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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第八章 破滅のグレイブヤード

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破滅のグレイブヤード①

 翌日。

 チーム『セイクリッド』、ハイセ、ヒジリ、プレセアの八人は、王城の裏にある北門……『破滅のグレイブヤード』入口へ向かった。

 道中、グレイブヤードへ行く人は意外にも多かった。


「墓地だからな。それに、この国は『月命日』と言うのがある」

「確か……毎月訪れる、命日と同じ日のことだな」


 タイクーンの言葉にハイセが返す。他の誰も知らないが、ハイセは知っていた。

 この世界は三百六十日周期だ。一月が三十日で、合計十二月。これが一年だ。

 月命日とは、一年で十二回ある命日と同じ日に花を添える日。

 毎日誰かの墓に、花が添えられる日でもある。


「墓場の数は、確か……二万だったかな」

「よく知っているな、ハイセ」

「宿にあった本で見たんだ」

「何? 宿屋に本が?」

「ああ。一階のカフェスペースに、小さいけど本棚があった。飲み物を注文すると、自由に見ていいらしい」

「それは盲点だった。よし、後で行くか」

「……仲良しね」


 ハイセとタイクーンが盛り上がっていると、プレセアが言う。

 互いに本の話は嫌いじゃなかった。

 そして、一般墓地を通り過ぎ、巨大十字架の前へ。

 タイクーンが全員に言う。


「では、ペアに分かれてアプローチを開始してくれ。地図を見ながら進み、予定の距離を進むこと。順当に進めば四日後には最奥で合流できるはずだ」


 全員が頷いた。

 そして、行動開始。


「よし、頼んだぜプレセア」

「ええ。今更だけど、透明化は本来ならお金取るの。今回はサービスね」

「え、マジ?」


 レイノルドとプレセアの姿が消えた。

 そして、ヒジリが指をパキパキ鳴らしながら言う。


「燃えてきたわ。ロビン、援護頼むわよ」

「いいけど……戦いながら進む気満々っぽいよね」

「っしゃ!! 行くわよ!!」


 ヒジリが十字架の横を通り、『破滅のグレイブヤード』へ飛び込んで行く。

 その様子を見て、サーシャはため息を吐いた。


「やれやれ……タイクーン、こちらも行くか」

「ああ。ハイセ、ピアソラ、くれぐれも喧嘩するなよ」


 そう言い、サーシャたちも別方向へ。

 残されたハイセとピアソラは、互いに睨みあう。


「足引っ張ったら置いて行く。どうせお前、俺が怪我しても治すつもりなさそうだしな」

「あら、よくご存じで」

「ああ、でも俺は優しいからな。お前が魔獣に食われて死にかけたら、トドメは刺してやるよ」


 そう言い、ハイセは『自動拳銃92』を手にしてピアソラへ向けた。

 ピアソラは舌打ち。だが、依頼は依頼と割り切ったのか、地図を広げる。


「さっさと行きますわよ。少しでもあなたと一緒の時間を減らしたいので」


 そう言い、ピアソラは歩きだす。

 ハイセは無言で、その数歩後ろに従って歩きだした。


 ◇◇◇◇◇

 

「ふぅ……」


 破滅のグレイブヤード。

 サーシャとタイクーンが侵入したポイントは雑木林。

 現在、サーシャは周囲を警戒しながら進んでいる。タイクーンのサポートで『感覚強化(サーチド)』を併用しているので、虫の羽音すら聞こえていた。

 タイクーンが言う。


「気になるか? ハイセとピアソラが」

「……なぜ、そう思う?」

「七度目だ」

「え?」

「雑木林に入って四十分……七度目のため息だ」

「そ、そうなのか?」


 サーシャは驚いた。

 タイクーンは、眼鏡をクイッと上げながら言う。


「正直、不安もあるのは確かだ。ハイセがピアソラを見捨てる可能性は決して低くないし、ハイセが怪我をしてもピアソラが治療しない可能性も低くない」

「だが、お前はあの二人を組ませた」

「……今後のことも踏まえて、今のうちの多少なり関係改善は必要と判断した」

「今後、か」

「ああ。過去の事件を置いても、我々とハイセは和解の道を歩んでいるとみていい……だが、決定的に最悪なのは、ピアソラだ」

「…………」

「サーシャ、気付いているだろう?」

「……ああ」


 ピアソラは、サーシャを本気で愛している。

 同性だが、関係ない。

 だから……サーシャに最も近い、ハイセのことが本気で嫌いだった。

 かつて、チーム『セイクリッド』にいた頃のハイセ。

 役立たずのくせに、サーシャに想いを寄せられている男。

 レイノルドとは違い、戦いもできないお荷物のくせに。


「私は、ピアソラの想いに応えられない。そもそも……その、私がハイセのことを好きとか、その、幼馴染というだけで」


 サーシャは、口をモニョモニョさせ、髪を人差し指に巻いていじっている。

 耳や頬が少し赤く、どうもはっきりしない。

 だが、タイクーンは言う。


「今回、二人が一緒になることで、多少なり仲間意識が芽生えたらとは思う。ああ、安心してくれ。あの二人が恋愛関係に発展する可能性は限りなくゼロだ」

「べ、別に気にしていない!!」

「サーシャ、前から聞きたかったが……きみは恋愛に興味があるのか?」

「はい!?」


 タイクーンは、本気で聞いている。

 首を傾げ、大真面目に。


「最初はハイセのことが好きなのかと思ったが、チームに在籍していた時は厳しい言葉ばかりぶつけていたな。最終的には追放し、罪悪感に苦しめられていたことは知っている。だが……ハイセが頭角を現しS級に昇格した頃から態度が変わったな? 特に最近は、顔を赤らめたり、露骨に意識したり……ああ、プレセアやヒジリが現れ始めてからか? 最初はハイセをチームに戻すために色仕掛けでもするのかと思ったが、きみはそんな器用なことはできないしな「ま、待て!! 待った!!」


 大真面目な顔で、何を言っているんだ。

 サーシャはタイクーンの口を両手で押さえた。そして、タイクーンは「やめろ。この森で剣士が両手を塞ぐというのは自殺行為だぞ」と、照れの一つもなく冷静に言う。

 冷静でクソ真面目な分析に、サーシャは真面目に言う。


「いいか、タイクーン。私はハイセを異性として見て……い、いない、と思う」

「ふむ」

「気になるのは確かだ」

「なるほどな。では、他の男は? レイノルド、クレス王子殿下などもいるだろう」

「……嫌いではない」

「サーシャ、きみは間違いなく美人だ。たまにクランの事務員がサーシャ宛ての見合い写真を持って来るからな。いずれは相手を見つける、そういうことでいいか聞きたい」

「な、なに?」

「見合い相手は貴族が多い。きちんと返事は返しておきたいからな。きみの意志を確認させてくれ」

「…………」


 結婚。

 結婚したら、冒険者は引退だろう。

 クランマスターの地位はそのままだろうが、前線には立てない。

 いずれ、子を作ることも考えなくてはならない。

 生涯独身……それもいい、とは思った。

 だが、それを望まない自分もいる。


「…………わからない」

「わからない、か」

「ああ。今は……」

「わかった」

「……ところでタイクーン。私のことばかりだが、お前はそういうのに興味はないのか?」

「ボクは歴史文学に恋しているから問題ない」


 やりかえしたつもりだったが、タイクーンの大真面目な答えにサーシャは呆れるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 「……今後のことも踏まえて、今のうちの多少なり関係改善は必要と判断した」 「ああ。過去の事件を置いても、我々とハイセは和解の道を歩んでいるとみていい……だが、決定的に最悪なのは、ピアソラだ…
[一言] なんで分散行動してるんだっけ? 組み合わせも色々厳しいよな。 ・戦闘前提組のサーシャTとヒジリTは同行したほうが戦力的にいい。 ・回復薬のピアソラは戦闘前提のPTの方が働ける。 ・盾しか出…
[一言] コナタ正当会長と初期。(• ▽ •;)(んで、シメが雷張ル鯖威張ルと。)
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