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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第九章 双子の魔族

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ドレナ村のオークション④


 間違いなく、チョコラテだった。

 今現在、ハイセは仮面を被っているのでバレる心配はない。だが、バレたらバレたで面倒なことになるだろう。

 すると、チョコラテとその仲間たちはあっという間に兵士たちに囲まれた。


『皆さん、落ち着いてください。彼らは狼藉者を排除するオークションの護衛たちです。いやぁ、いるんですよ……正義感を振りかざし、我々の娯楽を潰そうとする輩が。ではではオークションの続きといきましょうか!!』

『フハハハハハっ!! 悪党め、なかなかに強いようだが、このチョコラテを相手にするにはまだ早い!!』

「ちょっと、いちいち騒がないでよ。うるっさいわ」

「あはは~……リーダーは頼もしいねぇ」

『グルルルル』


 どういう組み合わせなのだろうか。

 活発そうな少女は長い杖を持っている。耳が長く、露出の多い踊り子のような服装をしており、プレセアと同じエメラルドグリーンの長髪をポニーテールにした、十六歳ほどの少女だ。

 もう一人、どこか間延びしたような声を出すのは、小柄でほっそりした茶髪の少女だ。が……手に持つのは巨大な戦槌(ウォーハンマー)で、ランニングシャツに作業ズボン、ヘルメットをかぶっている。

 もう一匹は、二つ首の狼だ。毛並みは青く、二つある首の一つは唸り、もう一つはスンスンと周囲の匂いを嗅いでいる。

 そして、全身漆黒の鎧を着たチョコラテだ。


『あ、侵入者さん。そこにいる六人の護衛ですが、全員がS級冒険者に匹敵する強さを持っていますんで頑張ってくださいね。ふっふっふ、皆さん、安心して競りを再開しましょう!!』

「あー待った待った!! あたしら、冒険者ギルドから正式に依頼受けて、このオークションを調べに来たのよ。もうすぐここに大勢の冒険者が殺到する……あんたら全員、逃げた方がいいんじゃない?」

『ほーう、そりゃ面白いですねぇ』


 司会者はニコニコしながら手をパンパン叩く。

 すると、ステージ奥の壁が開き、通路が現れた。


『えー、会場に起こしの皆さま。本日はそこの冒険者のせいで、楽しいオークションが台無しになってしまいました。護衛が守りますので、この奥へお進みください。冒険者たちが到着しだい、この会場を爆破します。ご安心ください、皆様の乗って来た馬車や荷物など、全て通路先にご用意してあります。皆様、本日のオークションはこれまでとさせて頂きます。皆様、誠に申し訳ございませんでした』


 切り替えの早い司会者だった。

 こういうことが以前もあったのか、観客たちは落ち着いている。

 舌打ちしてチョコラテたちを睨んだり、大きなため息を吐いて席を立つ者が多い。


「どうする」

「もういいか?」

「だな。ガイストさんには悪いけど、こりゃ想定外ってやつだ。ハイセ、やろうぜ」

「ああ」


 ハイセは立ち上がり、入口付近で護衛六人に囲まれているチョコラテたちを見た。

 護衛は全員、後ろを向いている。

 ハイセは回転式拳銃(リボルバー)のファニングショットで、六人の心臓をほぼ同時に撃ちぬいた。


『え……』


 驚く司会者。

 ハイセは自動拳銃で司会者の足を撃ちぬく。


『うっぎゃぁぁぁぁっぁ!?』

「全員、動くな!! 動けば撃つ!!」


 そう叫ぶが───『撃つ』の意味を理解できないオークション客は、一斉に逃げ出した。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「な、なんだァァァァッ!?」「に、逃げ、逃げろ!!」

「いやぁぁぁっ!!」「こ、こんなの聞いていないぞ!!」

「あ、おい!! あー……」


 オークション客は一斉に逃げ出す。

 すると、チョコラテが叫んだ。


『まさか……わ、我が友? 我が友ハイセ!? おおぉぉぉぉぉぉ!! こ、こんなところで、こんなところで会うとは奇跡!! ハハハハハハハッ!! ……って、何をしている?』

「後にしろ、敵だ!!」

『ぬっ!!』


 すると、会場の護衛が大漁に流れ込んできた。

 ハイセは両手に自動拳銃を持ち、レイノルドは拳をパキパキ鳴らす。


『フハハハハハ!! 我が仲間たち、暴れるぞ!!』

「は、ハイセって……最強の冒険者? アンタ、どういう知り合い……?」

「まぁまぁ。話はあとだねぇ」

『『ワォォォォン!!』』


 チョコラテたちは、流れ込んできた冒険者と戦闘を始めた。

 レイノルドも飛び出し、向かってきた護衛の顎にショートアッパーを叩きこみ、ハイキックで側頭部を蹴り飛ばす。やはり、かなりの強さだ。

 ハイセも銃を連射───……そして、見た。


「…………」

「…………」


 全てを諦めたような、双子の魔族。

 二人の眼が、ハイセを見た。


「…………ああもう、その眼」


 ハイセはステージへ。

 そして、魔族の檻をステージ裏へ押そうとする司会者を蹴り飛ばし、檻のカギに向かって発砲。

 檻を開き、双子に言う。


「生きる気があるなら来い!! どうする!!」

「……い、いく」

「し、しにたく……ない」

「よし!! 行くぞ!!」


 ハイセは、大型拳銃で手枷の鎖を壊す。

 すると、少女がハイセの袖を引っ張った。


「あ……」

「ん? なんだ、早く言え」

「あ、あの……い、いぬ」

「いぬ? 犬……ああ」


 ハイセはステージ裏に行くと、開けっ放しになった大量の檻があった。どうやら、騒ぎが始まると同時に、隙を伺っていた奴隷が檻を脱出。残った檻を解放し逃げ出したようだ。

 すると、一つだけ開いていない檻があった。

 そこにいたのは、白い狼……フェンリル。


「……どうする。お前、ここで死ぬか? それとも、俺と来るか?」

『…………』

「あの双子が、お前を助けろとよ」


 そう言い、ハイセは檻の鍵を大型拳銃で撃ちぬく。

 檻を開け、近くに落ちていた鍵でフェンリルの口枷を外す。


「あとは好きにしろ。じゃあな」


 ハイセはステージに戻ると、護衛が双子に剣を向けていた。

 ハイセは自動拳銃を発砲。護衛は脳天を撃ちぬかれ即死。

 すると、別の護衛がステージに飛びあがり、双子を狙って剣を振るう。

 ハイセは舌打ちをして引金を引いた瞬間。


「ッ!?」


 薬莢が詰まった(ジャムった)

 引金が引けず、弾丸が出ない。

 ハイセは自動拳銃を消し、再び手元に召喚するが───……間に合わない。

 双子が目を閉じ、剣が振り下ろされた。


「墳ッ!!」


 ズドン!! と、ガイストの飛び蹴りが護衛の腹に直撃。

 護衛はとんでもない速度で飛び、天井に突き刺さり破壊した。


「遅くなった」

「ガイストさん!!」

「状況を簡潔に」

「別なところから派遣された冒険者チームが会場内に突入、外には大勢の冒険者チームがいるらしい!!」

「チッ……こちらと同じ情報を掴んで突入してきたか。こちらは潜入しての情報収集、別口は会場への突撃と一網打尽というところだな。ハイセ、今は引く……ついてこい!!」

「はい!! レイノルド!!」

「ん、おう!! だらぁ!!」


 レイノルドの拳が、護衛の顔面に直撃。

 ハイセは叫んだ。


また後でな(・・・・・)!!」

『ッ!! 我が友……ああ、わかった!!』


 ハイセはチョコラテに向かって頷く。

 そして、双子を見た。


「走れるか?」


 二人は頷いた。すると、ハイセの足元にフェンリルもいる。

 レイノルドは双子を見て「マジか……」と呟いたが、ガイストが走り出したのでそれ以上何も言わず走り出す。

 ハイセは両手に自動拳銃を持ち、双子を先に行かせ殿を務めた。

 ガイストが向かったのは、司会者が開けた脱出用出口。

 そこに、乗って来た馬車が止まっていた。

 どうやら、オークションが始まってすぐに移動されたようで、非常時に備えていたようだ。


「表には大勢の冒険者チームがいる。ここで『冒険者です、潜入していました』と正直に出て行くと時間が取られそうだ。利用できるなら、この脱出口を利用しよう」


 脱出通路は、村の外に通じていた。

 馬車が何台も通った跡があり、参加者の大勢が逃げたようだ。中には奴隷もいただろう。

 馬車が村を出て、ハイベルグ王国に向かう街道を走り始めると……ようやく、速度が落ちた。

 馬車内も、ようやく安堵に包まれる。


「ガイストさん、ブツは見つけたんですかい?」

「ああ、なんとかな。それよりハイセ……説明してくれるんだろうな」

「う……」


 レイノルドは「うーん」と唸り、ガイストはどこか苦笑している。

 現在、ハイセの両隣には、双子の姉弟が座っており、足元には白い小さなオオカミも身体を丸めて休んでいた。


「とりあえず……いろいろ『やっちゃった』感はあるんで、今は何も言わないでくれるとありがたいです……はい」

「……やれやれ」


 双子は心配そうにハイセを見つめており、ハイセはその視線を見ないよう小さくため息を吐いた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] まあ「弱者を切り捨てない」のがハイセだししかたがないねw それにしてもチョコラテのテンションの高さよw キャラのイメージが「我が友」ってセリフで綺麗なジャイアンになってしまったぞ。
[良い点] チームじゃなくて『ファミリー』ができましたか。 [一言] ここまでレイノルドにオンブ抱っこだったんで ハイセの格闘術も見たいとこではありました。 ファニングショット気に入ってるようで …
[一言] チョコラテが仲間たちに囲まれ楽しそうに生きてて本当に良かった
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