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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十章 ドレナ・デ・スタールの空中城

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白銀の踊り子ヴァイス・エトワール②/空白のオーバード

 踊り子型に、意思はない。

 だが、人間の言葉をある程度理解し、返答する機能はある。

 踊り子型は、当時では最新鋭の『電子頭脳』が搭載され、拡張キットも豊富な高級品。

 だが……マスラオ・ショウジョウとハヌマンの軍勢は、オートマタを少しずつ、少しずつ破壊……マスラオ・ショウジョウの恐ろしいところは、魔獣でありながら一流軍師レベルの頭脳があったことだ。

 

 ヴァイスと、その仲間たちは、ハヌマンにあっさり破壊された。

 ちょうどメンテナンスに出されており、預けられた工場で、侵入してきたハヌマン相手に何もできずに破壊された……当然である。彼女たちに戦う機能なんてない、踊り、歌い、舞うことしかできない。

 徹底的に破壊された踊り子型。破壊を確認したハヌマンは撤退……残されたのはオートマタの残骸と、破壊された工場。


 でも……たった一体だけ、生き残った。

 いや、『生きる』という表現は正しくない。

 四肢を破壊され、顔面の半分を潰され、胴体に夥しい亀裂が入っても……『自動修復装置』は、壊れることなく残っていた。

 ヴァイスは、マスラオ・ショウジョウが『もうこの区画に脅威となるオートマタはいない』と断言した区画に、たった一体残ったオートマタとなった。

 ヴァイスは、破壊され、山積みとなった同型機の中にいた。

 そして、補助電力が起動……メディカルチェック。

 

『自動修復開始』


 半分が砕け、ひしゃげた口がベキベキと開き……仲間を、捕食した。

 再起動したヴァイスが最初に行ったのは、同型機……仲間を喰らうこと。

 仲間を喰らい、徐々に、徐々に修復が始まった。

 

 だが、想定外のことが起きた。

 顔面と頭部に激しい衝撃を受けたヴァイスの、電子頭脳のリミットがカットされていた。

 これは安全装置。

 オートマタの『学習』する機能に付けられた枷。これがないとオートマタは理論上、『データがパンクするまで覚え続ける』のだ。

 

 さらに奇跡という何かが起きた。

 ヴァイスの電子頭脳は、仲間を喰らうことで、仲間の電子頭脳を吸収し拡張を続けた。

 777体のオートマタを喰らい、ヴァイスの躯体は完全に修復された。というか、七十体ほど捕食した時点で修復は終わったが……ヴァイスは、食うのをやめなかった。

 結果、ヴァイスは電子頭脳を拡張。777体分の舞い、踊り、歌をインストール。電子頭脳が拡張したことにより、踊り子型が持っていた『対人用コミュニケーションツール』があり得ないほど拡張……誰にもわからないが、『意思』のようなものが芽生えていた。

 ヴァイスは、マスラオ・ショウジョウも、ハヌマンもいない。破壊された数千体のオートマタしかいない区画で、たった一人……いや、一体しか残っていなかった。


『…………ワタシ、は』


 『思い』、『考え』、『どうするべきか』を思考する。

 電子頭脳が拡張しても、やるべきことは変わらない。


『ワタシ、は……踊り子。ヒトのために舞い、踊り、歌う……』


 そのために、すべきことは。

 ヴァイスは、歩き出す。

 そして、見た。


『……オートマタ』


 戦闘用オートマタ。

 最新型の戦闘用オートマタが、いくつも破壊されていた。

 ヴァイスは、無意識のうちに……オートマタの電子頭脳を捕食した。

 頭部を破壊し、電子頭脳チップを口に入れる。

 そうすることで、自分の『知識』や『容量』が増えることにヴァイスは気づいた。

 だが、戦闘用オートマタにあった知識は。


『…………インストール、完了。この動きは、踊りに流用可能』


 対人用武術。格闘術。武器術。

 戦闘用オートマタには、対人用の知識が豊富だった。

 武器を持つ人間、武術を扱う人間をどう対処するか? そんな知識がヴァイスに増えていく……だが、人間の武術は、踊りに応用できる。

 拡張した電子頭脳が、武術や武器術をインストールし、踊り子型にインストールされている『舞』の技術と融合。まったく新しい『舞』の型となり、ヴァイスに組み込まれていく。


 いくつものオートマタの電子頭脳を喰らい続け、ヴァイスは進化を続けた。

 そして……それは、ヴァイスのいた区画に全て、残されていた。


 厄災殲滅型オートマタ。

 『アンフィスバエナ』、『ラタトクス』、『キマイラ』、『コカトリス』、『ポスポロス』の五体が、見るも無惨な姿で転がっていた。

 ヴァイスは迷うことなく、五体の電子頭脳を捕食。

 電子頭脳が一気に拡張。殲滅型に残されていた知識をダウンロード。もはやヴァイスはただのオートマタではない。

 ヴァイスは、『意思』を手に入れていた。

 同時に……厄災殲滅型の『使命』まで、強烈にダウンロードしてしまった。


『───……ま、魔獣、タタ、タオス。殲滅ツツツ……』


 バグが発生した。

 気づけば、厄災殲滅型の躯体を加工し、踊るための装備……武器を作り出していた。

 ヴァイスは首を振った。


『ワタシは、踊り子型……お、オドルのが、使命です。たた、戦うコトは、シラ、知らなイイイイイイイ……』


 電子頭脳がオーバーヒート寸前だった。

 そして、自身を守るために出した一つの結論。

 ヴァイスは、無意識のうちに城へ……自分が踊るための『舞台』へと戻った。

 城は無事だった。

 舞台も無事。衣装も無事。設備も無事だった。

 ヴァイスは踊った。踊り、歌う時だけバグが発生しない。

 美しい衣装に着替え、観客のいないステージで歌い、舞う。

 

 年月が経過した。

 ある日、ホテル・ドレナ・デ・スタールにマスラオ・ショウジョウとハヌマンの軍勢が現れた。

 オートマタはまだ少し残っているが、もはや脅威とはならなくなったのだろう。

 城をねぐらにして、繁殖を行うつもりだった。

 そして、城よりも居心地のよさそうな『舞台』を見つけ、マスラオ・ショウジョウとハヌマンは踏み込んだ。


 そこにいたのは……歌い、踊る一体のオートマタ。

 踊ること、歌うことで平静を保っていたヴァイス。

 踊りを妨害するべく現れたのは『敵』だった。

 そして、ヴァイスは暴走寸前まで熱くなる。


『ムッシュ、マダム。ここは劇場です。ドド、どうか……ブブ、武器を、ヲヲ、お納め、くだサイ』


 破壊衝動。

 厄災殲滅型の電子頭脳を五体分、777体の同型機、そして戦闘用オートマタ4589体分の電子頭脳を取り込み、全ての知識を蓄え、踊りと歌の技術に転用した『最強の殺人舞踏兵器』となったヴァイスは、鉄扇を二対構えて踊りだす。


 美しき白銀の踊り子ヴァイスは、マスラオ・ショウジョウとハヌマンを、たった一体で駆逐した。

 そして……何事もなかったように、踊りだす。

 長い年月が経過し、観客もいない劇場で、ただ一人寂しく舞う。

 そんな時だった。

 現れたのは───……二人の人間。


『おきゃく、サマ……ぶぶぶ、武装、カイジョ』


 ヴァイスは踊る。

 自分が壊れないために、観客である人間を相手に。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] ある意味で自己強化してたんだ。しかし自己修復の為に壊れた仲間を貪り食うのは絵面的にホラーな気がしないでも無いが。 しかし哀しいな本来はお客に踊りを見せ楽しませる筈の存在がモンスターを倒しても…
[一言] 機械版蠱毒って感じじゃのう。 電脳部分の問題だと流石に修理は無理だろうから 終わらせてあげたいね。
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