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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二章 無口なエルフと万年光月草

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ハイセの旅①

「ん~……いい天気だな」


 ハイセは一人、のんびり歩いていた。

 地図を見て、街道沿いにある小さな町があるのを確認。今日はそこまで歩き、一泊しようと決めた。

 後ろをチラッと見ると、プレセアと名乗ったエルフの少女が、きっちり三十メートル間隔で付いてくる。

 面倒なので、相手にはしていない。話すと意外に会話が弾むが、そこまでして話したいとも思っていない。特に干渉しなければ、霊峰に入るくらいはいいかなと、ハイセは思っていた。

 すると、街道の脇にある藪から、ホブゴブリンという大型のゴブリンが飛び出してきた。


「来い、ライフル銃」


 レバーを引いて弾丸を装填し、ホブゴブリンの頭を狙って引金を引くと、轟音と同時にホブゴブリンの頭が吹き飛んだ。

 薬莢が落ちると同時に消滅する。すると、矢を番えようとしていたプレセアが、僅かに目を見開いてポツリと呟いた。


「……なんて威力」

「ま、そう思うよな」


 答えたことで、会話をしていいと思ったのか、プレセアが近づいてきた。

 そして、ハイセの持つ武器、歩兵銃(ライフル)をジーっと見る。


「それ、あなたの能力?」

「ああ」

「……私の能力は『精霊使役(ハイピクシー)』……眼に見えない、精霊を自在に使役できる。精霊同士は離れても会話できるから遠くで盗み聞きしたり、精霊にお願いして姿を消したりもできる」

「…………いきなりなんだよ」

「あなたの能力は?」

「おま、ずるいな」


 相手の能力を聞いたら、自分のも話さなくてはいけない。

 互いに信頼関係を結ぶための、暗黙の了解みたいなものだ。

 ハイセはため息を吐き、ライフルをプレセアの顔に近づけた。


「俺の能力は『武器(ウェポン)マスター』だ。この世界じゃない、別の世界の武器を自在に使える」

「マスター系能力……え? この、世界じゃない?」

「俺にもよくわからない。まぁ、話せるのはそれだけ」


 ライフルが溶けるように消え、ハイセは再び歩き出す。

 すると、プレセアはハイセの隣に並んだ。


「……おい」

「たまたま隣なだけ。別に、話すことないから」

「…………」


 ハイセはため息を吐き、ほんの少しだけ早歩きをして先に進んだ。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 ハイベルク王国から東へ進み、一番近い町に到着した。

 大きさはそれほどでもない。住宅が並び、町の中心には店が立ち並んでいる。宿屋も数件あり、王都へ向かう前に立ち寄り、休むような宿場町だ。

 だが、意外に人が多い。

 ハイセは、町の入口を守る守衛に冒険者カードを見せながら聞く。


「あの、けっこう賑やかだけど、何かあるんですか?」

「ああ、この町ができてちょうど二百年のお祭りがあるんだ、って……え、S級冒険者!?」


 ハイセの質問に答えながら冒険者カードを確認し驚愕する守衛。


「やばいな。宿とか空きあるかな……」

「そ、それはわからんけど、穴場なら知ってるぞ。居心地にこだわらないなら、この路地をまっすぐ進んだ先にある『小鳥亭』ってところに行きな。普段もガラガラだし、地元民でも宿屋ってこと忘れる時がある」

「わかった。どうもありがとう」

「ああ、お連れさんもな」


 と、ハイセはプレセアが後ろにいたことを完全に忘れていた。

 プレセアは無言でハイセの後ろを歩き、守衛の言った『小鳥亭』にもついてきた。

 

「……ボロイな。でもまぁ、いいか」


 ハイセは王都で拠点にしている宿とそう変わらないボロさだ。

 だが、一泊しかしないし気にしない。町はすでにお祭りのようだ。

 さっそく受付へ。


「一泊お願いします」

「はいよ。悪いけど、今空き部屋が一つしかなくてねぇ」

「え?」

「お祭りだし、ウチみたいなボロでもお客が入るのさ。一緒で問題ないかい?」

「一緒? あ……」


 プレセアが後ろにいた。

 するとプレセアが言う。


「一緒で」

「おい!?」

「はいよ。じゃあこれ鍵ね。うちはボロだけど、部屋の壁や扉は分厚いから、騒がしくしてもかまわないよ」

「ありがとう」


 何かを勘違いしているが、プレセアは鍵を受け取りスタスタ行ってしまう。


「おい、お前!!」

「部屋、こっちよ?」

「…………」


 部屋に入るハイセ、プレセア。

 ボロイが、なかなか広い。ベッドも大きい。

 そして、意外にもシャワーが付いていた。お湯も出るし、どうも『そういうこと』をするための宿に見えてしまうハイセだった。

 すると、装備を外し、服を脱ぎだすプレセア。


「は!? おま、なにを」

「報酬、前払いのぶん」

「はぁ!?」

「シャワー、浴びてくる」

「ちょ、待った!! 待った!!」

「…………なに? そのままがいいの? 汗、掻いてるけど」

「意味わからんこと言うな!!」


 プレセアは、全裸のままハイセの前に立ち、首を傾げた。

 羞恥心がないのか。隠そうともしない。ハイセが顔を逸らすが、耳まで真っ赤になっていることにプレセアは気付き、言う。


「まさか、未経験?」

「……う、うるさい」

「S級冒険者。お金いっぱいあるでしょ? その年なら、いろいろお盛んじゃないの?」

「…………」

「ま、私も未経験だけど」

「お前は何を言ってんだ。いいから服を着ろ。あと報酬の前払いって何だよ」

「私を好きにしていい。万年光月草を手に入れたら、後払いでお金払うわ」

「…………いらねぇ」

「え?」

「金だけもらう。お前の身体はいらん」

「……ちょっとショックね。スタイルには自信あるんだけど」


 確かに───プレセアは、酷く魅力的だ。

 染み一つない真っ白な肌。ほどよい大きさの胸。細い身体はしなやかで、毒に侵されたようにハイセは顔が赤くなってしまう。

 

「……じゃあ、お前の話を聞かせろ」

「私?」

「万年光月草。なんで欲しいんだ?」

「…………」


 プレセアは、アイテムボックスから下着と新しい服を取り出し着替えた。

 そして、ベッドに座る。


「姉が病気なの」

「病気……」

「エリクシールがあれば治る。素材はほとんど揃えたけど、万年光月草だけ手に入らない……霊峰ガガジアへ入る申請をしたけど、通らなかった。今、ガガジアはすごく危険な魔獣が繁殖期に入って、餌を求めて徘徊している。四大クランの『神聖大樹(ユーグドラシル)』も手を出せない」

「…………」

「でも、あなたなら別」

「俺?」

「ええ。ハイベルク王国の依頼がある。森国ユグドラはハイベルク王国の属国だから、ハイベルク王国の依頼書があれば霊峰ガガジアに入れる。万年光月草を手に入れられる」

「なるほどな。それで」

「ええ。あなたと冒険者ギルドで出会って、東方へ行くと言ったから……ギルドマスターとの会話を聞かせてもらったの。目的が霊峰ガガジアって聞いて驚いたわ」


 つまり、プレセアは姉のために万年光月草を手に入れなくてはならない。


「西方に行ってたのは?」

「万年光月草を探すため。ガガジアに入れないなら、他を探すしかないと思って」

「…………」

「お願い。あなたがガガジアに入る時、私もあなたの《仲間》として同行させて。万年光月草を手に入れたら、私の全財産をあげる」

「…………わかった」

「ありがとう」

「その代わり。あくまでお前は俺の後ろをついてくるだけだ。仲間じゃない。俺はソロの冒険者だからな。霊峰ガガジアに入るほんの少しだけの同行だぞ」

「ええ。安心して、ソロとしてやってきたのは私も同じだから」

「それでいい。あと、この部屋は……」

「数時間だけだし、一緒でいいわ。私を抱きたいなら拒まないわよ」

「いらん。ったく……」


 ハイセは立ち上がる。


「どこに?」

「メシ。これだけ騒がしい祭りなんだ。出店くらいあるだろ」

「そう……私も行こうかしら」

「勝手にどうぞ」


 二人は宿を出た。

 さすがに、プレセアは付いてこなかった。

 ハイセは安心して、出店巡りをするのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
うーん、この手の闇堕ちというか目標は定まってるのにメンタルがネガティブな主人公が女を抱いて性格が前向きになる話好きなんだけど、果たして恋仲になるのか…… 追放ものではあるけどそれ以外は王道っぽいしない…
[良い点] これ取ってきて渡せば良くね
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