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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十章 ドレナ・デ・スタールの空中城

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天空の舞踏城ドレナ・デ・スタール⑧/リング中部~鉄屑のオラトリオ~


 一瞬の浮遊感、そして真っ白な視界。

 思わず目を閉じた二人。すぐに目を開くと、何事もなかった。

 狭い部屋の中で、ハイセとサーシャは顔を見合わせる。


「なんだったんだ、今のは……」

「…………」


 サーシャの問いに、ハイセは答えられない。

 そして気づいた。つい先ほどまで見えていた空が、見えなくなっていた。

 煙突を見上げ、空が見えてたのだが、今は天井が塞がれていた。


「あれ、空が見えないぞ……?」

「……おかしいな。とりあえず、外に出るか」

「あ、ああ」


 ハイセとサーシャが横開きのドアに近づくと、勝手に開いた。

 自動ドア。つい先ほどまでなかったドアの機能に驚くが、それ以上に驚いた。


「なっ……なんだ、これは」

「……鉄の、人形」


 塔の中に、鉄の人形がいくつも転がっていた。

 綺麗な形の人形は一つもない。どれも破壊され、中身がむき出しになり、原形を留めていない物が大半だ。サーシャとハイセが戦った鉄人間と同じものもあれば、人の形をしていない物も多い。

 ハイセが転がっていた金属部分を拾い、観察する。


「錆がひどい。これは数年、数十年レベルで放置されてる金属だ」

「ま、待て。じゃあ……私たちは、あの部屋に入って、それほどの時間を過ごしたというのか!?」

「……いや、違う。ここは俺たちの入った塔とは、別の場所だ」

「な、何? 馬鹿な」

「ドアの位置が違うだろ。とにかく、外に出る……気を抜くなよ」


 そう言い、ハイセとサーシャは外へ出るドアへ向かう。

 ハイセは腰の自動拳銃を抜き、サーシャも剣の柄に触れる。

 ドアを開け、外へ出ると……そこは、とんでもない光景だった。


「…………な、なんだ、これは」


 サーシャは、唖然とした。

 そこは……まるで、大火災と暴動が同時に発生し、全てが蹂躙された後のような『街』だった。

 ボロボロの廃墟が多くあり、道には鉄人間やそうでない物が多く転がっている。

 まるで別の場所。ハイセは気づく。


「そういえば……デルマドロームの大迷宮で、最後に脱出した時と似ているな。確か、妙な筒に乗り込んで、気付いたら外だった」

「あ、私もおぼえがある。あの時の感覚に似ていた」


 二人は転送装置を知らない。

 たった今、リング下部からリング中部に転送されたのだ。

 周囲の、全く違う景色が、ここはリング下部ではないと実感させる。


「恐らく、ここは……真ん中のリングだ」

「私もそう思う。あの塔が、移動手段だったようだな」

「ああ。だけど……この景色。間違いなく、ここで何かあったんだ。この残骸だらけの町……大規模な戦いがあったのは、間違いない」


 そう言い、ハイセは転がっていた鉄人間の頭を軽く蹴る。

 コロコロ転がり、別の鉄人間の頭にぶつかり止まった。


「わけがわからん。下は普通の町に見えて、ここではこんな……全てが蹂躙されたような跡しかないなんて……」

「……戦争、か?」

「それが自然な考えかもしれない。だが、見ろハイセ……これだけの戦闘があったのに、人間の死体……いや、骨が一つもない。あるのは鉄だけ……」

「恐らく、古代人は自分で戦わず、この鉄人間に戦わせていたんだろうな」

「…………」

「よし、辺りを調べてみるか」


 ハイセは歩き出し、サーシャも無言で後に続いた。


 ◇◇◇◇◇


 やはり、辺りは廃墟と鉄屑しかない。

 激しい戦闘があったのは確定。そして、戦っていたのは鉄人間たち。

 ふと、気になったのは……鉄屑意外に、巨大な何かの『骨』があったことだ。

 二人が到着したのは、リング中部の中央広場。リングの造りは下部とほぼ同じで、住居の位置も同じだった。名残があったのでサーシャが気づいたのだ。

 サーシャは、中央広場にあった何かの『骨』を拾う。


「これは、骨?」

「……人間、じゃないな。魔獣の骨か?」

「恐らくな。もしかしたら、鉄人間は魔獣と戦っていたのか?」

「魔獣、禁忌六迷宮…………そういえば、デルマドロームの大迷宮にいた魔族が言ってたな。禁忌六迷宮は、魔獣を閉じ込める檻だとか」

「私も聞いた。確か、『七大厄災カタストロフィ・セブン』だったか。全てを滅ぼす七つの厄災が、禁忌六迷宮に封じられているという……まさか、鉄人間が戦っていたのは、厄災なのか?」

「可能性はある。あの骨、もしかしたら厄災の一つか?」


 ハイセが言う骨は、巨大な《手》のような形状だった。

 大きさは、手だけで数メートル以上ある。もし全身があるならどれほどの大きさなのだろうか。

 ハイセは周囲を観察する。


「サーシャ、まだ使えそうな廃墟を探して野営しよう。気配を感じにくいが、下部で見た鉄人間がまだいるかもしれない……用心していくぞ」

「ああ、わかった。気配は感じにくいが、感じないわけではない。もう不意な接近は許さないぞ」


 少し歩き、まだ原形がある廃墟に入る。

 一階部分はボロボロだったが、二階部分は使えそうだった。

 ハイセは、廃墟の入口に何かを置いている。


「何を置いている?」

「地雷だ。センサー式で、このドアに近づくと爆発するフラグメンテーション・タイプの地雷だ。危険だから、絶対に近づくなよ。秒速1200メートルで飛ぶ弾丸は、お前の闘気でも防御できないぞ」

「あ、ああ……よくわからんが、恐ろしい武器というのはわかった」


 ハイセは、地雷を一階にセットしていく。

 もし、鉄人間が入ってきても問題はない。

 地雷をセットし、二階へ。

 二階の一室を拠点として、テントを張り、食事にする。

 今回も、ハイセのアイテムボックスにある屋台で買った食べ物だ。スープに焼き立てのパン、肉串などを出し、二人で食べる。

 食べながら、ハイセは言う。


「明日も周囲の調査をする。おそらく、ここに来た《塔》がどこかにある。上部のリングへ行けるだろうな」

「ああ、わかった。だが、こう廃墟だらけだと、店とかは期待できないな」

「仕方ないだろ。ま、俺としてはここがこうなった原因を調査する方が楽しいけど」

「…………」

「なんだよ、サーシャ」

「いや……」


 サーシャは、わからなかった。

 禁忌六迷宮に来て、自分は何をしているのか。

 ハイセに無理やり付いてきたはいいが、踏破するという情熱があまり燃えていない。

 理由は……レイノルドたち『セイクリッド』がいないからだ。


「……無理をしてでも、お前に依頼するべきだったのかもな」

「ん?」

「私は、お前に無理やり付いてきたが……お前に依頼をして運んでもらうという可能性も、あったのだろうな」

「…………」

「す、すまない。忘れてくれ……ああ、湯をもらえないか? 清拭をしたい」

「ああ、いいけど」

「感謝する」


 ハイセは、鍋いっぱいのお湯をサーシャへ。

 サーシャはテントに入り、鎧を脱ぎ、身体を拭き始めた。

 ハイセは食後のお茶を飲みながら、廃墟にあった椅子に座り、ランプのそばで読書を始めた。

 本を読みつつ、サーシャのテントをチラッと見る。


「…………」


 サーシャの悩みに、ハイセは答えるすべを持っていない。

 そう思いつつ、ハイセは本のページをめくった。

 

 ◇◇◇◇◇


 次の瞬間、廃墟の一階で爆発音が鳴り響いた。


 ◇◇◇◇◇


「───……ッ!?」

「ハイセ!! 今のは!!」

「地雷が爆発した!! 下に何か……ッッ、お、おい!?」

「え?」


 テントから飛び出したサーシャは……上半身裸だった。

 身体と髪が濡れている。清拭の途中だったのだろう。

 サーシャは真っ赤になって胸を隠し、ハイセも顔を赤くして顔を逸らした。


「じゅ、準備出来たら来い!!」


 ハイセは両手に自動拳銃を持ち、上ずりそうになる声で叫び、一階へ向かったのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] シコサン(指向性散弾、対人地雷のひとつ)までも錬成するようになり、兵器のバリエーションが増えているのが好印象。 人間はもとより、生物すらいない迷宮でどれだけ兵器の性能を活かせるか今後の戦法…
[一言] 作者の力量が無さすぎてダブル主人公のつもりらしいサーシャに魅力を全く感じない ヘイト溜めるだけだしこのキャラをどうしたいんだ・・・
[一言] 置いてきちゃった罪悪感や、役に立たない無力感。「仲間」を再認識ですかね、まぁ引っかかりが有るとモチベーション翳るって。 サーシャは基本的に脳筋なキャラのくせにナーバスだからな〜。 反射的…
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