぃぃぃぃっ!?」「いでぇぇぇぇ!!」


 四人が地面を転がった。

 その両足が、踵から吹き飛んでいた。

 そして、地面に穴が開いている……ハイセの『対人地雷』を踏み、爆発したのだ。

 ハイセは転がった四人に目をくれず、ポケットから小さなぬいぐるみを取り出す。


「これ、見覚えあるか」


 ボロボロの、クマのぬいぐるみだった。

 バルソンは何故爆発したのか、何が起きたのかを考えつつ、時間稼ぎのために答える。


「……知らねぇな」

「…………そうか」

「大方、攫った女の持ち物か? 若い女は全員いるぜ? 届けてやろうか?」

「…………若い女、か。あの村にいる若い女は確かに、全員攫われたよな」


 ハイセはぬいぐるみをポケットにしまい、言う。


「他の村人は、全員殺した……男も、老人も、子供も(・・・)

「あ? ああ、そうだぜ」


 若い女は、全員攫われた。

 それ以外は、殺された。

 若い男、老人……そして、小さな子供。

 

「このぬいぐるみは、俺があの子にあげた物だ」


 殺された村人の中に、女の子がいた。

 

「あの村はな、以前に俺が依頼を受けて、魔獣討伐をした村だ」


 その村に、小さな女の子がいた。

 ハイセを恐れず、「ありがとう」と言って小さな花束をくれた。

 ハイセはそれを受け取り、代わりにぬいぐるみをあげた。

 女の子は喜び、笑顔を浮かべていたのをハイセは覚えている。

 だが、その村は……壊滅した。

 たまたま依頼の帰りに様子を見に行ったら、多くの死体があった。

 物資を回収している盗賊を見つけ、ハイセは拷問した。

 そして、この盗賊団のアジトを見つけたのである。

 

「…………後悔すらさせねぇ」


 ハイセの両手に、拳銃が握られた。

 自動拳銃でもない、大型拳銃でもない。

 超大型の回転式拳銃。通称ハンドキャノン。

 ゾワリとした、闇を濃縮した殺意が振り撒かれる。


「ブチ殺す」


 ◇◇◇◇◇◇


 ドバン!! と、ハンドキャノンから放たれた銃弾が、オリハルコンの盾を構えた盗賊に直撃。

 オリハルコンが砕け散り、盗賊の身体が爆散し、背後にいた数名の盗賊の身体も爆散し、七人ほど貫通して近くの岩に着弾、岩が粉々に砕け散った。

 そんなバケモノのような銃を、ハイセは両手に持ち連射していた。


「ぜ、全員で囲め!! 向き合うんじゃねぇ!! 死角から魔法を───」


 バルソンが叫ぶが、ハイセの殺意にアテられた盗賊たちがまともに動けるはずもなく、肉塊……いや、ただの肉片と化していく。

 あまりの恐怖に逃げ出す盗賊たち。だが、背を向けて走り出した瞬間、破片式地雷のトラップにかかり爆散、肉塊となる。

 ハイセの能力は『武器(ウェポン)マスター』だ。今のハイセは、視認した場所に地雷をセットすることが可能になっていた。

 さらに恐ろしいことに、自身の武器でハイセが傷付くことはない。つまり……地雷の射程にいようと、地雷の爆破でハイセが傷つくことはない。

 あっという間に、盗賊は十人以下まで減った。

 S級に分類される『鬼殺し』の盗賊団が、ハイセに近づくことすらできない。


「お、お頭……ど、どうすれば」

「か、勝てねぇ、勝てねぇよ!! どうすれば」

「うろたえんじゃねぇ!! クソ、ま、待て『闇の化身(ダークストーカー)』!! 話を、話をしようぜ」

「…………」


 ハイセが生み出したカービン銃が、バルソン以外の盗賊を皆殺しにする。

 たった一人残ったバルソンは、大汗を流しながら後ずさる。


「ま、待ってくれ。女たちは解放する!! 盗賊から足も洗う!! こ、鉱山で一生働くのもいい!! だから、命だけは……」

「…………」


 ハイセは、ハンドキャノンを具現化し、バルソンへ向ける。


「ま、待て!! お、オレたちは『四十人の大盗賊(アリババ)』に忠誠を誓った身だ。オレらをつぶすってことは、アリババの顔に泥を塗るってことだ!! いくらお前が強くても、SS級の盗賊団に───」


 引金が引かれ、弾丸が発射。

 最後まで言い切ることなく、バルソンは粉々に砕け散った。

 ハイセは、ポツリとつぶやいた。


「関係ない。来るなら来いよ……ブチ殺してやるからよ」


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセはハイベルグ王国に帰還し、宿へ戻った。

 すると、シムーンが出迎える。


「お帰りなさい、ハイセさん」

「……ああ」

「あ!! お帰りなさい、師匠!!」


 クレアもいた。

 風呂上りらしく、共用スペースで果実水を飲んでいたようだ。

 ここで、ポケットにぬいぐるみが入ってるのを思い出し、取り出す。


「あ、かわいいですね。ぬいぐるみですか?」

「…………」


 ハイセは、そのぬいぐるみを少しだけ見つめ……少しだけ微笑み、シムーンへ。


「シムーン。このぬいぐるみ……お前にやる」

「え? いいんですか?」

「ああ。だけど約束してほしい。大事にするって……頼む」

「えっと、わかりました。大事にします」

「……ありがとう」

「……師匠、何かあったんですか?」

「……別に」


 シムーンにぬいぐるみを渡し、ハイセは二階の階段に足をかけた。

 シムーンは、ぬいぐるみを抱いてニコニコしている。


「…………助けられなくて、ごめん」


 その悲しい呟きは、クレアにもシムーンにも届かない。

 宿屋の主人はハイセを見ていたが、何も聞いていないフリをした。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
ネタ武器が出てきたわ…… 一般人というか一般軍人が撃つとどんだけムッキムキでも台に固定してないと肩外れるらしいんだけどなー 覚醒が続いて身体能力も上がったんか? てか覚醒の方向性が酷くない?極論、核爆…
[気になる点] 視認した場所に地雷セットし爆発の範囲にいても自分は無傷って強すぎ… [一言] 最近読み出して一気読みしてますが面白いですね
2023/07/05 15:18 退会済み
管理
[一言] チートに磨きがかかってるw 最終兵器はAI付ドローン部隊か神の杖か なんだかんだ護るべき家族的なものを抱えるハイセじゃ人数と手段に制限の無い盗賊団から狙われると相当分が悪いけどどうなるかな
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