破滅のグレイブヤード⑥
翌日。
二手に分かれ、ハイセたちは『王家の墓地』に向かって歩き出す。
まず、ハイセ、ヒジリ、タイクーン、ロビン、レイノルド。こちらは地図を見ながら、ただまっすぐ進む……見通しのいい平原を一直線に進むと、やはり目立つ。
現れたのは、前傾姿勢で、二足歩行の巨大なトカゲ。
ギガレアレックス。討伐レートSSの魔獣だ。
「やはり、出てくるな。ハイセ、強化するか?」
「俺はいらない。俺の強さは武器に依存するから、強化しても意味がない」
「アタシもいらない。こういうのは自分の力で殴り合ってナンボっしょ!!」
「あ、あたしは援護するね。レイノルド……守ってね?」
「おう。つーか、討伐レートSSとか……王国騎士団が討伐に出るレベルだぞ」
ギガレアレックスは一体ではない。
現れたのは群れだ。少なく見ても二十以上はいる。
ハイセは両手に『自動拳銃』を持ち走り出した。
「あ!! ズルい!!」
何がズルいのか、レイノルドたちには理解できない。
レイノルドは大盾を持ち「オレの前に出るなよ!!」と叫び、タイクーンはロビンとレイノルドを強化、ロビンは身を隠す場所を探すが、木の一本も生えていない平原なので諦めレイノルドの傍で矢を番える。
「行くぞ」
ハイセは銃を連射。
ギガレアレックスの頭部に全弾命中し血が噴き出し倒れた。
そのままマガジンを一気に抜いて交互に装填し連射。再びリロードして連射を繰り返す。
『ゴァァァァァァァッ!!』
ギガレアレックスがハイセに襲い掛かるが、ヒジリが跳躍しドロップキックを側頭部に食らわせると、バランスを崩してそのまま横倒れになる。
ハイセは銃弾を頭部にブチ込むと、ギガレアレックスの頭部から血が噴き出した。
マガジンを排出しリロード。一連の流れがスムーズだ。
「さぁさぁ、アタシが相手!!」
「ハイセ、ゴブリンの群れだ!!」
タイクーンが叫ぶと、オオカミに乗ったゴブリンの群れが襲い掛かって来た。
ゴブリンライダー。討伐レートAの魔獣。
ハイセは銃を腰のホルスターに納め、自動小銃を手に持つ。
そしてゴブリンライダーに向け連射。あっという間にオオカミとゴブリンライダーは肉塊へ。
「わわっ、ハイセそっちにでっかいの!!」
『ガァァァァァァァ!!』
コングトロール。討伐レートSの、全身体毛で覆われたオークが六体、ハイセの方に向かってきた。
ヒジリは、群れで襲ってきたギガレアレックス相手に戦っている。
ハイセは自動小銃を投げ捨て、グレネードランチャーを出そうとして……ニヤリと笑った。
「せっかくだ、練習の成果を見せてやるか」
横一列に向かって来るコングトロールに対し、ハイセは右手に『回転式拳銃』を一丁生み出し、クルクル回転させる。
そして一呼吸───……一瞬で六発の弾丸を発射し、コングトロールの頭を連続で撃ちぬいた。
「っと……ははっ、成功した」
ファニングショット。
銃を抜くときに既に引き金を引き、同時にもう片方の手のひらで撃鉄を上げて滑らす事で瞬時に発射できる連射方法……ノブナガの日記に書かれていた撃ち方だ。
ノブナガの日記には、『エイガで見た傭兵集団のリーダーが得意としていた撃ち方』と書いてあった。エイガが何かは知らないハイセだが、この撃ち方はなかなか面白かった。
しかし、魔獣の群れは途切れる様子もなく次々と現れ、襲いかかってくる。 ハイセはリボルバー式拳銃を投げ捨て、グレネードランチャーを片手に言う。
「さぁ、まだまだ遊ぼうか」
◇◇◇◇◇
「……始まったようだな」
サーシャたちは、大きく迂回しながら墓地を目指していた。
ハイセたちが派手に暴れているせいか、サーシャたちの迂回路である森の魔獣たちも騒がしい。だが、今はサーシャたちの姿が消えているので、騒ごうが関係ない。
むしろ、注意が外へ向くのでちょうどよかった。
「フフフ、ハイセたちの方へお行きなさいな……こっちは私とサーシャだけでいい♪」
「私もいるけど」
「あ、そうでしたわね」
「……私が少し念じるだけで、あなたの姿が丸見えになるってこと、忘れないでね?」
「わ、わ、忘れてませんわ!! というかおやめなさい!!」
「二人とも静かにしろ……」
一時間かけ、森を抜けた。
ここから先は平原が続いている。ハイセたちが暴れている場所は見えないが、サーシャたちは前に進んで歩く。
道中、魔獣の群れがどこかへ向かうのとすれ違ったり、大きな亀が横切ったり、上空を怪鳥の群れが飛んで行くのが見えた。向かうのは後方……ハイセたちの方だろう。
「大丈夫かしら」
プレセアが言うと、サーシャは言う。
「問題ない。ハイセたちは強い」
「そうね。ふふ、真っ先にハイセの名前を出すあたり、信頼しているのね」
「…………」
「さ、サーシャぁ……あんな奴のことなんてどうでもいいのにぃ」
それからさらに数時間歩くと、見えてきた。
破滅のグレイブヤード最奥にある、『王家の墓地』だ。
「見えたぞ……あれが」
「王家の墓地、ですの?」
「……変な形ね」
王家の墓地は、『長い一本の塔』だった。
墓地というには不格好で、王家の墓にしては飾り気が全くない。
三人は到着し、塔の周りを一周する。
「後ろは崖になっているのか……」
「僅かですけど、水音が聞こえますわ。この下、川になっているみたいですわね」
「見て、看板……『王家の墓地』」
「……ふと思ったが、聖十字アドラメルク神国は、王政ではなかったはず。だがここは王家の墓地……どういうことだ?」
「昔は王様がいたんでしょ」
サーシャの疑問に、プレセアは適当に答えた。
塔の周りをざっと確認したが、背後が崖になっており、円柱の塔は入口が一つ、正面の石扉しかなかった。ピアソラは「偽物……?」と疑っているようだ。
すると、プレセアが言う。
「じゃ、入る?」
「……そうだな。見たところ、この円柱の塔だけのようだ。ハイセたちが到着する前に、探索はできるだろう」
そう言い、サーシャが石扉を開けた。
扉を開けると、螺旋階段があった。
しかも、上階と地下へ続く階段だ。扉のある一回部分には何もない。
ピアソラは言う。
「サーシャ、セオリーでは上階からですけど……」
「うむ。セオリー通り行こう。外から見た感じ、すぐに頂上へ行けるな」
三人は、階段を上って頂上へ。
頂上には何もなかった。ただ、周囲が一望できるだけの高台になっているだけ。
確認したが、何もない。
「下が墓地みたいね」
「ああ……今度こそ、行こう」
「ふふ、冒険みたいですわね」
三人は、地下へ向かって階段を降り始めた。





