表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十一章 三人目のソードマスター

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/422

討伐レートS+級


 魔獣には、討伐レートが設定されている。

 最低討伐レートはF級。代表的な魔獣は単体でのゴブリン、コボルトなど。鍬を持った農民でも単体なら何とか駆除できるレベルだ。

 武器を持ち、能力に覚醒した冒険者が最初に戦うことになる魔獣の等級もF級が多い。

 冒険者登録をして、下積みとしてチームに臨時加入し、ベテラン冒険者立会いの下で戦うことになる冒険者が大半だろう。

 F級からC級程度までが、下積み冒険者がベテランたちと共に戦うことになる。

 そして下積みを終え、チームを組み、チームでの経験を積み……初めて、B級の魔獣と戦う。そして冒険者等級を上げ、新人から中堅になり、A級の魔獣と戦う。

 A級に勝利すれば、もう一流の冒険者だ。


 だが、A級の上にはS級がある。

 S級以上は、A級とは桁違いの強さを誇る魔獣だ。

 S級は『災害級魔獣』

 SS級は『災害級危険魔獣』

 そして冒険者ギルドが定める魔獣の最上級等級であるSSS……別名『災害級危険超越魔獣』と呼ばれ、過去に四度確認されている。 

 一体は若かりしアイビスたち『ヒノマルヤマト』が討伐、一体は行方不明、一体は若かりしガイストが単独で撃破し、一体はハイベルグ王国冒険者ギルドが総力を上げて討伐した。

 このように、S級以上は怪物である。

 

 そして……ハイベルグ王国周辺には、そんなS級魔獣が毎日のように現れていた。

 どこから来るのか? それを説明できる者はいない。

 だが、毎日、毎日……討伐依頼は来る。

 今日も、ハイセはS+級……S級以上、SS級以下の魔獣を倒すべく、ハイベルグ王国を出た。

 その隣に、本来いてはならない、能力に覚醒したばかりの冒険者見習いを連れて。


 ◇◇◇◇◇

 

 ハイセとクレアが向かったのは、ハイベルグ王国から西に数キロ先にある小洞窟。

 最近、この辺りに魔獣が住み着いたらしい。

 近くの村の警備隊が調査しにこの洞窟に踏み込んだが、誰も帰ってこなかったそうだ。

 ハイセは、洞窟の入口でしゃがみこむ。


「師匠、何してるんですか?」

「…………見ろ」


 ハイセが拾ったのは、血濡れの兜……の、破片。

 砕けた兜には血が付着していた。そして、その砕け方。


「お前、見てわかるか?」

「え、えっと……兜? ですよね。砕けてるとしか……」

「そうだ。砕けてる……なぁ、兜が砕ける時、どうやって砕ける?」

「そうですねぇ……重いこん棒でガツンと叩いた時、とか?」

「不正解。こん棒で砕けはしない。兜は普通、砕けない」

「……じゃあ、どうやって?」

「答えは中にある。行くぞ」


 ハイセは兜の部品を捨て、自動拳銃を抜き中へ踏み込んだ。

 クレアも後に続く。

 ハイセはクレアを見たが、クレアは首を傾げるだけ。その様子にハイセはため息を吐いた。


「あの、どうしました師匠」

「…………」


 ───……ォォォ。


 と、ここで何かが聞こえてきた。

 ハイセは銃を正面に構え、クレアは背中に電流が走った。


「───ッッ、え、え」

「…………」


 ずずん、ずずん、ずずん……と、洞窟の奥から巨大な『何か』が現れた。

 深紅の肌には鱗が生えており、サメ肌のようにザラザラしている。

 頭部には長いクセのついた白髪。そして側頭部に二本、額に一本のツノが生えていた。

 腕、足、身体は鋼のような筋肉に覆われ、目はギョロギョロしており、ハイセとクレアを睨む。

 討伐レートS+級、『メガロドンオーガ』だ。

 クレアの腰が抜け、へなへなと地面に崩れ落ちる。


「あ、ぁ……」


 顔が真っ青になり、がたがた震える。

 メガロドンオーガの殺意、存在感が圧倒的過ぎて、クレアは対峙しただけで心が折れた。

 が、ハイセは言う。


「兜を砕く方法、それは……頭から食らい(・・・・・・)嚙み砕く(・・・・)ことだ。あいつ、人間を大勢食ってるな……少しは楽しめそうだ」

『オォォォォォォォォォォォァァァァァァァァ!!!!!!』


 メガロドンオーガの雄たけびで洞窟が揺れた。

 ドンドン!! と、自動拳銃が火を噴き銃弾が発射される。だが、銃弾はメガロドンオーガの額、目の下に命中したが、サメ肌のような皮膚に弾かれた。


「これじゃ無理か」


 ハイセは自動拳銃をホルスターへ戻し横っ飛び。

 

「えっ」


 メガロドンオーガの拳が、ハイセを……クレアを襲う。

 ハイセは、クレアを見ていなかった。


「し、ししょ」


 未だにへたり込んだクレア。

 ぎょろっと、メガロドンオーガがクレアを睨む。


『ぐぉるるるる……』

「ひ、ぁ」


 震えが止まらなかった。

 股間が熱くなり、温かい液体が股間を濡らす。

 剣を抜くことも考えられない。

 

『付いてくるのはまぁ許す。だけど……討伐依頼を受けた以上、自分の身は自分で守れ。俺に何か期待しても無駄だからな』


 ハイセの言葉。

 クレアはどこかで、ハイセは助けてくれると思っていた。

 だが、ハイセはクレアを見てすらいない。

 クレアを食おうと大口を開けたメガロドンオーガ。

 

「ひ、ぃ、っぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 クレアは、ようやく動いた。

 びちゃびちゃと、股間から生暖かい液体を流しながら、涙と鼻水で顔を濡らしながら、みっともなく、情けなく逃げ出した……いや、腰が抜けていたので這いずった。

 

「余所見、それが敗因だ」

『ッゴ!?』


 クレアは見ていなかった。

 横から飛び出したハイセがメガロドンオーガの口に何か『筒』を突っ込み、引金を引いた。

 メガロドンオーガの頭部が吹き飛び、頭部を失ったメガロドンオーガは仰向けにぶっ倒れた。

 ハイセは、ショットガンを肩に担いで言った。


「S+と期待したけど、こんなモンか。どうも、等級が上がると狂暴性ばかり増して、頭の方が弱くなっちまう……こうも容易く隙を見せるなんて、面白くないな」


 つまらなそうに呟き、メガロドンオーガを軽く蹴った。


「…………ぅ」


 クレアは、そのまま気を失った。


 ◇◇◇◇◇


「…………ん」


 目を覚ますと、焚火の傍で寝ていたクレア。

 起きると、ハイセがいた。

 周りを見渡すと、森の中だ。

 大きな岩を背に、テントが一つ。椅子とテーブルがあり、石を組んで作ったカマドではポットがいい感じに温まっていた。


「し、師匠……」

「お前、どうして洞窟に入ってすぐに剣を抜かなかった」

「……え」


 いきなりの質問だった。

 ハイセはクレアを責めているのではない。質問している。


「答えろ」

「そ、それは……」

「俺が受けた依頼だからか? 戦うのは俺だから? 自分は安全圏で見てるだけだからか?」

「……ぅ」

「お前、なんのために着いてきた? 見学希望か?」

「そ、それは……」

「俺の弟子になりたい、そう言ったよな? それなのに、戦う気もないお遊び感覚だ。お前……冒険者ナメてんのか?」

「…………」


 クレアはうつむいてしまった。

 ハイセは続ける。


「下積みからやり直せ。明日、サーシャのところに連れて行く」

「……っ」

「今日は着替えて寝ろ。そのままじゃ気持ち悪いだろ」

「ぁ……」


 ようやく気付き、クレアは赤くなる。

 ハイセはテントを顎でしゃくり、桶に入れた湯と手拭いをクレアに渡した。

 今更気づいた。クレアは、テントや寝袋などの道具も、何一つ持っていない。

 見学希望。その言葉が、クレアの胸に突き刺さった。

 テントに入り、クレアは服を脱ぐ。

 下着も脱いで裸になり、手拭いで身体を拭き始める。

 クレアのアイテムボックスには、着替えとお金しか入っていなかった。


「…………師匠」

「…………」


 身体を拭く手を止め、クレアは言う。


「……助けてくれて、ありがとうございました」

「…………」

「私、こわくて……う、うごけ、なくて……っ」


 ようやく───……恐怖が、涙と言葉になってあふれた。

 震えが止まらず、自分で自分を抱きしめる。


「俺も、そうだった」

「……え」

「下積みを一年間経験して、サーシャとチームを結成した」

「…………」

「サーシャは、『ソードマスター』の力を過信して……駆け出しのE級のくせに、B級の魔獣と戦おうとした。俺も調子に乗っていた……サーシャなら倒せる、って思ってた」

「…………」

「結果は、惨敗。お前と同じだ……身体が震えて動かなかった。俺は半端者だったから戦えもせず、サーシャも自分の闘気が通じないと知って動けなくなった。ガイストさんに救われなかったら、俺とサーシャの冒険は終わっていた……」

「…………」


 ハイセは、なぜこんな話をしているのか……酔っているわけでもないのに、よくわからなかった。

 クレアは、テントの中で泣いていた。

 恐怖、哀しみ、「死」目前からの生還、そして……ほんのわずかなハイセの優しさを、心で感じていた。


「お前は、ちゃんと学べ」

「…………」

「お前は『ソードマスター』だ。ちゃんと学べば強くなれる」

「………っ」


 次の瞬間、テントが勢いよく開いた。

 

「ししょうっっっ……お願いします!!」


 クレアは、全裸のまま飛び出し、ハイセの前で土下座した。


「わたじ……づよく、なりだいんでず!! ダフネが……わだじを応援じて送り出じてくれだ、わだじの友達が、わだじのごど、まっでるんでず!!」


 涙、鼻水にまみれて、それでもクレアはハイセを選んだ。

 サーシャの元ではない、ハイセから学びたいと。


「よわいの、わかっでまず……ひっぐ、ろくにたたがえないじ、なにもでぎないじ……でもでも、じじょうのじたで学びたいっで、おもっだんでず……ひっぐ」

「…………」

「おねがい、じまず……」

「…………はぁぁ」


 ハイセはため息を吐き、アイテムボックスから毛布を出し、クレアに被せた。


「…………わかったよ」

「……!!」

「ただし、手は抜かない。泣き言ほざいても逃がさない。俺のやり方でお前を鍛えてやる」

「し、しじょう……」

「その代わり……お前が何者なのか、お前が言ってもいいタイミングで話せ」

「…………は、はい!!」

「もう泣くな。ほら、テント戻って服着ろ」

「ぁ……」


 ようやく裸と気づき、クレアは顔を赤くしてテントに戻った。

 十分もしないうちに、着替えを終えたクレアの寝息が聞こえてきた。

 ハイセは、ポットの紅茶をカップに注ぎ、自動拳銃の分解をしながらつぶやいた。


「自分の弱さを知った者は、強くなれる……でしたっけ? ガイストさん」


 そう呟き、熱々の紅茶を飲んだ。

 こうして、クレアは正式に、ハイセの弟子となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
そうか、この世界にも鮫はおるんやなぁ!さすがだ
[気になる点] ガイストさん強すぎw 伝説のパーティやギルド総出でやったことを 単独で成し遂げてるとかヤバ過ぎるw
[良い点] セイグリットのメンツが出ないとストレスなく気持ちよく読める。 可愛い弟子の誕生、次も楽しみにしてます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ