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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十一章 三人目のソードマスター

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それは、三人目の

 裏路地にて。

 ハイセは、フードを被った襲撃者と戦っていた。

 最初こそ警戒したが、今はそこまででもない。

 理由は三つ。


「───ッ!!」

「…………」


 襲撃者の武器は剣。

 細い刀身の剣だ。サーシャのロングソードは両刃だが、襲撃者の剣は片刃。そして柄にはナックルガードが付いており、柄や鞘には高貴そうな装飾が施されていた。

 ハイセが警戒を弱めた理由その一……この襲撃者は、殺意がない。

 ハイセは、襲撃者が振り下ろした剣を躱し、剣の側面を自動拳銃で撃つ。


「ッ!?」

「へぇ、折れないのか」


 襲撃者の剣は、折れなかった。

 ハイセの銃弾を剣の側面に食らい折れなかったということは、間違いなくミスリル鋼以上。

 ミスリル鋼の剣でも、ハイセの銃弾を側面に食らえば亀裂が入る。かつて、銃弾の威力を知るためにハイセが検証したが、一発目で側面に亀裂が入った。

 が、襲撃者の剣には亀裂すらない。相当な硬度……つまり、普通の人間が武器屋で買えるような剣ではないということだ。


「……くっ」


 襲撃者はよろめいた。

 が、すぐに体制を立て直す。

 ハイセは、襲撃者の手を見て確信した。

 これが、ハイセが警戒を弱めた理由その二。


「お前、女だな」

「…………」


 男の拳は大きい。

 手袋をしているが、襲撃者の手は小さく、指が細い。

 それに、剣の握りが非常に硬かった。が……剣筋は素人じゃない。

 間違いなく、刀剣系能力者。

 

「まだまだっ……!!」

「……まぁ、いいけど」


 襲撃者は隠さなくなったのか、声を出した。

 やはり女の声。しかも、若い。

 そして───……ハイセも少し驚いた。


「はぁぁっ!!」

「ッ……お前、その力」


 襲撃者の身体が、薄い鉛色のモヤ(・・・・・・・)に包まれた。

 ハイセは、このモヤの正体を知っている。

 そして、小さく呟いた。


「……『ソードマスター』」


 ◇◇◇◇◇


 刀剣系最強能力、『ソードマスター』

 現在、ソードマスターの力を持つ者は三人いると言われている。

 一人は、剣聖と呼ばれている『龍神武剣(ドラゴンエッジ)』の二つ名を持つクロスファルド・オルバ・セイファート。

 もう一人は、S級冒険者『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』サーシャ。共に知らぬ者はいない剣士。

 そして、最後の一人。

 不思議なことに、最後の一人のことは誰も知らない。名前も、性別も、年齢も……そもそも、冒険者なのかどうかすらも。

 だが、ハイセの目の前にいる襲撃者は、間違いなく『ソードマスター』の力を持っている。

 が……あまりにも、拙い。これが最後の理由。


「覚ご……ッ、あ」


 闘気を漲らせたところで、ハイセが背後に回り手刀で剣を叩き落とされた。

 落ちると同時にハイセは剣を蹴ると、剣は回転して壁に突き刺さる。

 闘気が消えた瞬間、ハイセは襲撃者の胸倉をつかんで壁にたたきつけ、自動拳銃を額に突き付けた。


「う、ッぐ……」

「残念だったな。お前が何者か知らんし興味もない。ソードマスターだろうが、お前の闘気は弱すぎる……覚醒したばかりだな? いくら刀剣系最強のスキルだろうが、今のお前はせいぜい『一流』だ……一流程度、冒険者の等級でいえばD級レベルだ」


 そこまで喋り、ハイセは襲撃者を開放する。

 そのまま踵を返し、宿に向かって歩き出した。


「最強の能力の一つであるソードマスターなら、俺を相手にできると思ったんだろうが……消えろ。次に来るなら今度は容赦なく殺す」


 そのまま、襲撃なんて無かったようにハイセは歩き出した。

 が───……襲撃者が立ち上がった。


「お待ちください!!」


 完全な女の声。

 ハイセは立ち止まり、振り返る。

 自動拳銃を手に持ち、片方しかない目で襲撃者を睨む。

 すると、襲撃者は。


「お願いします!! 私を……弟子にしてください!!」


 襲撃者は、ハイセの足元まで移動し……思いっきり土下座をしたのだった。


 ◇◇◇◇◇


「あ、あぁ!? お、お待ちくださいっ!!」


 襲撃者を無視して歩き出したハイセ。

 でし。

 弟子だろうか? そんなことを言ったような気もしたが、聞こえないふりをした。


「どうか、話を聞いてくださいっ!! お願いしますっ!!」

「おい、触るな。ってか……何なんだ、お前」

「あ、失礼しました!! えいっ!!」


 襲撃者は、フードとローブを一瞬で脱いで投げ捨てた。

 はらりと、白みがかった空色のロングヘアが流れる。

 顔立ちは非常に整っており、肌もきめ細かく白い。

 瞳はアイスブルー。冷たい印象があるが、少女のウキウキしたような雰囲気がブレンドされ、温かみのある優しい瞳に見えた。

 服装は、白を基調としたフリル付きのシャツ。膝下までのスカートをはいているが、下は素足ではなくタイツを履き、さらに白系のグリーブを履いている。

 胸当て、小手も白系。兜は被っておらず、白系のカチューシャを付けていた。


「はじめまして。私、クレアって言います」

「…………」

「冒険者を目指す十六歳。能力は『ソードマスター』です!! お願いします、S級冒険者『闇の化身(ダークストーカー)』ハイセさん。私を弟子にしてください!!」

「…………」

「お願いします、師匠!!」

「ほか当たれ」


 それだけ言い、ハイセは少女……クレアを無視して歩き出す。

 すると、クレアは当然のように隣に並んだ。


「お願いしますー!! あの、いきなり襲い掛かったのは申し訳ございませんでした。まともに行ったら絶対に邪険にされそうな気がしたので……」

「…………」

「私、強くなりたいんです!! だから師匠、私を弟子にして」

「うるさい。帰れ」

「家は出たので帰る場所はありません!!」

「じゃあ消えろ」

「そんなぁ!! お願いします、私……強くなりたいんです!!」


 ◇◇◇◇◇




『お願いします、ガイストさん。俺……強くなりたいんです』




 ◇◇◇◇◇


「…………」


 ふと、昔のことを思い出した。

 追放され、右目を失い、能力を真に理解したハイセ。

 銃の使い方を古文書を見ながら独学で学びながらも、近接戦闘技術を極限まで磨くため、骨格が歪むほどの過酷な訓練をガイストにお願いした。

 クレアの目は、その時のハイセに少しだけ似ていた。

 当然だが弟子など取らない。が……ハイセは聞いた。


「なんで俺なんだ」

「え?」

「『ソードマスター』なら、S級冒険者のサーシャがいるだろ。教えを受けるならこれ以上ない相手だぞ」

「でも、それじゃあ意味がないんです」


 クレアは即答した。

 意味がわからず、ハイセは無言になる。

 クレアは笑った。今度の笑みは、挑むような力強い笑みだ。


「『龍神武剣(ドラゴンエッジ)』クロスファルド・オルバ・セイファート、『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』サーシャ。確かに、剣士として師事するならこの二人を置いてほかにいません。でも……それじゃあ、私の剣は二人の模倣になる。それじゃ意味がない。私は、この二人を超えた『ソードマスター』になりたい。だから、最強の冒険者と呼ばれているS級冒険者、『闇の化身(ダークストーカー)』に学びたいんです!!」

「…………」

「お願いします、師匠!! 私を鍛えて下さい!!」


 そう言い、クレアは頭を下げた。

 ハイセはフッと笑い、クレアを見た。

 クレアも嬉しそうに笑った。ハイセが、認めてくれたと───……。


「ほか当たれ」

「あらぁ!? こ、ここは『いいぜ』って言う場面じゃ……って、師匠、師匠───ッ!!」

「師匠じゃねぇ。ついてくんな」


 ハイセはクレアをとことん無視し、歩き出すのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
アラアラまあまあ、これまた個性的な奴が出てきたな
[Good Chapter] What if Haise and Claire becomes the strongest duo partner in history and Sasha is le…
[気になる点] ソードマスターの三人目が居る事が知られていたのに、 覚醒したのは最近か…。 昔のハイセの様に能力が有ることは判っていたけど発現 していなかったのか、立場や環境で使えなかったのか。 何に…
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