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61 複雑なお話しが続きますが…

 陛下のお言葉に、各々表情は様々ですわ。


 それにしても…ウルド様の表情、まるで感情が抜け落ちたようですわね。


 マーシャル子爵との親子関係がどの様なものか、お母様からお聞きした時は嫌悪感が凄かったですが、こうして直接拝見するとよく分かりますわね。


 そこまで、ウルド様はマーシャル子爵を憎んでおられるのね。







 ガタリと椅子を鳴らし立ち上がるマーシャル子爵。

 そして、少し落ち着きがないものの、真っ直ぐに陛下を見据え口を開かれました。


「確かに私は薬師として治験を行っていました。だか、これは医療のためです!そのために協力者を仰ぎはしましたが、買った覚えなどありませんぞ!」


 そして、それに同調するように、残りのお二方が挙手されましたわ。

 先程陛下が調べはついてるとおっしゃってましたのに…。


「確かに、我が商会はマーシャル子爵に人材は紹介しました。ですが、それはあくまで治験をするために雇い入れた者だけ。他国からも募集したせいで、その様な誤解を招いたのでは?」


「陛下、魔法師団長である私が国を裏切る行為を何故しなくてはならないのですか?それに、何か情報がおかしな事になっておりますが、私がこの二家に力を貸したのは、入国した者の身体検査のみ。呪術や病などに侵された者を見極める手伝いをしたにすぎません」


 各々もっともらしい言い訳ですが。



 本当に舐めてますわね。



 陛下を……そして、我がドロッセル家を。


 王家に寄り添いし家、「知の家」ドロッセル家。

 当主であるお母様を筆頭に、王家の影として動く我が家の諜報力を舐めてもらっては困りますわ。


 陛下がこのお話しを直接ご本人達に聞かせたと言う事は、もう既に裏がきちんと取れているから。

 その仕事をしたのはきっと我が家ですわね。


 私は何も聞かされていませんが、陛下がお手元に持たれてる資料、我が家のみが使う特殊紙ですわ。

 ウチが関わっていると考えて間違いないと思いますの。


 あ、ほら。

 案の定、お三方の発言のせいで、陛下が楽しそうな表情になられましたわ。


「へぇ……君達、目の前の書束を見て、私が何の証拠も無しに発言したと、それでも言うのかい?……私は馬鹿は本当に嫌いなんだよ。ある程度までは許せるけどね、本当の馬鹿は嫌悪感すら覚える……ウルド?」


 笑顔で発言なさる陛下に、部屋の温度が一気に氷点下まで下がりましたわね。


 怖!


 人差し指を上げ、ウルド様を微笑む陛下。

 それを見て、満面の笑みのウルド様。


 もう一度言いますが、怖!


「陛下よりご指名がありましたので、私から説明させて頂きますが、貴方がた……「パチルス・ハーン」と言う隣国の男に記憶はありませんか?」


 ウルド様の言葉に、一瞬考え、直ぐに何か思い出した様に彼のお顔を見たのはカジラエル侯爵でした。


「…パチルス・ハーンは、隣国アルカンからの」


 カジラエル侯爵の一声に、残りの二人がハッとした表情になりました。


「良かった、覚えておられるみたいですね。……簡単にご説明しますが、裏稼業で奴隷商をしているアルカンの男爵から引き渡された「パチルス・ハーン」という男、実は私なんですよ。つい最近の事ですが、忘れていなくて良かったです。私はそこにいる「クソ」のせいで、魔法薬などの耐性が非常に強くてですね?カジラエル侯爵が飲ませてきた記憶操作の薬は全く効かないんですよ。後は……マーシャル家の門をくぐるのは本当に屈辱でした…あの実験室…あの頃と同じ扱いをまた……まぁ、私自身クソのせいで耐性が嫌と言う程ついていましたからね、あの程度どうと言うものでもありませんでしたが……」


 全く、無茶をなさったのね。


 ……と言うか、最近学園にいらしたマーシャル先生は、途中から影武者だったのかしら?

 多分ウチの人間か、陛下直属の影の方ね。全く気づきませんでしたわ。


「まぁ、おかげで屋敷から色々と持ち出す事も出来ましたし、私自身が検体でしたから自身に入れられた薬も抽出できたので、いい証拠になりましたよ。後は………同じ屋敷にいたおかげで、マーシャル子爵自身に色々させて頂く事も出来ましたしね」


 え?


 色々…ですか。


 ウルド様、ものすごい笑顔ですわ。

 マーシャル子爵に「何」をなさったか、考えない方がいいですわね。


「因みに、私、最近「新しい薬」を開発しまして………なので、ねぇ?」


 あ、やっぱり考えない方がいいですわ。


「ウルド!貴様父である私に薬を使ったのか!」

「はっ、何を今更。父親のくせに子供である私で散々薬の実験をしておいて」


 座っていた椅子をガタリと倒し、マーシャル子爵は身を乗り出しウルド様の襟首を掴み引き寄せました。


「子供の分際で、親に逆らうなど!」


 そんなマーシャル子爵に冷めた瞳のウルド様、


「アンタが「親」らしい事をしたことなんかないだろ?」






 その後の事は、皆様の想像通り。

 ウルド様の証言もあり、皆様素直に拘束されて退室となりましたわ。

 まぁ、お一人だけは最後まで騒がれててましたが。




 そして、お話はまだまだ終わりませんでした。



「あとは残りの一つだね」



 三家の人間が退室し、ついでにラングレー家も退室。

 私との婚約の話は後日に改めてとなりましたわ。


 残ったのは我が家のみ。


 王室侍女長が自ら紅茶を入れてくれ、目の前に置かれていきます。

 なんて贅沢。


 それより、あと一つ…ですか。

 絶対私がらみですわよね?


「まず、皆んなお疲れ様。やっと一息つけるな」


 少し肩の力を抜いた陛下。

 プライベートでの陛下に近いですわね。


「まぁ、もう分かってると思うけど、フィオの今後だね。まず、フィオが「ワタリビト」であるのは、既に知ってる。リンファにも……マリーからも聞いたからね」


 はぁ………叔母様からも…ですか。

 もしかしたら、陛下はもうずっと以前からご存じだった可能性がありますわね。


「でね、フィオには考えておいて欲しい事があるんだよ……」


 満面の笑みの陛下。

 複雑そうな表情の両親。

 困り顔の叔母様。


 あ、察し。


 まさかよね?


「今回、フィオは婚約解消、または破棄になるかと思う。だからね、その手続きが終わり次第、アシェリーと婚約してもらいたい。……とは言え、君の意見も尊重したいからね。ワタリビトは保護はすれど王家で囲ってはならない…そう言う決まりだから」


 やっぱりですか。


 それにしても、王命ではない…と。


 でも、この腹黒陛下のこと。言葉ではそうおっしゃってるけど、実際は「囲いたい」んでしょうね。


「ち、父上!」


 あ、アシェリーはこの話知らなかったみたいですわね。


「何?」

「何ではありません、急にそんな事をフィオに言うなんて!」

「アシェリー、ではお前はこのままでいいと?」


 真っ直ぐに視線がぶつかる二人。

 お顔が本当にそっくり…ではなく、アシェリー自身、この事をどう思うのかしら。


 私自身は王家に嫁ぐつもりは無かった……けど、現状はどうすればいいかわからない。


「ですが、ワタリビトだからと、フィオに無理をさせたくはないのです…」




 ………アシェ。



 本当に、昔から変わらないですわね。




 まだわからない事だらけですけど。


「陛下、少し……アシェと二人で話をさせてくださいませ」


 お互いの気持ち、いいえ、私の気持ちを整理しませんとね。

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