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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第七章 聖十字アドラメルク神国とはずれ能力者

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指導おわり

「それでは、本日の訓練はここまでとなります」

「「「「「ありがとうございました!!」」」」」


 訓練が終わり、学生たちが全員、一斉に頭を下げた。

 ハイセたちの冒険者指導は終わった。

 サーシャは微笑み、ガイストは頷き、ヒジリは拳をグッと見せつけ、ハイセは何とも言えない表情だ。

 模擬戦の結果……腕章を取られたのは、ハイセだけだった。

 サーシャの相手をした生徒たちは満足したようで、ガイストの相手をした生徒たちは何故か女子がうっとりし、ヒジリの相手をした生徒たちはズタボロで、ハイセが相手をした冒険者は興奮している。

 学園に戻り、挨拶をして、ハイセたちは宿へ戻った。

 そして、夕食を終え、全員で個室のあるバーへ。


「楽しかったわね!!」


 と、ヒジリが興奮気味に言う。

 そして、ハイセを見てニヤニヤした。


「アンタだけ腕章取られたのねぇ。ふふふ、最強の名前は返上した方がいいんじゃない?」

「…………」


 ハイセは、無言でカクテルを飲む。

 サーシャは話を変えるべく自分から言う。


「楽しかったかどうかはともかく……生徒には、いい学びの場となったようだ」

「ミコ、だったか?」

「ガイストさん……見ていたんですか?」

「ああ。『聖騎士』能力を持った子だろう? あの細腕で大剣は無理だと思っていたが……お前が新しい道を照らしたようだな」

「はい。戦いのあと、ミコがお礼をしに来ました。これからは大剣ではなく槍を、そして騎乗技術を磨くそうです」

「うむ。そうか」

「それと……セイン。あの子は能力に頼らず、『戦術家』となるようです」

「セインって、あのメガネか?」


 ハイセは言うと、サーシャは「ああ」と頷いた。

 戦術家。

 ダンジョン内の情報を元に、攻略の戦術を立てる専門家だ。現れる魔獣、地形、トラップなどから、冒険者の構成や装備、アイテムなどを見繕う重要職。

 大手クランには必ず数名いる。サーシャのクランではタイクーンが『戦術家』を兼ねていた。


「もし、実家を勘当されたら、うちのクランへ来るように伝えておいた。あの子は頭がいい。すぐに戦術家として開花するだろうな」


 サーシャは、少し嬉しそうだ。

 ハイセはそんなサーシャを見ながら、グラスを傾ける。

 アドアドでの臨時講師依頼はこうして終わり、話題は自然と『破滅のグレイブヤード』へ。

 ガイストは、ハイセたちに言う。


「そうだ……破滅のグレイブヤードへ入る許可が下りた」

「「!!」」

「お、ついに来たのね。ふふん、どんな魔獣がいるのかな」


 ヒジリが好戦的な眼つきになる。

 ガイストは続ける。


「実は今日、ギルド経由でワシの元へ話が来た。国王陛下が話を付けたようだ」


 ガイストは、ブランデーを一気に飲み干す。酒を飲んでいても表情は鋭い。


「明日、『セイファート騎士団』へ向かい、クロスファルドの元へ行く」

「け、剣聖様の元へ?」

「ああ。『破滅のグレイブヤード』へ入る鍵は、セイファート騎士団が管理している」

「あれ、サーシャさん、セイファート騎士団に挨拶に行ったんじゃ」

「……行ったが、会えなかった。緊急の用事が入ったとかでな」


 サーシャはがっくりする。

 ガイストは「ははは」と笑い、さらに続けた。


「プレセア、お前はどうする? 学園補佐の依頼は終えたから、このまま帰っても構わんが」

「当然、行くわ」

「わかった。では、『破滅のグレイブヤード』へ向かうのは、サーシャたちチーム『セイクリッド』に、ハイセ、プレセア、ヒジリだ」

「ガイストのおっさん、アンタは?」

「ふ、若い者に付いていく体力はない。ワシはアドアドで事後処理をする。ミイナはその手伝いだ」

「わっかりました!!」

「ガイストさん。明日、ということは?」

「ああ。今朝、レイノルドたちは町に到着した。補給を終えて、もう休んでいるだろう」

「そうですか……よし」


 サーシャはキリッと表情を引き締める……が、ガイストに「会うのは明日にしろ」と言われた。

 ハイセはグラスを置き、金貨を一枚テーブルに置いて立ち上がる。


「ごちそうさまでした。俺、そろそろ寝るんで失礼します」


 そして、そのまま店を出て宿へ。

 ガイストは金貨をつまみ、苦笑する。


「やれやれ……ワシが奢るつもりだったんだがな」

「……ハイセらしいですよ」

「やった!! ね、ね、金貨あるならまだ頼んでいいよねっ!!」

「さっすがハイセさんですっ!!」

「……あなたたち、少しは遠慮しなさいよ」


 ヒジリとミイナが追加注文するため、メニュー表を開いた。


 ◇◇◇◇◇


 夜。ハイセは一人、宿屋の部屋で古文書を読んでいると、ドアがノックされた。

 誰かと思いドアを開けると、そこにいたのはサーシャ。


「夜遅くに悪いな」

「いいけど……」


 サーシャは寝間着だ。

 バーから戻り、シャワーを浴びたのだろう……甘い香りがする。

 髪も下ろし、装飾品など付けていない。鎧も剣もないサーシャがいた。

 寝間着が薄手で、胸元が少しゆるいせいか、胸の谷間が見えている。

 ハイセはそれを見ないようにしながら言う。


「何か用か?」

「ああ。明日のことで少し……部屋、いいか?」

「……どうぞ」


 サーシャを部屋に招き入れた。

 ソファを勧め、アイテムボックスからポットを取り出す。

 いつかの野営で淹れた薬草茶だ。火にかけて沸騰させ、そのままアイテムボックスにしまったので、今も熱々のまま。

 アイテムボックスからカップを出し、サーシャへ注ぐ。


「ほら。少し酒の匂いするぞ……酒の後に飲むといい薬草茶だ」

「ありがとう───……ん、おいしい」


 ハイセも薬草茶を飲む。

 ふわっとした、やや甘さがあるスッとした味わいだ。

 ハイセが行きつけの酒場の店主、ヘルミネのおススメの薬草茶だ。


「で、用事は?」

「ああ。明日、レイノルドたちと合流するが……」

「……ピアソラとは揉めない。わかってるよ」

「ああ。と……グレイブヤード攻略に関して、タイクーンがいろいろ方針を決めていると思う。当然、お前にはお前の意見があると思うが……」

「サーシャ、一つはっきりさせてくれ」


 ハイセは、サーシャの眼を真っ直ぐ見て言う。


「俺の立場は『同行者』だ。お前たちの邪魔はしないし、お前たちも俺の邪魔をするな。一つ、確実なのは……命令や作戦は『仲間』でする物だ。俺は、お前たちの仲間じゃない。俺を組み込んだ上での作戦があるなら、考え直せ」

「……お前なら、そういうと思ったよ」

「ああ、わかってるならいい。お前たちとは、行く方向が同じなだけ……」

「……ああ」


 サーシャは薬草茶を飲み干す。


「明日、レイノルドたちと合流して、セイファート騎士団に行く。その後で打ち合わせをしよう」

「俺より、ヒジリやプレセアの方を何とかしたほうがいい気もするけどな」

「ヒジリはお前と同じ『好きにやらせてもらう』と。プレセアは私たちの作戦に協力してもいいそうだ」

「そうか」

「……話はそれだけだ。悪かったな」

「気にするな」


 サーシャは立ち上がり、ドアの前で止まった。


「…………ハイセ」

「ん?」

「その、おやすみ」

「ああ、おやすみ」


 サーシャは微笑み、部屋を出た。

 ハイセが「おやすみ」と返してくれたことを、喜んでいるようだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
Haise should have went earlier and clear the dungeon and after wards says what took you so long.
孤高を気どるコミュ障陰キャボッチくん見てるとイライラすんなぁ…… 戦闘がまだ見れるものだから見てる感あるわ
[良い点] あくまで「同行者」。パーティじゃない……まぁ、そうでしょうね。パーティなら連携とかもあるでしょうし、いきなり三名組み込むのは無理でしょう。ましてやダンジョン内では致命的になりかねませんし、…
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