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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十章 ドレナ・デ・スタールの空中城

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サーシャの謝罪

 ヴァイスをどうするか? で、二人は話し合う。


「……ハイセ、任せていいか?」

「理由は?」

「……これからクランの全員に頭を下げてくる。たぶん、みんな怒っているだろうし、ヴァイスを連れて行けば混乱するに決まっているからな」

「……まぁ、そうだろうな。俺のところは何とでもなるか。よし、行くぞヴァイス」

『はい、ムッシュ』

 

 と、歩き出したところでサーシャが言う。


「ハイセ」

「ん?」

「今回は本当に世話になった。勝手に付いて行き、迷惑をかけ……それでもお前は、私を邪険にするどころか、その……守ってくれた」

「……お互い様だろ。まぁ確かに、最初は邪魔だと思った。でも……その、助かった」

「……ハイセ」

「…………」


 ハイセはそっぽ向き、サーシャが嬉しそうに隣に並ぶ。

 ヴァイスは、そんな二人の背中を見ながらゆっくり歩き出す。

 しばらく歩くと、分かれ道があった。

 以前はなかった立派な看板があり、そこには『クラン・セイクリッド本部』と書かれていた。

 街道がしっかり整備され、石畳の道になっている。


「この先に、クラン『セイクリッド』の本部があるのか」

「ああ。だが、以前はこんな道はなかった……私がいなくても、クラン運営に問題はなさそうだ。思えば、上空に行ってから二週間くらいだろうか」

「じゃあ、ここで」

「ああ。あ、ハイセ」

「ん?」

「その……礼はちゃんとする。その、今度……食事でも」

「…………まぁ、考えとく」


 そう言い、ハイセは手を軽く上げて言った。


「またな、サーシャ」

「───……っ、ああ、またな!!」

『ではマダム。また』

「ああ!!」


 そう言い、サーシャは闘気を纏って走り出した。

 その背中を見送り、ハイセがつぶやく。


「元気な奴だ」

『活発なマダムですね』

「だな……ああ、今のうちにいろいろ説明しておく」


 ハイセは歩きながら、ヴァイスにこれから向かう『宿』の説明をした。


 ◇◇◇◇◇


「本当に、申し訳なかった!!!!!!」


 土下座。

 これまでにないくらい、美しい土下座だった。

 サーシャはクラン本部に入るなりたいそう驚かれた。守衛が慌て、様子を見に来た冒険者たちも大慌て。本部にいたメンバーが駆けつけ、タイクーンが唖然とし、タイクーンを突き飛ばしロビンがサーシャに抱き着き、ロビンに覆いかぶさるようにピアソラも抱きつき……そして、ただ一人だけ厳しい表情をしていたレイノルドが「とりあえず、チーム『セイクリッド』は全員集合。あとは持ち場に」と言うと、全員その言葉に従った。

 現在、クラン『セイクリッド』本部、大会議室に五人は集まっていた。

 そして土下座に至る。


「さささ、サーシャ!! そんな土下座なんてしちゃダメ!! ああ、そんなサーシャみたく無いぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 ピアソラが今にも泣きだしそうだが、レイノルドもタイクーンもロビンも止めなかった。

 今、サーシャが自分にできる最大の謝罪をしているのだ。それを止めることはしない。それくらい三人は心配したし、怒っているのだ。


「サーシャ、立つんだ」

「……タイクーン」

「その状態では話ができない。いろいろ言いたいことはあるが、禁忌六迷宮の一つ『ドレナ・デ・スタールの空中城』は踏破したんだな?」

「ああ。ハイセと協力してな」

「それはよかった。まったく、いきなり飛び出してハイセと一緒に行くとは考えもしなかったよ。いつものサーシャらしくないというか、短慮というか、浅はかというか……もしこのまま君に何かがあったら全てが水の泡だ。一応、レイノルドをクランマスターとした新しいクラン設立の案もボク独自で進めていたよ。その可能性は低いと思ったが、一つの答えに対し千の対応策を出すのがボクの仕事だからね。まったく、本当にキミというやつは……」

「すまない、タイクーン……ああこれ、ハイセがタイクーンにと。ドレナ・デ・スタールの空中城で見つけた書物だ」

「全てを許そう」


 タイクーンは急に笑顔になり、サーシャの手から本をひったくった。

 そのままページをめくり、ブツブツと何かを喋っては笑顔になっている。

 レイノルドは呆れつつもタイクーンを押しのけた。


「まぁ、無事でよかったぜ」

「レイノルド……本当に、すまない」

「もういい。全部終わっちまったことだしな。それに、よーやくオレも臨時マスターの座から降りられるぜ」

「……本当に、すまない」

「だから、もう謝んなって。こうして無事に戻ってきたんだ」

「ああ……あ、そうだ」


 と、サーシャはアイテムボックスから、盾を意匠にしたチェーンを出した。


「これ……ドレナ・デ・スタールで見つけたんだ。レイノルドに似合うかと思って」

「……オレに?」

「ああ。その、レイノルドはオシャレだし、気に入らないかもしれないけど……」


 レイノルドは受け取り、チェーンを首に下げた。

 胸元で、シルバーの盾が小さく揺れている。


「うん、似合ってる」

「…………っっ、っはぁ~~~……ったく、そういうところだよなぁ」

「え?」

「ありがとな。はぁぁ~……オレも単純だぜ。ちくしょう」


 そして、ロビンとピアソラ。


「二人にも、迷惑をかけた……申し訳ない」

「あたしは怒ってるからね。そりゃ心配したけど、ハイセが一緒だし大丈夫かな~とも思ってたけどぉ……」

「ロビン……」

「今度、あたしが満足するまでスイーツ食べ歩きに付き合ったら許してあげる!!」

「え……」


 ロビンは笑っていた。

 サーシャは、そのやさしさに感謝しつつ、しっかり頷いた。

 そして……問題のピアソラ。


「ふっふっふっふっふっふ……」

「キモっ……おいピアソラ、キモいぞ」

「確かにな。ロビン、クラン内にいる回復系能力者を。どうやら頭をやられたようだ」

「おっけ~」

「違いますわ!! ってかテメェらはすっこんでろ!! サーシャ……私、怒っています」

「あ、ああ……許してもらえるなら、なんでもしよう」

「お、おいサーシャ、それはやめとけ」

「あたしもまずいと思うけど~……」


 レイノルドとロビンを殺意満点の目で睨むピアソラ。二人は恐怖で数歩下がっていた。


「では、これから一緒にお風呂に行きます。その後は一緒にベッドへ!! もちろん生まれたままの姿で、朝までたっぷり抱きしめてもらいますわ!! それを……十日間!! 十日間で許しましょう!! 十日間、私とお風呂、裸で添い寝をしてもらいます!!」

「それでお前が許してくれるなら……」

「ッッッッッシャァァァァァァァ!!」


 人生最高とばかりにピアソラは喜んでいた。

 そして、サーシャを連れて浴場へ。ロビンも「心配だからついてく」と行ってしまった。

 タイクーンは本に夢中だし、残されたレイノルドは首に下がるチェーンを見てため息を吐いた。


「ま、本当に……無事でよかったぜ」


 こうして、クラン『セイクリッド』に、サーシャが戻ってきた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
せっかくいい話なのにピアソラが全部ぶっ壊した。 マジこいついらん。
[良い点] 互いの距離感、だいぶ近づきましたかね。 [気になる点] ピアソラの異常性が際立ち過ぎて…わざと? [一言] ホーエンハイムさんの宿が賑やかに。(居ない間に客が増えてそうな気もする…) そ…
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