表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/407

天空の舞踏城ドレナ・デ・スタール⑩/リング中部~驚愕のシンフォニー~

 ハイセとサーシャは、夜通しオートマタたちを躱しながら、安全な場所を探していた。

 特殊個体であるタイタンを倒したはいいが、ポーンタイプの『スラッシュ』が何体も現れ、ハイセたちの行く先々で襲い掛かってくる。

 だが、どの個体も腐食しており、ハイセとサーシャの敵ではない……が、さすがに数が多く、疲れというよりもうんざりしてきた時だった。

 夜が明け始め視界が広がる中、サーシャが指を差しつつ叫ぶ。


「ハイセ!! あの建物、この辺りの物とは毛色が違う。もしかしたら」

「ああ、行く価値はあるな」


 サーシャが指差した建物は、金属製のドームのような建物だ。

 二人は進路を変え、ドームを目指す。

 ドームに到達。金属製の重いドアを開けて中へ滑り込み、ドアを閉めた。

 閂があったので閉めると、ようやく落ち着いた。


「ふぅ……思った以上に敵が多い」

「ボロボロの連中だけどな。おそらく、オートマタだけで『敵』の存在がいなかったんだろう。だから、異物である俺らを敵と認識したのかもな」

「……ずっと、彷徨っているのか。あの敵は、動かなくなるまで……」


 少し黙り込む。そして、ハイセはドーム内を見た。

 窓が小さく、外の明かりが少ないせいで薄暗い。

 ドーム内は、一階と二階に分けられているようだ。一階部分には毛布や机、空きビンや寝袋のようなものが散乱していた。


「ここは、避難所みたいなところだったのかもな」

「二階もある。行ってみよう」


 二人は階段を使い二階へ。

 二階は個室が並んでいた。中には骸骨があるわけでもなく、ベッドと机しかない。

 部屋を調べつつ進むと、一つだけ大きな部屋があった。


「ここは……少し違う部屋だ。本や、羊皮紙がある」

「……何か、書かれている。これは……」


 それは、英語だった。

 不思議と、ハイセには読めた。


「報告書。『七大厄災カタストロフィ・セブン』の眷属『ハヌマン』の大量発生により、護衛オートマタの七割が損壊。しかしハヌマンの九割が全滅。残るは最大の厄災である『マスラオ・ショウジョウ』のみ。厄災殲滅型カタストロフィ・タイプ全七機投入。『アンフィスバエナ』、『ラタトクス』、『キマイラ』、『コカトリス』、『ポスポロス』完全破壊、修復不可能。『タイタン』、『バハムート』損壊。自動修復機能発動により動けず。『マスラオ・ショウジョウ』生存、傷の治療のため休眠。残存戦力はほぼ皆無……最終手段、『オペレーション・ドレナ・デ・スタール』発動。この国は永遠なり……」

「……なんだ、それは?」


 最後まで読み終えたハイセは、少し考えこんだ。


 ◇◇◇◇◇


 他にも、この部屋にはいくつかの資料があった。

 それらを集め、ハイセは読み始める。


「……なるほどな」

「ハイセ?」

「ここがどういう施設で、何があったのか……仮説ができた」

「……わかったのか?」

「ああ。どうする、聞くか?」

「ぜひ頼む」

「その前に、せっかく個室があるんだ、野営の支度するか。ここはオートマタの侵入もできないシェルターだからな」


 ハイセとサーシャは、個室を軽く掃除した。テントは出さず、ベッドに寝袋を置いたり、ランプを吊るし、温かい紅茶のポットを置いてカップへ。

 食事にはまだ早いので、ハイセはチョコやキャンディを出してサーシャへ。


「甘いの食べておけ。疲れ、取れるぞ」

「ああ、ありがとう」


 甘いものを頬張るサーシャは、年相応の少女にしか見えなかった。

 ニコニコしながらチョコを食べ、紅茶を飲む姿に、ハイセは少しだけ微笑む。


「な、なんだ」

「いや……相変わらず、肉と甘いのは好きだよな」

「べ、別にいいだろう」

「ああ。ところで、女の子らしい趣味は見つかったか?」

「っ!?」

「プレセアがよく言ってるぞ。サーシャは花を育てたり、アクセサリーを買ったりして悩んでるって」

「ぷ、プレセアめ……そ、そういうお前はどうなんだ」

「俺は変わらないさ。読書が趣味だね」

「むぅ……」


 ハイセはチョコをつまんで口の中へ。

 甘すぎるチョコだが、疲れた今の身体に糖分はありがたい。


「あの、ハイセ……」

「ん?」

「その、地上に戻ったら、これまで迷惑をかけた詫びがしたい。その……食事でもどうだ?」

「…………は?」

「た、他意はない。その、お詫びだ。迷惑、かけてるし……」


 髪を指でくるくる巻きながら、顔を赤く染めて言う。

 

「別に気にしなくていい。それに……お前がいて、俺も助かってるしな」

「……え」

「前衛。お前のおかげで楽できてる。ま、一人でも行けるけどな」

「ハイセ……」

「ここを踏破したら、俺一人の手柄とかにしなくていい。俺とお前、二人で踏破したってことにしろ。もう、嘘は付きたくない」

「……え? 嘘?」


 ハイセは、デルマドロームの大迷宮を一人で踏破したことになっているが、実際にはチョコラテもいた。チョコラテは魔獣だ。その経緯を話すと面倒なことになる。

 だが、ここではサーシャと二人。嘘を話す理由はない。


「とにかくそういうことだ」

「あ、ああ」

「じゃ……この『ドレナ・デ・スタールの空中城』のこと、説明するぞ」


 そう言い、ハイセは紅茶を飲み干し、カップを置いた。


 ◇◇◇◇◇

 

「いくつか資料を見てわかったけど、この空中城はもともと、地上にあったんだ」

「そうなのか?」

「ああ。この空中城、恐らくだがオートマタの技術が発達した古代の国だ。そして、この国が『七大厄災』に狙われた。狙ったのは『マスラオ・ショウジョウ』っていう猿の魔獣。一国に匹敵する群れで、このドレナ・デ・スタールを乗っ取るために襲い掛かってきたらしい」

「魔獣が、国を……? そんな知恵が?」

「あったらしいな。で、この国の最高戦力である七体のオートマタが投入されて、魔獣はほとんど殲滅できた。俺とお前が戦ったタイタンは、最高戦力の一体だ」

「なるほど……」

「マスラオ・ショウジョウは瀕死のダメージを受けた。それでも倒せず、この国は最後の手段である『オペレーション・ドレナ・デ・スタール』を発動させて、国を空へ浮かべた。マスラオ・ショウジョウが外に出ないように、国民と技術、全てを犠牲にした最後の方法で、マスラオ・ショウジョウを倒したんだ。空に浮かべて、国民はシェルターに引きこもって、マスラオ・ショウジョウは食べる物もなく餓死……」

「待った。国民を犠牲に、って……」

「国民は国から出ることなく、この俺たちがいるシェルターに避難してたんだ。ま、わかったのはここまで……空飛んだだけで、国民が全滅した理由がわからん。空を飛ぶことができたなら、降りる手段もあったはずだ。それをしないで、国民が白骨化した……何かあったんだ。報告書を書く時間もないほどの、何かが」

「…………」

「先に進めば、それもわかるかもしれない」


 ハイセは、おかわりの紅茶を注ぐ。

 サーシャもおかわりをもらい、二人は揃って紅茶を楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 1巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 3月 15日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[一言] ハイセはスキルの影響で異世界の文字が読めるのかな?日本語・英語等異なる文字が読めて兵器も召喚出来る等1番謎の能力を持ってますね。今後の展開でこの謎も回収していくのかな? 嘘をつきたくないだ…
[一言] 今度は猿系かぁ 単独踏破じゃないのに隠さなきゃいけなかったこと、やはり気にしてたんだな 今回はサーシャが乗り込んだの皆に見られてるから隠す必要ないもんね …ハイセが単独踏破する機会は今後…
[気になる点] 英語の報告書か。 やっぱりこの世界地球と関係あったんだなあ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ