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63 混乱と求婚の行方

 さて、時間は現在。

 過去の回想は終了ですわ。


 あれから私、今世生まれてきて初めてと言うくらい、悩んで悩んで悩みまくりましたわ。


 前世で恋愛をしなかったのかと言われたら、答えは「非」ですが、今世の私は恋愛感情が欠落しているのでは?と言うくらい異性に興味がありませんでした。


 そんな私ですから、幼少期に婚約者ができた時にも、そんなものかと、当たり前のように運命を受け入れていました。

 それが、先日崩壊。

 婚約破棄も彼方有責で解決いたしましたし、現在はフリーになりました。


 あの晩のアシェリーからの求婚。

 王家の事を考えたら、私はソレを受けるのが当たり前なのでしょうけど。


 私の気持ちは……。


 私は、自分の気持ちを信じていいのかしら。


「フィオラ?君の気持ちを教えてくれるかな?そろそろ答えを聞きたくてね」


 そして、今のこの状況ですわ。

 陛下……鬼ですわね。


 答えを聞くにしても、こんな逃げるのが大変な日を選ばれなくても。

 返答は私に委ねるみたいな感じを出しながら、蓋を開けたらコレですもの。


 陛下のこの性格にも困ったものですわ。


 まぁ、あれから悩んで悩んで悩んで…悩んで、答えが出たような気がするのですが、陛下の手のひら感が否めなすぎて……とても嫌な感じですわ。


「陛下、私は」


 この返答、できたら二人の時に、アシェリー本人に直接伝えたかったですわね。

 よりによってこんな場所でだなんて。

 思わずアシェリーに視線を向けると、申し訳なさそうにされてましたわ。


 あ、口の動きだけで「ごめん」と謝られましたわね。


「…………はぁ」


 癪ですが、認めないと…ですわね。


 心臓が痛い。


 知らない…私ですわ。


 女は度胸!


 よし!



「陛下、この度のお申し出ですが………」


 




 私の返答を聞くためか、静まり返る広間。


 ……でしたが、その瞬間。




 ーグイッ!ー




「……って、はぁ⁉︎」



 何何何!なんですの!


 急に後ろから体を引かれ、大勢が崩れました。

 人がせっかく腹を括りましたのに、私、後ろから急に抱きしめられましたわ。




「フィオラ!僕を見捨てないでくれ!」




 ……この声。


 まさかユリウス様ですの!

 何故この場にいますの!


 夜会の後、ユリウス様は当主であるお祖父様の命令で、謹慎を言い渡され、屋敷から出れないはずですのに。


 この場の空気にのまれていたせいで、気配察知を怠っていましたわ。

 なんたる不覚。

 しかも、力強く抱きしめてくるせいで、私、鳥肌がすごいですわ!


 (気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!)


「何故…ユリウス様が」

「僕が悪かった!だから婚約破棄を取り消してくれ!」


 今更?今更ですの!

 しかも陛下の前で。他国の方々もいらっしゃるのに、やはりこの方大馬鹿ですわ。


「わ、私はユリウス様と婚約はもういたしません!」

「何故だ!僕達は幼い頃から一緒だったじゃないか!」


 だーかーらー!

 その婚約をダメにしたの貴方でしょうが!


「僕はこのままだと家から勘当だ!お願いだ、見捨てないでくれ!好きだ!愛してる!」


 今更すぎですわ。

 ご自分が蒔いた種でしょうに!

 自分勝手にも程がありますわ!


「……っ!離してください」


 あ、なんだか眩暈がしてきましたわ。

 好きでもない男性から強引に抱きつかれ、しかも告白されるだなんて。


 ……これダメかも。


 嫌悪の塊に抱きつかれ、恐怖でしかありませんわ。

 足に力がはいらず、立っているのもやっとです。


「………ふっ」




 あれ?


 ……頬に。


 私………泣いて。


 パタパタと床に落ちる水滴。


 もう、無理。




「あ、アシェ……助け」




 その瞬間。



「ぐふぁ!」



 え?



 フワリと抱き上げられる体。


「アシェ……リー……?」


 驚いて、顔を上げると、そこには般若のごとく怒りを露わにしたアシェリーが。


「フィオ、介入するのが遅くてごめん」

「いいえ、ありがとう……ございます」


 これ……メチャクチャお怒りですわね。

 でも、私を抱き上げる腕はとても優しい。


 ……一気に気が抜けましたわ。


 安堵した私は、そのままアシェリーの胸に頭を寄り掛け、力を抜きました。


「フィオ、ごめん」

「え?」

「文句は後で「父上」に言ってくれ。いくらでも言っていいから」


 意味が…分からないのですけど。

 それより、この状況は。


「ふっ、フィオラ……っぐ!」

「………ユリウス、その汚い口を閉じろ」


 私に対する態度とは打って変わり、氷の様な瞳でユリウス様を見下ろすアシェリー。

 よく見たら、ユリウス様、アシェリーに足を乗せられた状態で床と仲良くなってますわね。

 まぁ、同情の余地はないですけど。


 ユリウス様……ここまで愚かな方だったなんて。


「フィオ……やはり我慢できそうにない」


 それより、今はアシェですわ。

 ユリウス様を踏みつけたままですが、アシェリーは真剣なお顔を私に向けられました。


「アシェ?」


 真っ直ぐに私を見る瞳に、胸がギュっとなります。


「フィオ、やはり私は君を誰にも渡したくない。私は私意外の男が君の隣に立つのを我慢できそうにない!」


 もう、私頑張るつもりでしたのに。


「愛してるんだ、だから………私を選んでほしい!」


 先に全部持っていくなんてズルいですわ。

 先程までの私の努力を返してくださいませ。


「もぅ、私の決心…返してくださいな」


 それにしても、格好がつきませんわね。

 真剣に告白されるアシェリーに、踏みつけられたままのユリウス様。


 先程の「父上」と言う言葉から、この寸劇を仕組んだのは陛下ですわね。

 きっと、ユリウス様がこの会場に入れるように手を回したに違いありませんわ。

 ……本当、困った方。


「……ふふっ」


 思わず笑みがでてしまいましたわ。


「フィオ?」


 不安そうに私を見るアシェリー。

 その頬に手を添え、自然と笑みが溢れる私。


 もう、認めるしかないですわね。


「………アシェリー、私も貴方が好き」


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