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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十一章 三人目のソードマスター

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盗賊戦③

数時間前。

 盗賊が占拠している村から一キロほど離れた場所で、ハイセとサーシャは言う。


「ここからはお前たちだけで行け」

「「「え……」」」

「お前はこっちだ」

「神の御心のままに……」


 ラプラスがハイセの隣へ。

 そして、サーシャがセキとアカネに言う。


「セキ、アカネ。お前たちはもう、盗賊ごときに遅れを取る実力ではない。問題なのはお前たちの心の問題だ。だから、クレアと協力して、盗賊団から村を取り返せ」

「「……は、はい」」


 ハイセがクレアに言う。


「クレア、お前もだ。三人で村を取り返せ……俺とサーシャは村の反対側に行く」

「し、師匠……」

「忘れるな。あそこにいるのは魔獣と同じだ。人間にもどうしようもないクズが存在する。魔獣以下のゲスに手心を加える必要はないからな。いいか……この世の中には、生きる価値のない人間がいるってことを、覚えておけ」

「……は、はい」


 そう言い、ハイセとサーシャ、ラプラスは行ってしまった。

 残された三人は顔を見合わせて頷く。


「セキさん、アカネさん。やりましょう!! 私たちで、村を取り返しましょう!!」

「そうね……アカネ、いける?」

「当然です。冒険者としての試練、乗り越えてみせましょう」


 三人は頷き、村に向かって歩き出す。

 そして、村の入口近くの藪から様子を眺めていると……そこで、信じられないものを見た。


「次、オレな」

「おう。外していいぜ?」

「や、やめ……」

「お願いします、お願いします!! どうか、どうか!!」

「た、たすけて!! お父さん、お母さん!!」


 木に括り付けられた子供、父親、母親。

 それに向かって弓を構える盗賊が二人。

 盗賊が矢を放つと、母親の足に矢が刺さった。


「うぁぁぁぁぁ!?」

「お、お母さん!!」

「頼む、やめて、やめてくれぇぇ!!」

「ヒット。足だからポイント1な」

「ちっ、次はオレだ。見てろよ」


 それは、あまりにも残酷なゲーム。

 家族を的に、当てた矢でポイントを競い合う、盗賊の暇つぶしだった。

 あまりにも残酷な光景に、クレアたちは絶句……セキが呟いた。


「生きる価値のない、人間」


 その理由がはっきりわかる光景だった。

 クレアは武器を手に、無言で飛び出した。


「やめなさい!!」

「あ?」「ん? おい、このガキ……冒険者じゃね?」

「く、クレア!! 作戦は!?」

「助けます!! そして、戦います!!」


 すると……盗賊がニヤリと笑った。


「おい、このガキがどうなってもいいのか?」

「ひっ」

「家族全員、殺しちゃおうかネェ?」

「なっ……ひ、卑怯な!!」


 盗賊は子供に剣を突き付けたまま、クレアに言う。

 

「全員、こっちに来な。へへへ……楽しもうぜぇ?」


 こうして、クレアたちは全員、盗賊に捕まったのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇




「ハイセ、いいのか?」

「ああ。このまま様子を見る」

「……ああ、神よ」


 ハイセ、サーシャ、ラプラスの三人は、連れて行かれるクレアたちの様子を見ていた。

 まだ動く時ではない。どうなるかを、見守っていた。

 そして、クレアがキレて、闘気の色が変わり───ついに、人間を手にかけた。

 クレアだけではない。セキもアカネも、人間相手に戦っている。

 盗賊が集結し、ボスが現れ……戦いが始まった。


「……ハイセ」

「見守ろう、もう少し」




 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


「あぁぁぁぁ!!」


 クレアはがむしゃらに剣を振るう。闘気により強化された身体、そして剣は、盗賊の持つ武器ごと腕や身体を両断した。

 紺碧の闘気。『ソードマスター』の闘気は、精神の成長で色を変える。

 クレアの精神が成長したことで色を変え、持続時間も強化力も大幅に上がっていた。


「セキ!!」

「うん!! いくよアカネ!!」


 アカネとセキ。彼女たちは連携で盗賊を相手にしている。

 胸元を露出したまま、向かってくる盗賊相手に一歩も引いていない。羞恥心より、戦うこと、命を奪うことを優先していた。現に、二人の気迫に圧倒され、盗賊たちは何人か絶命して転がっている。

 そして、オーエンが舌打ちした。


「チッ……おい!! そんなガキに押されてんじゃねぇ!!」

「で、でもよ、こいつら強ぇぇぞ!!」

「くそが!! おい、囲め!!」


 盗賊たちがクレアを囲むが、クレアは闘気を全開にして双剣に纏わせる。

 それだけじゃない。その場で回転して剣を振るうと、斬撃が飛び盗賊たちが何人も両断された。

 オーエンがさらに舌打ちする。


「あのガキ、ハイになってやがる。ボス、どうします?」

「決まってんだろ……出せ」

「……へへ、了解」


 クレアが荒い息を吐き、盗賊を斬らんとブンブン首を振って敵を探す。

 すると、オーエンが叫んだ。


「おいガキ!! こっちを見ろ!!」

「!!」

「た、たすけ……」


 オーエンは、殴られボロボロの子供の首根っこを掴み、剣を突き付けていた。

 それを見たクレア、アカネ、セキの三人の動きが止まる。


「このガキ、いや……村の連中がどうなってもいいのか?」

「くっ……」

「武器を捨てな」

「「「…………」」」


 三人がオーエンを睨む。すると、ゲルニカが斧で子供の腕を切断した。


「う、ァァァァァッ!! ァァァァァッ、ァァァァァッ!!」

「次は首だ。どうする?」

「くっ、うぅぅ……!!」


 クレアは双剣を捨て、アカネとセキも武器を捨てた。

 すると、盗賊たちがクレアたちの腕を掴み拘束。

 ゲルニカはクレアに近づき、胸倉を手で摑んで服を破り、露わになった胸を鷲掴みにした。

 クレアは痛みに顔をしかめるが、ゲルニカがその顔を掴んで自分に向ける。


「グチャグチャになるまで遊んでやる。そっちのメス二匹もな」

「……してやる」

「あ?」


 ギロリと、クレアはゲルニカを睨みつけた。


「殺して、やる……!! 私は死なない。お前を殺して、生きる……!!」

「ほ、そりゃ無理なこった。おい、そっちの二匹はくれてやる。このメスはオレが食う」

「へいへい。おいお前ら、こいつら連れて撤収するぞ。村人は全員殺して、村に火を放つ。アジトに帰還する」


 オーエンが部下に命令し、腕を失った子供を乱雑に投げ捨てた。

 クレアは、涙を流し呻く子供を見て、自分も涙を流した。


「おーおー? 悲しいのか? 怖いのか? まぁ安心しろ、そんなのわからなくなるくらい遊んでやるからよぉ」

「う、ぅ……!!」


 許せなかった。

 自分の弱さ。そして、考えなしに突っ込んだ浅はかさ。それら全てが原因となり、自分だけでなくセキ、アカネ、そして住人たちが危険に冒されている。

 クレアは、知った。

 弱さは罪である。自分が強ければ、盗賊を素早く全滅させることができれば、こうはならなかった。

 そのままクレアは、ゲルニカに頭を鷲掴みにされ、近くの民家に連れて行かれた。

 そして、民家のドアが蹴破られる。

 クレアは、自分の弱さに打ちのめされ、俯いてた。


「あぁ? なんだ、お前」

「…………」

「…………え?」


 ゲルニカの怪訝な声に顔を上げると、民家の椅子に誰かが座っていた。

 黒い眼帯、黒いコート、黒い髪に赤い瞳。

 つまらなそうに座り、クレアを見た。


「わかっただろ?」

「…………ぁ」

「お前は、理解したんだ。そして、打ちのめされた」

「…………」

「おいガキ、なんだテメェは!!」

「命を奪い、奪われる覚悟。人間を殺した感触。そして、自分の力だけじゃ何もできない絶望……どれも、冒険者に必要な『経験』だ。お前は、それを理解した」

「…………しょ」


 クレアは、ボロボロと涙を流し───優しく微笑むハイセを見た。


「成長したな、クレア」

「う、ぁ、ぁぁ……ぅあぁぁぁぁぁん!!」


 そして、ハイセは立ち上がった。

 ゲルニカはクレアを投げ捨て、ハイセに向かって斧を振り上げる。


「死ね、クソガ───……」


 次の瞬間、ゲルニカの斧が止まった。

 背筋が凍りつき、斧を振り下ろそうとした瞬間、腕が反射的に止まったのである。

 そして、寒気の正体───……ハイセが言った。


「もう一つ理解しただろ? この世には……生きる価値のないクズが存在するってな」


 ハイセは自動拳銃を抜いてゲルニカに突き付けていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 気付いたら、盗賊たちの両腕が綺麗に切断され足元に首が転がっていた。

 その盗賊たちは、セキとアカネを拘束していた盗賊だった。


「セキ、アカネ……大丈夫か?」

「さ、サーシャ、さん……」

「あ……」


 サーシャは、へたり込んだ二人の身体に、アイテムボックスから出した毛布を被せた。


「強くなった。本当に……」

「「…………」」

 

 サーシャに優しく微笑まれて、二人はボロボロと涙を流した。

 そして、サーシャは二人を優しく抱きしめて言う。


「住人はラプラスが治している。不思議なことに、あの子も成長したのか力が増したそうだ、住人たちは全員助かるだろう」


 サーシャは立ち上がり、盗賊たちを指揮するオーエンを見た。


「後は、私に任せろ。全員───……斬る」

「…………マジかよ」


 すでに諦めきった顔のオーエンは、頬をひくひくさせながら笑ったように見えた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] ハイセとサーシャはさくっと住民救助したようで。 腕を斬られた子供もお忘れ無く 帰りの野営はシチューかな?
[一言] S級二人による無双期待してます!
感想一覧
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