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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十章 ドレナ・デ・スタールの空中城

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天空の舞踏城ドレナ・デ・スタール⑦/リング下部~中部へのラプソディ~

 謎の鉄人間? を倒したハイセとサーシャは、三つあるリングの真ん中へ行く方法を探していた。

 鉄人間。妙な熱を放つ腕、肉がない完全な鉄。初めて遭遇する魔獣であり、魔獣と呼んでいいのかもわからない。

 ハイセは、鉄人間の頭をお手玉しながら言う。


「こんな魔獣、見たことがないな。もしかしたら……古代には、こういう魔獣が普通にいたのかもな」

「だとしたら厄介だな……」

「サーシャ、これ斬れるか?」


 ハイセは、鉄人間の頭をサーシャに放り投げる。

 サーシャは一瞬で抜刀、闘気を剣に纏わせ、連続で七回、ほぼ一瞬で斬り刻む。

 頭部がバラバラになり地面に落ち、サーシャは納刀する。


「容易い。スライムを斬るのと変わらない」

「頼りになる。俺の銃弾が通りにくいから、次に出てきたらお前に任せる。俺は援護するからよ」

「ああ、任せておけ」


 そう言い、二人は歩き出す。

 少し歩き、サーシャは言った。


「どこへ向かっている?」

「あそこだ」


 ハイセが指差したのは、現在いるリング下部で一番高い建物……いや、塔だ。

 

「ここらで一番高い場所だ。あそこから街を見下ろせば、上に行く手段があるかもな。もしかしたら、あの建物が上に行く手段かもしれない」

「なるほどな……ふぅ」

「……どうした?」


 サーシャがため息を吐いた。

 少し気になり、ハイセは聞く。

 サーシャは、苦笑しつつ言う。


「いや……禁忌六迷宮だというのに、私は何の役にも立っていない。考えるのも、道具も、食事も、全部ハイセ頼り……私は、仲間がいなければ何もできないんだなと、実感している」

「…………仕方ないだろ」

「え?」

「お前は、仲間がいてこそのS級冒険者なんだ。なんでも一人でやる俺とは違う」

「…………」

「言っておくけど、俺はお前の仲間じゃないぞ。そもそもお前、勝手に付いてきただけだしな」

「……う、む」


 それだけ言い、ハイセは前を向いた。


 ◇◇◇◇◇


 塔に到着した。

 塔の周辺は柵で覆われ、厳重な門で閉ざされている。

 ハイセが門を開けようと触れると、鍵もなく普通に開いた。


「開いているのか?」

「ああ。見ろ、鍵穴はない。でも、何か操作して開けるような仕掛けがある。禁忌六迷宮の最奥にも、こんな感じのドアがあった」


 二人は、電子ロックや生体認証という言葉を知らない。電気エネルギーが通電していないので、今は全てのロックが解除され、ただの重い扉と化しているだけとも知らない。

 門を開け、電子ロックのドアをこじ開けて塔の中へ。

 塔の中は、何もない。

 ドアが一つ、大きなドアが一つ、ハイセたちが来た入口が一つだけの部屋だ。


「……何もないな」

「ドアだけ……ハイセ、どうする?」

「当然、ドアを調べる」


 最初に、小さなドアを調べる。

 ドアが開き、中に入ると……そこは、やや見覚えがある部屋。

 ハイセもサーシャも、見たことがある部屋だ。


「禁忌六迷宮の最奥にあった部屋に似ているな」

「俺もそう思った」


 押しボタンがいくつもある板、ガラスの画面、金属の箱。

 部屋は狭く、それくらいしか物がない。金属の箱にはいくつもボタンがあり、よくわからないレバーや、透明なガラス板がいくつもあった。

 

「狭いな……ここは何の部屋だ?」

「禁忌六迷宮では、何かの操作室だった。この板のボタンを押したら、禁忌六迷宮が崩壊した……」

「お、おい……まさか、ここが崩壊するのか? ハイセ、ど、どうしよう」

「落ち着け。そうと決まったわけじゃないだろ。それに、崩壊してもすぐじゃない。攻撃ヘリを出して脱出する時間は十分にある。さて……少しいじってみるか」

「い、いじる? 大丈夫なのか?」

「そうしなきゃ始まらないだろ」


 そう言い、ハイセは板のボタンをカチカチ押す。

 だが、何も反応がない。


「サーシャ、お前も調べろよ」

「う、うむ……じゃあ」


 サーシャは、壁に設置されているレバーを倒してみた。

 すると、室内の電気が灯り、ブゥーンと鉄の箱が動き出し、箱の画面に光が灯った。


「おお、そのレバーのおかげか」

「だ、大丈夫なのか? いきなり動き出したぞ? ど、どうする?」

「落ち着け。室内が明るくなったぞ。ほら、その大きなドアも光ってる。たぶん、何か変化があったんだ……よし、行ってみるか」

「あ、ああ……ハイセ、怖いもの知らずだな」


 二人は小部屋を出て、大きなドアの前に立つ。

 ドアは横開きの金属製。ドアというより門に近い。そばには黒い板があり、ハイセがその板に触れる。


『codeリセット。緊急開放します』

「ん? なんだ?」

「喋ったぞ?」


 古代語を理解できない二人は首を傾げるが、同時にドアが開いた。

 ドアの先は何もない。ただ広い空間があるだけ。

 中に入り、上を見ると……吹き抜けだ。青い空が見えた。


「塔、というか……まるで煙突だな」

「意味が分からん。なんだ、この場所は? 大きな門が開いたと思ったら、何もない……?」


 二人が訝しんで空を見上げていたせいで、気付かなかった。

 床が、淡く発光していた。


「「───ッ!?」」


 気づいた瞬間、二人の身体が光に包まれ───……。


『転送します』


 そして、消えた。


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 一方その頃、地上では。

 サーシャがハイセにくっついて禁忌六迷宮へ向かってしまったので、レイノルドたちはクランに戻り、今後の対応をしなくてはならなくなった。

 レイノルドたちがいるのは、ハイベルグ王国郊外に完成した、新しいクラン『セイクリッド』のクランホーム。

 王都から徒歩十分ほどの距離にあり、道中の街道もしっかり整備されている。

 ホームとなる建物は王都にある支部の数倍以上。訓練場、各種商店、宿屋や食事処なども商業ギルドと契約して入れた、小さな町のようなクランだ。

 実はレイノルドたちは、ハイセを見送りに来たわけではない。この新クランホームへ向かう途中で、サーシャが『ハイセの見送りに行く』と言い出したのだ。

 まさかサーシャが、ハイセと共に行くとは思わなかった。

 レイノルドは大きなため息を吐く。


「あ~~~……頭、痛いぜ。なぁおい、どうなってんだ」


 サーシャが、ハイセと禁忌六迷宮へ。

 本来なら、ハイセを見送った後にこの新クランホームで完成式を行い、本格的にクラン運営を開始するはずだった。

 だが、その予定は白紙となる……なぜなら、サーシャがいないから。

 タイクーンは言う。


「仕方ない。サーシャが戻るまで、ボクらでクラン『セイクリッド』を運営する。レイノルド、臨時のクランマスターとして頼むぞ」

「へいへい……はぁぁ」

「サーシャなら心配ない。ハイセが一緒だ。というか、あの二人がいればSSS級だろうが敵ではないだろうさ」

「…………」


 そうじゃない。

 レイノルドの心配は『サーシャがハイセと二人』ということだ。

 想いを伝えたばかりなのに、答えを聞く前に『こんなこと』になってしまった。もう、答えが出たような物だと、レイノルドはため息が止まらない。

 すると、ロビンが言う。


「サーシャ、禁忌六迷宮に挑みたかったんだね」


 そして、爪を噛んでいたピアソラ。


「キィィィィッ!! ハイセ、ハイセェェェェ……サーシャと、サーシャと二人きり……ッ!! クゥゥゥゥゥゥッ!!」


 ガジガジガジと、爪を噛む。

 今さら何を言っても仕方がない。サーシャがいなくても、明日はやってくるのだ。


「……仕方ねぇ。サーシャ不在だが、オレらでクラン『セイクリッド』をやっていく。タイクーン、ピアソラ、ロビン、サーシャが戻るまで頼むぜ」


 複雑な気持ちのまま、レイノルドを臨時マスターとしたクラン『セイクリッド』が動き出した。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] Episode 6でサーシャがハイセに対して「この役立たずが!!」と罵倒していたが、今回の空中城では思いつきの判断でハイセに便乗同行したためアイテムボックス等の資材を忘れる失態を犯した。ハイ…
今回のピアソラおもろい!
[良い点] サーシャ色々できないってなってるけど、まぁ元々戦闘できるかどうかだったからしゃーない。 物語だから何でもできるけど、基本は冒険者なんぞ役割バラバラじゃないと成立しないでしょ。 [一言] …
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