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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第九章 双子の魔族

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ドレナ村のオークション①

「ん? レイノルドは?」


 クラン『セイクリッド』にある、セイクリッド専用の会議室。

 ここで、サーシャたち五人は打ち合わせや重要な会議を行うことが多い。今日は、クランの現状やこれからの方針について話し合う予定だ。

 だが、部屋にレイノルドがいない。

 すると、タイクーンが言う。


「昨夜、用事があるから今日は休むと言っていた。会議のことを伝えたのだが、どうしても外せない用事だとな……全く、クラン以上に大事な用事とはな」

「珍しいよねぇ、レイノルド」

「フン。別にどうでもいいですわ。それよりサーシャ、始めましょ」

「あ、ああ」


 本当に、珍しい。

 サーシャは、レイノルドの席をチラリと見て思った。


「レイノルドがいないと、不思議と寂しいものだな」

「あはは、そだね。レイノルド、いっつも楽しそうだし、明るいモンねぇ」

「騒がしいだけだろう」

「同意、ですわ!!」

「ふふ……それにしても、用事とはなんだろうな」


 サーシャは、もう一度だけレイノルドの席を見て、小さく首を傾げるのだった。


 ◇◇◇◇◇


「っと、こんな感じか」

「……動きにくいなぁ」


 レイノルドとハイセは、ガイストと共に高級洋装店へ。

 そこで、貴族が着るパーティー用の派手な礼服に着替え、ついでに髪もセット。ハイセはパーティー用にと準備された、赤を基調にして黄金のワシの刺繍が入った眼帯を付けた。

 レイノルドは緑、ハイセは赤を基調としている。

 ガイストは、リーゼントヘアを崩され、櫛で丁寧に髪を梳かれるレイノルドを見て言う。


「ほお……レイノルド、様になっているじゃないか」

「そうっスか? あー……堅苦しいのは苦手なんスけどね」

「ハイセも、似合っているぞ」

「……全然嬉しくないですけど」


 派手な装飾の眼帯なんて気持ち悪くて仕方ない。

 着替えを終え、洋装店を出て、店の裏手に止まっているありふれた馬車に乗り込む。

 馬車が走り出すと、ガイストは二人にバッジを渡す。


「参加証だ。これを胸に付けろ」


 バッジを付けると、今度は仮面を渡される。


「基本的に、顔出し御法度だ。会場内で仮面は外すなよ」

「俺としてはありがたいな」

「……顔出し御法度。ってことは、やっぱり」

「ああ」

「……?」


 ハイセが首を傾げると、レイノルドは嫌そうに言う。


「顔出しちゃマズい。つまり……王国貴族も関わってるんだろうさ。オレの勘だが、背後の組織にも貴族が絡んでるのは間違いないぜ」

「……なぜ、そう思う?」


 ガイストが言うと、レイノルドは肩をすくめる。


「勘っスよ。ま……二人になら言ってもいいか。実はオレも元貴族で。北西にある小国、ゼルゲル知ってます?」

「ゼルゲル? あそこは、極寒の国フリズドに属した小国だったな」

「そうっス。ハイベルグ王国とは比べものにならない小国で、オレは侯爵位を持つ親父の四男として生まれた。礼儀作法にうるさい親……でもめちゃくちゃ金持ちだった」

「ほう」

「……ま、違法な奴隷売買で儲けてたって、取り潰しされてから知ったんですけどね。オレは兄弟にも両親にも嫌われてたから、十二歳で家を出た……出たってか、勘当ってやつだ。そこでハイベルグ王国で能力を確認して、下積みして、ハイセとサーシャに出会ったんだ」

「……そうだったのか」

「ええ。オレが十五の時に、実家は取り潰しにあって、両親は処刑、兄弟は行方不明だって。ま、クズな兄弟がどこにいようと関係ないけどな」

「…………」

「ガイストさん、そんな顔しないで下さいよ。奴隷オークションの話聞いて、久しぶりに思い出したってだけっス」

「……そうか」


 馬車は荒れ地を走り出したのか、揺れが大きくなった。

 ハイセはカーテンを少しあけ、外を確認する。


「ハイベルグ王国から出ましたけど……どこに向かってるんです?」

「ハイベルグ王国南西にあるドナノ村だ。人口百名ほどの、ありふれた農村……」

「農村?」

「おいおい、農村で奴隷オークションかよ?」

「……というのは、仮の姿だ。そこに住む住人は全員が奴隷。村に偽装したオークション会場だ」


 これには、ハイセもレイノルドも驚いた。


「ワシもつい最近知った。ドナノ村には何度か足を運んだこともある。畑を耕し、苗を育て、子供たちが遊び、牧場で牛や羊が鳴く農村……だが、あれは全てまやかし。そういう風に過ごせ(・・・・・・・・・)と、奴隷に命じているんだ。村の奥には岩石地帯があり、そこに巧妙に隠されたオークション会場がある……だが、それは数あるオークション会場の一つにすぎん」

「「…………」」

「ハイセ、レイノルド。何度も言うが……あそこは潰す。その前に、ワシが潜入して『上』に繋がる手掛かりを少しでも見つける。オークションを長引かせろ」

「……わかりました」

「了解っス。おいハイセ、久しぶりに一緒に戦えそうだな」

「戦う、の意味が違うけどな」


 違いねぇ、とレイノルドは笑った。


 ◇◇◇◇◇


 それから馬車は進み、農村に到着した。

 馬車が農村前で止まると、守衛が槍を向けてくる。


「おいおい、こんな村に何か用か?」

「ああ、馬車の調子が悪くてな……馬車を修理したいから、休ませてくれ」

「……『うちに宿はないぜ』」

「『宿はいらない。すぐに帰る』」

「……いいぜ、通りな」


 馬車が走り出した。

 村の中へ入ると、ハイセが言う。


「今のやり取り、何だったんですか?」

「合言葉だ。いちおう、普通の村に偽装しているからな。こんな感じで合言葉を言わないと、オークション会場までは入れない。ちなみに、普通の旅人も村に来るぞ。その場合は、ちゃんとした宿に案内されるがな」

「へー……ところでガイストさん、御者って誰なんです?」

「ワシの知り合いだ。安心しろ」


 馬車は、村の奥へ進んで行く。

 ハイセとレイノルドは仮面を付ける。森のような場所を抜け、岩石地帯に入ると……ガイストは言う。


「二人とも、最後に確認だ。お前たちがすべきことは?」

「「オークションに参加、競りを長引かせる」」

「よし。ワシは会場に潜入して、情報をあつめる。帰りもこの馬車を使うから覚えておけよ」


 そう言い、馬車の床を開く。

 するりと身体を滑り込ませ、床を閉めた。

 同時に馬車が止まる。ドアが開かれると、着飾ったボーイが一礼し、手を差し出してきた。

 最初に降りたのはハイセ、そしてレイノルド。


「…………おぉ」

「へー、デカいな」


 そこにあったのは、立派な『宮殿』のような建物だ。

 どうやら、洞窟内に建てたらしい。壁には壁画が描かれ、噴水やベンチもある。

 ハイセたちの乗って来た馬車は、馬車専用の駐車場へ。そこには質素な馬車が何台も並んであり、周辺には着飾ったボーイが何人もいた。

 レイノルドは気付く。


「……気付いたか?」

「……ああ。ここにいるボーイ、かなりの強さだ」

「全員がA級以上、能力持ちなのは間違いねぇな」


 ハイセとレイノルドは会場へ向かって歩き出す。

 会場へ向かっているのは、全員が着飾り、仮面をつけた男女だ。


「歩き方でわかる。ありゃ貴族教育を受けてるな……客は貴族がほとんどってところだ」


 馬車は百台以上留まっているいる。会場へ向かう貴族たちは全員、楽しそうに笑っていた。


「笑ってるのか……」

「ハイセ、笑っとけ。こういう場では嘘でも笑わねーと、怪しまれるぜ」

「ん……やってみる」

「ああ。ははっ、奴隷オークションとか胸糞悪いぜ。でもまぁ、ここも今日で終わりだけどな」

「ああ。レイノルド……頼りにしてる」

「おう。任せておけ」


 ついに始まる奴隷オークション。

 ハイセとレイノルドは、友人同士のように他愛ない話をしながら会場に向かった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] A級以上の能力持ちがそんなに居る組織なら運営していくのに複数の上位貴族もしくは王族が協力者として居ないと厳しいんじゃないかと。村を偽造してるくらいだし。 レイノルドが元貴族って設定増え…
[一言] 反対色の二人で競るのかな?資産的に落とせるのは誰か決まってるけど(笑)
[一言] うーん、A級以上の猛者がゴロゴロいるのかぁ、そんな人材惜しげもなく投入してくるとか下手したら王族すら関わってそう
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