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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第九章 双子の魔族

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ドレナ村のオークション②

 ハイセとレイノルドはオークション会場へ。

 建物内は広い。オークション会場がメイン会場で、他にもギャンブル会場やカフェ、レストランにバー、さらに理髪店や洋装店などがあった。

 だが、利用客はあまりいない。

 これから始まるのは、メインのオークションだ。

 最奥の会場に入ると、受付がバッジの確認をしていた。


「おい、確認あるぞ」

「問題ないよ。これ、ガイストさんが用意したバッジだぞ?」

「あー、確かにな」


 ハイセとレイノルドはボソボソ話しながら受付へ。

 無言で胸元のバッジを見せると、丁寧に一礼された。

 安堵の息を吐かないよう気を付けながら会場内へ。

 会場は、扇のような形をしていた。ステージに対し、椅子とテーブルが用意され、さらに仕切りがある。段々になっており、席は自由のようだ。

 ハイセとレイノルドは目立たないよう、真ん中でも隅でもない、無難な空き場所に座る。

 座るなり、仮面を被り派手な衣装を着た女給が、シャンパンをテーブルへ。前屈みになると胸の谷間がよく見え、レイノルドが「おぉう」と呟いた。

 女給が、レイノルドに向けてにっこり微笑んで下がる。


「アホ」

「いいだろ別に。見るだけならタダだしな」


 ハイセは、シャンパンを飲むようなことはしない。

 レイノルドも、シャンパンには手を付けず周囲を観察していた。仮面のおかげで、視線だけを動かすくらいなら怪しまれることはない。

 

「ぶわっはっはっは!! いやぁ~、今日の競りが本当に楽しみでの。白金貨五百枚持って来たわい」

「おっほっほ。さすがですな。実はワタシ、三百枚ほど」


 貴族だろうか。恰幅のいい男と、ガリガリの男が同じ席で喋っている。

 他にも、女同士だったり、恋人同士だったり……驚いたことに、子供もいた。どう見ても十歳ほどの少年が、ソファで足をパタパタさせながら言う。


「父上、今日は新しい奴隷を買うんですよね? えへへ、前に買った奴隷、すぐに『壊れ』ちゃったし、今度は頑丈なのがほしいです!!」

「はっはっは。わかっておる。今日の目玉商品の一つに、オーガと人間のハーフがいるようだ。そいつなら頑丈だと思うぞ」

「やったぁ!!」


 レイノルドは、ハイセが辛うじて聞こえるくらいの舌打ちをした。


「腐った貴族ってのは、価値観が狂ってやがる」

「レイノルド」

「わーってるよ」


 もし、ここで暴れることになったら。

 ハイセは、腐った貴族に間違えて『誤射』してしまうかもしれない。そんな風に思った。


 ◇◇◇◇◇


『えー、大変長らくお待たせいたしました!! これより、本日のメインイベント!! 超絶希少!! 奴隷、オークションを開催いたします!!』


 ステージに上がった司会者の声が、部屋中に響いた。


「うるさっ」

「能力か何かだな」


 周りは拍手に包まれる。指笛を鳴らす者もいた。

 司会者はニコニコしながら手を振ると、会場内が静かになる。


『えー、皆さん。金貨の準備はよろしいでしょうか? 今日のために、選りすぐりの奴隷を用意してまいりました。残念なことですが、皆様はお帰り時、空っぽになった財布を握りしめ帰ることになるでしょう!!』


 ドッと笑いに包まれる。ハイセとレイノルドは何がおかしいのか理解できないが、とりあえず曖昧に笑ってごまかした。

 司会者も興奮してきたのか、オーバーリアクションで叫びながら説明する。


『ではでは、さっそく始めましょう!! まずは、世にも珍しい、純白のウルフ!! 一万頭に一頭、生まれるかどうかという『アルビノウルフ』から!!』

 

 最初に出てきたのは、檻に入れられ首輪を嵌められた真っ白な子犬……いや、オオカミの子供だった。

 アルビノウルフ。説明にもあった通り、一万頭に一頭、生まれるかどうかわからない貴重な魔獣。

 通常のウルフは討伐レートEクラス。群れを作って狩りをする。

 だが、アルビノウルフは違う。白い毛並みに真っ赤な瞳は異常進化を遂げた変異種。群れを作ることなく単独で成長し、大きさも全長十メートルを遥かに超える巨体となる。

 

「……ん」


 ハイセは、胸に入れていた古文書を取り出してページをめくる。

 何となく、熱を持ったような『何か』を感じた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『あのアルビノウルフ。マジでデカい。クッソデカい……しかも真っ白。オレの銃弾を躱しやがった。へへへ、面白れぇ……絶対に狩る!! と思ったが……飼うことにしました。だってコイツ、オレを認めたのかすっげー懐いたし、キュンキュン鳴いて可愛いんだもんな。

 そういや、オレが日本にいた時、本で読んだことがある。北欧神話に『フェンリル』ってデカい犬いたけど、こいつはそれにそっくりだ。つーわけで、アルビノウルフじゃねぇ、白いウルフは『フェンリル』って名前にする。ふふふ、広まるといいなぁ』


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「…………」

「おい、ハイセ。始まったぞ……競りを長引かせる。入札するぞ」

「あ、ああ」


 ハイセは、アルビノウルフ……いや、フェンリルを見た。


『…………』

「…………あの犬」


 生まれたばかりなのか、元気がない。

 ハイセがジッと見ると、フェンリルはハイセに首を向けた気がした。


「二百!!」「二百十!!」「二百三十!!」


 貴族たちの入札が始まる。

 レイノルドは、最高入札額のプラス十くらいの値段で引っ張る。

 だが、金額は釣り上がるばかりで、なかなか決まらない。


「へへ、理想的な展開だぜ」

「ああ。レイノルド、金は気にしなくていいから、競りは任せる」

「おう。へへへ、楽しくなってきたな、ハイセ」

「まぁ、確かに」


 ちなみに───……ハイセの預金額は、白金貨五万枚以上ある。資金が尽きることはない。

 

 ◇◇◇◇◇


 ガイストは一人、気配を完全に殺し、会場に潜入していた。

 完全な隠形。ガイストは、見回りの兵士の背後にぴったりくっつき、呼吸も歩幅も手足の動きも完璧に真似て歩いている。完全に動きを一体化させて歩く隠形歩法『幽影歩』だ。

 ガイストは、兵士がトイレに入ると同時に離脱。跳躍し天井へぶら下がる。

 壁に打ち込まれている燭台を人差し指だけで掴み、ぐるんと回転しシャンデリアの上へ。


「…………(ふぅ)」


 一瞬だけ、呼吸を整える。

 この会場内は広い。オークション開催前は完全に封鎖され、ガイストですら侵入は難しい。オークション開催に合わせ、下部組織が準備のために解放する。

 その時、上層組織からの指令が必ずあるはずなのだ。

 今回は、その指令がどこから送られてきたのか……その『残滓』だけでも回収したい。

 貴族が関わっているのは確定。だが、それがどの国の貴族なのか、誰なのかまではわからない。

 すると、オークション会場から歓声が上がってきた。

 ガイストは聴覚を集中させる。


『えー、落札!! アルビノウルフを落札したのは、若き実業家レイモンドとクルセ!! ああ、もちろん偽名です。さてさて、真っ白なオオカミちゃん、可愛がってくださいねっ!!』


 レイモンド、クルセ。

 オークション会場に入る際、登録した偽名だ。

 二人が、アルビノウルフを落札したようだ。


(順調なようだ……頼むぞ、二人とも)


 ガイストは、ほんの少しだけ緩んだ口元を引き締めた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 他国の貴族がバックにいた場合は場合どうなんだろ?国家間の話って何処かにありましたっけ?このオークションでの奴隷はハイセ達が開放するのかな? [一言] アルビノウルフは順当にいけば資金を…
[良い点] ハイセの仲間は魔獣で構成されそうっすね、チョコラテも追加で! チーム『モノクロ』とか(笑) ワンコかわいい [一言] 白金貨の貨幣価値って金貨100枚?1000枚? 金貨が一万円相当とし…
[一言] 最後、「ハイセ」が「クルセ」になってます。
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