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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第九章 双子の魔族

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レイノルドにお願い

 レイノルドがクランに戻ると、だいぶ長湯をしたのか、どこか火照った顔をしたサーシャが、濡らしたタオルで顔を冷やしながら廊下のソファで休んでいた。

 サーシャは、ホクホクした顔をしながら言う。


「おお、おかえりレイノルド」

「おう。お前、顔真っ赤だぞ……どんだけ長湯してたんだ?」

「気持ちよくてついな……」

「そうかい」


 と、サーシャを見ると……薄着とはいえないが、かなりラフな格好だ。

 少し濡れた髪、薄手のシャツ、下はハーフパンツで、サンダルだけ。綺麗な太腿から足にかけて素肌が見え、大きな胸が呼吸のたびに上下している。

 レイノルドはあまり見ないようにしていると、サーシャが言う。


「ところで、ハイセは何の用事だった?」

「あー……」


 個人的な依頼の話だ。

 奴隷オークションを潰す手伝い。だが、守秘義務がある以上言えない。こればかりはサーシャが相手でも、レイノルドは秘密を守らなければならない。

 

「あー、以前借りた飲み代返せって言われてな。すっかり忘れてたから、色付けて返したんだよ。いい飯屋見つけて、そこで奢ってやった」

「……そう、なのか?」

「ああ。あいつとはいろいろあるけどな、一緒にメシくらい食うさ」

「……」


 サーシャは疑っているのか、首を傾げる。

 レイノルドはボロが出ないうちに、「じゃ、寝るわ」と言って自室へ。

 部屋に戻るなりため息を吐いた。


「あー、嘘は嫌だぜ……ったく」


 ◇◇◇◇◇◇


 宿に戻ったハイセは、カウンター席で新聞を読む宿屋の主人をチラッと見た。


「ゴホッ、ゴホッ……ふぅ」

「……体調、悪いのか?」

「……大したことはない」


 主人は咳ばらいをして、湯呑の茶を飲む。

 匂いから薬茶だとわかった。どうやら主人は体調を崩しているらしい。

 ハイセは、主人のいるカウンター席へ。


「……本当に大丈夫なのか?」

「くどい」


 主人は取り合うつもりがないのか、新聞を見たままハイセに眼もくれない。

 ハイセは思った。

 この宿は古くボロい。だが、掃除は行き届いているし、薄汚れてはいない。

 部屋数も少ないが、一人で管理するのは大変だろう。

 それに、最近の主人は、ハイセがどんなに遅くなっても受付に座っている。

 宿屋が生き甲斐なのはわかった。でも、ベッドメイクから宿全体の掃除、買い出し、料理など、一人でこなすのは大変だろう。


「……あ、そうだ」


 ハイセは、アイテムボックスから薬瓶を数本出す。


「これ、知り合いのエルフが作った栄養剤だ。飲むと元気になるから飲め」

「いらん。エルフの薬だと? そんなモンに払う金はない」

「いや、金って……」


 カウンター下に、ハイセが今まで支払った金貨が大瓶の中に大量にある。

 必要最低限の金だけしか使っていない。ハイセはため息を吐いた。


「じゃ、この薬瓶五本で来月分の支払いにする。それならいいだろ」

「…………」

「一日一本、好きな時に飲めよ」

「…………フン」


 そう言うと、主人は薬瓶をカウンター内側のテーブルに置いた。

 もう話すことはないと態度で表しているのか、店主はもう何も言わない。

 ハイセも用が済んだのか、二階にある自室へ。

 部屋に入るなり、ガンベルトを外し、コートを脱ぎ、ブーツを脱ぐ。

 最近、特注で作ってもらったガンベルト。腰に二丁の自動拳銃(ハンドガン)をホルスターに納め、さらにコートの背腰部分には回転式拳銃(リボルバー)を収めている。ガイストに「素手だと侮られる場合がある」とのアドバイスを受け、特注で作らせたものだ。意外にも役立つし、誰にも言えないが《カッコいい》と思っていた。


「はぁ~……」


 ベッドに寝転がり気付く。

 マットレスが新しくなり、シーツや毛布も新しくなっていた。

 主人は、こういうことを言わない。気遣いなのか、照れなのか。

 ハイセは苦笑し、店主がちゃんとプレセアお手製の薬を飲んだかどうか、少しだけ気にするのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 宿で朝食を食べながら、ハイセは新聞を読んでいた。

 そこには、『クラン「セイクリッド」所属のレイノルド。『絶対防御(イージス)』の二つ名でのS級冒険者認定』とあった。

 グレイブヤードに行く以前、レイノルドのS級認定の話があったなと、ハイセは紅茶を飲みつつ思っていた。


「……うーん、レイノルドに依頼したけど、タイミング悪かったかな」


 ハイセは新聞を畳み、紅茶を飲み干し立ち上がる。

 そのまま、受付カウンターに座る主人に言った。


「晩飯、宿で食うからよろしく」

「はいよ」


 チラッとカウンター席内側のテーブルを見ると、空になった薬瓶が一本、転がっているのが見えた。

 ハイセはそれだけ見て、無言で宿を出た。

 向かうのは冒険者ギルド。すると、途中でプレセアが合流する。


「おはよ、ハイセ」

「ああ」

「ね、今日はどうするの?」

「お前に関係ないし、言うつもりはない」

「ふぅん。私は薬草採取だけどね」

「……お前、薬草採取好きだな」

「好きというか、指名依頼なの。それに採取するのが難しい薬草ばかりだから」

「なるほどな」

「今回、ちょっと危険地帯に行くから、ヒジリに護衛をお願いしたわ」

「ふーん」

「で、あなたは?」

「…………ガイストさんのところ」

「ふぅん」


 それだけ言い、ハイセとプレセアは無言でギルドへ。

 ギルドに到着すると、ヒジリがプレセアを出迎えた。


「遅い!! ほら、さっさと行くわよ!! あ、ハイセおはよ」

「順序おかしいぞ……」

「じゃ、受付に行くから。ヒジリ、用意はできてるの?」

「あったりまえ!! ほらほら、早く速く!! 危険地帯っ!!」

「はいはい」


 プレセアは受付に依頼を受理したことを話し、ヒジリと出て行った。

 ハイセは、ミイナに「ガイストさんの部屋に行く」と言い、二階にあるギルマス部屋へ。

 ドアをノックして部屋に入ると、すでにレイノルドがいた。


「おはようございます。ガイストさん……と、レイノルド」

「おう、ハイセ」

「レイノルド……早いな」

「ふふ、五分ほど前にレイノルドは来たぞ。さ、座れハイセ」


 ソファに座ると、ガイストは部屋の窓を閉め、入口のドアに鍵をかけた。

 そして、ハイセとレイノルドの前に座り、机の下から数枚の羊皮紙、小箱を出す。


「では、『奴隷オークション』についての説明をする」


 ◇◇◇◇◇◇


 奴隷オークション。

 その名の通り、奴隷を競りで売買する違法行為だ。

 主催者、並びに組織は不明。幾重にも仲介を重ねた下請けの組織が運営をしており、今回はこのオークションに『参加者』として潜入する。

 ガイストは、小箱を開ける。中にはバッジが二つに、口元だけ露出した仮面が二つあった。


「これは参加者の証。このバッジを付けていれば参加者になれる。顔を隠すのはオークションのルールだ」

「え? あの……二つしかありませんけど」

「お前と、レイノルド用だ。ワシは潜入し、下部組織に関する情報を集める。幾重にも仲介を重ねているようだが、オークションの開催をしたのは主催の組織……どんなに小さくても痕跡は残るはずだ」

「じゃ、オレとハイセがオークションに参加して、ガイストさんが探る……あの~、それだったら、別に参加しなくてもいいんじゃ?」


 レイノルドの意見は最もだ。

 すると、ガイストはハイセに言う。


「お前たちは、競りを長引かせてほしい。オークションを長引かせる……わかるな?」

「ああ……つまり、とにかくふっかけろ、ってことか」

「ああ。実は、オークションを潰す手立ては整っている。今回の目的は情報集めで、全ての情報を集めたらオークションを潰す手はずになっている。開始早々にオークション潰しを始めれば、組織の構成員が上へ繋がる書類などまずは燃やすだろうからな。確実に情報を集めるために、まずは潜入任務というわけだ」

「「なるほど……」」

「それとハイセ。お前に頼みたいことがある」

「はい」

「お前……総資産、いくらある?」

「え? いやー、数えたことないですね」

「ふむ……確認してもいいか?」

「別にいいですけど。はい」


 ハイセは、冒険者カードを出す。

 ガイストは、机の下から箱型の大型魔道具を出しテーブルへ。

 ハイセのカードを箱の上に置いて操作するが……すぐに首を振った。


「……これでも測定できないか。お前、どれだけ貯め込んでいるんだ……?」

「さぁ? だいぶ稼いではいますけど」

「……この魔道具はな、カードに入金された金額を調べるため、銀行から借りて来た専用の魔道具だ。この大型でも計れないほど、お前の資産はあるってことだ」

「はあ」

「禁忌六迷宮の踏破に、討伐レートが高い魔獣をひたすら狩りまくっていたからな……個人資産では間違いなく、世界トップレベル。大型クランを数十年以上維持できる資産があるぞ」

「……で、それがどうかするんですか?」

「いや、オークションに参加するにあたって、個人資産の確認をされる場合がある。その場合に備えての確認だったが……多い分には問題ないだろう」

「まあ、安心ならよかった」

「うむ……よし、ハイセにレイノルド。オークション参加用の礼服を購入してこい。オークション会場への出発は明日だ」

「あの、会場はどこです?」

「ハイベルク王国内にある、秘密の場所だ。情報漏洩の可能性を考え、明日ワシが直接案内をしよう……では、解散だ」


 こうして、ハイセたちはオークション会場へ潜入することになった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点]  この世界の財政管理有能過ぎだろw。  全国家が共通紙幣且つ、大陸くるみの財政管理してないとハイセの居る国は経済周ってねぇ。
[一言] S級に昇格したタイミングで奴隷オークションに参加してました、は確かにタイミング悪いなぁ レイノルドは気にしないだろうけど、事情を知らないクランの有象無象連中から睨まれそう
[気になる点] 主催者への身バレ対策はどうするのかな? 軍資金が充分ありさえすれば覆面して正体隠してても問題ないとか?
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