表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十一章 三人目のソードマスター

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

155/422

師と弟子

 クレアがハイセの正式な弟子となった翌日。

 ハイセは、メガロドンオーガの討伐依頼を出した村へやってきた。

 村の入口には、若い、まだ十代後半ほどの守衛が立っている。気が立っているのか、ハイセを見るなり槍を持つ手に力がこもったように見えた。


「何者だ……この村に、何か用か?」

「この村が出した討伐依頼を受けた冒険者だ。長と話がしたい」

「……冒険者。わかった、少し待ってくれ」


 守衛は、近くにいた農民に何かを告げると、その農民は慌てたように走り出す。

 ほんの数分で、村長が数人の男女を連れて戻って来た。


「これはこれは、冒険者様……討伐依頼を受けて下さったのですかな」

「ああ」


 そう言い、ハイセはアイテムボックスからメガロドンオーガの死骸を出した。

 頭部が粉砕された、綺麗な死骸だった。

 逆に言えば、頭部以外は無傷。ハイセのアイテムボックスは時間停止型なので、死んで間もない状態での保存となる……体内にある内臓、血などの鮮度もいい。

 いきなり現れたメガロドンオーガに、村長含め全員が驚いていた。


「もう死んでいる。こいつが、村の近くの洞窟にいた。それと……これも」


 ハイセは、アイテムボックスから鎧や武器の残骸を出す。

 どれも原型をとどめていないが……若い守衛の青年が、一本の折れた槍を手にすると、涙を流した。


「…………親父」


 他の男女も、鎧や武器を手にしては涙を流す。

「あなた……」や、「兄貴……」など、家族の所有物らしかった。

 村長も、壊れた鎧を手に涙を流す。ぽつりと「倅……」と呟いたのをクレアは聞いた。

 ハイセは言う。


「あの洞窟にあった装備品は全部回収した。それと、一つ頼みがある」

「…………なんなりと」


 村長は、何を要求されるのかと警戒しているようだ。クレアもその雰囲気を理解したが、今は何も言わずにハイセの後ろで黙っている。

 ハイセは、メガロドンオーガの死骸を軽く蹴った。


「このメガロドンオーガ。俺が買い取りたい」

「…………え?」

「恐らく、白金貨十枚くらいの値段が付くはずだ。そこに上乗せして二十枚払う。文句はないな?」

「し、白金貨二十枚!?」


 この村が毎年収めている税金の、ざっと二百年分である。

 驚愕する村長。当然、メガロドンオーガの相場なんて知らない。

 ハイセはアイテムボックスから、白金貨の入った袋を出して村長に渡す。


「村の発展に使うなり、見舞い金を配るなり、好きにしろ。じゃあ、死骸は貰っていく」


 ハイセは、メガロドンオーガの死骸をアイテムボックスへ入れると、そのまま王都に向けて歩き出した。

 クレアは何か言おうとしたが、ハイセの背が「何も聞くな」と語っているような気がした。

 すると、守衛の青年がハイセの背に向かって言う。


「冒険者様!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!」


 ハイセは振り返りもせず、軽く手を上げるだけだった。

 クレアは、未だにポカンとしている村長たちにペコっと頭を下げ、ハイセの元へ向かって走り出した。

 そして、ハイセの背中を見て言う。


「おっきいです……そして、かっこいい」


 いつか、こんな冒険者になりたい。

 クレアはハイセの背中を見ながら、強く思っていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ギルドに戻り、依頼完了の報告、そして討伐報酬を得た。

 そのまま、解体場へ向かい、解体場のリーダーであるデイモンの元へ。

 デイモンは、素手でオークの骨をへし折り、巨大な鍋に入れていた。血管の浮かび上がる鍛え抜かれ過ぎた腕は、オークの骨を楊枝でも折るようにベキッと折る。

 

「ん? おうハイセ、解体か?」

「ああ。今、大丈夫?」

「おう、その台に……ん?」

「あ、ど、どうも……」


 クレアがペコっと頭を下げると、デイモンはニヤニヤした。


「なんだなんだ。サーシャ、プレセア、ヒジリと続いて四人目かぁ?」

「……デイモンさん、こいつは俺の……まぁ、弟子」

「弟子ぃ? ソロのお前がパーティー組んだのか?」

「仲間じゃなくて、弟子。とりあえずそこそこ戦えるくらいに育てるだけだ」

「は、そうかい」


 ハイセは台の上にメガロドンオーガの死骸を置く。

 クレアは、ハイセを見て目をキラキラさせていた。


「……なんだよ」

「いえ!! 師匠が自分から、私を弟子って……えへへ」

「能天気なヤツだな……」


 クレアは嬉しそうにニコニコしていたので無視。ハイセはデイモンに言う。


「解体、よろしく」

「おう。ところで、今夜どうだ? 一杯やるか? そっちのお嬢ちゃんも一緒に」

「いやー……「お願いします!!」って、おい」

「いい返事じゃねぇか。よっしゃ、おっさんが奢ってやる。いつもンとこ行くぞ。っと……ギルマス抜きで行くとスネちまうからな、解体してる間に声かけとけ」

「まぁ、いいか……おい、行くぞ」

「はい!!」


 少しずつ、クレアは調子を取り戻していた。

 道中、お調子者っぽい空気はナリを潜めていたが、今は元気いっぱいだ。 

 クレアは、ハイセの後ろを定位置としたのか、ぴったりくっついてくる。

 そのまま、ガイストの部屋まで来た。ノックすると『入れ』と聞こえて来たので入ると……なんと、サーシャがいた。


「ハイセ?」

「……珍しいな、お前がいるなんて」

「私だって、ガイストさんに相談くらいするさ。お前は知ってるだろうけど、ガイストさんは聖神国では有名なクランの元マスターだったんだぞ」

「はは、今は甥に任せ……ん? ハイセ、その子は?」


 ガイスト、サーシャがクレアに気付いた。

 ハイセは少し迷ったが、クレアを紹介する。


「こいつはクレア……俺の弟子になりたいって押しかけてきた。仕方ないから、とりあえずそこそこ戦えるくらいに鍛えることにした」

「師匠、言い方……えっと、クレアって言います!! 師匠の弟子となりました!! よろしくお願いします!!」

「……なんと、まさかハイセが新人を育てるとはな」

「……女の子か」


 ガイストは驚き、サーシャは何故かムスッとした。

 ガイストはサーシャを見て苦笑し言う。


「ガイストだ。ハイベルク王国冒険者ギルドのマスターを務めている。よろしく頼むぞ」

「はい!!」

「サーシャだ。よろしく頼む」

「はい!! あ、サーシャ……まさか、S級冒険者の、『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』!?」

「そうだが……」

「私、あなたには負けません!!」

「あ、ああ?。ええと……」


 いきなりライバル宣言ともいえる言葉に、サーシャはハイセを見た。

 そして、どのみちバレるからと、ハイセは言う。


「サーシャ、こいつの能力……『ソードマスター』なんだよ」

「……えっ」


 それを聞いたサーシャは、驚いた眼でクレアを見つめ返した。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、ガイストを飲みに誘うと……なんと、サーシャも付いてきた。

 デイモンと合流し、五人は屋台街へ。

 ドワーフのガポ爺さんの屋台へ向かい、デイモンが暖簾をくぐる。


「ようガポ爺さん。やってるかい」

「休んでるように見えるか? ほれ、座れ」

「今日はたくさん連れて来たぜ」

「ん? おお!? ははは、久しぶりじゃな、サーシャちゃん!!」

「お久しぶりです、ガポおじいさん」

「はっはっは、さささ、駆けつけ一杯。おお? ハイセにガイストも……んん? そっちのお嬢ちゃんは初めてかな?」

「は、はい」


 クレアは、屋台が珍しいのかキョロキョロしている。

 大きな公園だが、屋台が五十以上並んでいる光景は、早々見れるものではない。

 とりあえず四人も座り。サーシャ、ハイセ、クレア、デイモン、ガイストと並んだ。

 ドワーフの日酒で乾杯し、ガポ爺さんの煮込みを五人は食べる。


「ん……久しぶり食べたけど、やはりガポおじいさんの煮込みは美味しい」

「あったりまえよ。ふふ、サーシャちゃんがうちの味を忘れてなくて嬉しいぜ」

「すみません、忙しくてなかなか来れずに……」

「気にすんなって。 ハイセが声かけねぇからだ、なぁ!」

「俺に言わないでよ……」


 クレアは煮込みを食べながら、日酒をぐいっと飲む。


「お、お嬢ちゃんいい飲みっぷりだね。うちの酒は美味いか?」

「はい、おいしいです……あの、おかわり」

「おう!! ほれほれ、デイモンもガイストも飲め飲め。いや~、今日はいい日だぜ!!」

「おいおい、ガポ爺さんよ、ガキじゃねぇんだから興奮するなって」

「ははは、確かにな」


 デイモンとガイストが茶々を入れつつ、煮込みと酒を楽しんでいる。

 ガイストは、クレアに聞く。


「クレアだったか。まさか、きみが三人目の『ソードマスター』とはな……」

「…………」

「現在、この世界には三人のソードマスターがいる。一人はクロスファルド、一人はサーシャ、もう一人は……スキルを確認したのち、行方不明になったと聞いた。その後の足取りが不明で、幻の三人目と言われていたが……クレア、きみはどこにいたんだ?」

「…………」


 クレアは無言で、日酒を一気飲みした。

 ハイセが「おい、ガイストさんの話聞いてるか」と軽く肘で小突くと。


「…………ふにゃ」

「……は?」

「えへへ~……ししょぉ」

「っ!?」


 クレアが、ハイセの腕にしがみつき……猫のように頬ずりし始めた。


「な、お、おい!?」

「は、ハイセ!! 不埒な真似をするな!!」

「お、俺がしてるように見えるか!?」

「ししょぉぉ~……んん~、大好きですぅぅ~」

「おい、寝ぼけんな離せ!!」

「は、離れろハイセ!! ぐぬぬぬ、なんってことを!!」

「えへへ……んん~」


 クレアは、完全に酔っぱらっていた。

 ハイセにしがみつき、サーシャが引き剥がそうとしている。

 デイモンとガポ爺さんはゲラゲラ笑い、ガイストは苦笑した。


「やれやれ……質問は、また今度かな」


 そう言い、ガイストは日酒のグラスを手に取り、一気に飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[一言] なぜクレアが行方不明だったかは話が進めばのちのち解るだろうから良いが、ハイセがどうやってクレアを鍛えるのかが気になる。やっぱり高レート討伐での実践形式かな?
[良い点] ハイセの冒険者活動は、もうツンデレな慈善事業ですね [一言] 相談事は、ハイセも関わるはず?引き続きクレアがイロイロやってくれそう。(笑) サーシャ「ぐぬぬぬ!(羨ましい)」 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ