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58 やっとご退場ですわね

 崩れ落ち、狂ったように叫ぶフレアを冷たい瞳で見下ろすアシェリー。

 まるで汚物を見るような瞳ですわね。


 普段の彼しか知らない者からしたら、恐怖でしかないかもしれません。

 これ、アシェに言ったら物凄く嫌がると思いますが、本当に陛下そっくりですわ。


「陛下も既にご存じだ。今夜の騒動を含め、今回の件は調査をし、しかるべき裁きを受けてもらう……衛兵、この三人を連れて行け!」


 すっと、上げられた右手。

 その瞬間、影で控えていた兵士数人がこの親子達を拘束いたしました。


「何でこんな事に!私は幸せになりたいだけなのに!」

「お前達よくもこんな!……クソ!何故私が!」


 ララベルと伯爵は不服そうですわね。

 まぁ、お互い自業自得ですわ。



「……何で?ゲームじゃない!私はゲーム世界に転生したのに!好きマジ世界でヒロイン転生したのに、何でこんな目にあわなきゃならないの!」



 兵士に両腕を拘束されながら、大粒の涙を流すフレア。


 現実だと、この世界がゲーム世界ではないと早くから自覚していれば、こんな事にはなりませんでしたのに。

 本当に、残念と言うか、哀れと言うか。


 でも、そもそも「私」に喧嘩を売ったのが間違いでしたわね。

 同情したくても、自分が被害者なので出来ませんわ。


「フレアさん、多分、もう会う事もないでしょうから…最後に一言だけお伝えしますわ」


 私、今回の件本当に怒っておりましたのよ?


 私は転生者だからこそ、平穏な日々を過ごせるようにずっと努力してきましたの。

 それが、今回崩れる可能性がありましたわ。

 そして、許せない事がもう一つ。それは私の大切な人達…家族を巻き込んだ事。


 私は静かにフレアに近づくと、そっと彼女の耳元に顔を寄せました。



「……フレアさん?「好きマジ」の「開発者」に喧嘩を売ったのが間違いでしたわね」



 そう、運営…開発者である「私」に喧嘩を売ったのが、そもそも間違いでしたのよ。

 思いっきり皮肉を込めた声色で囁いて差し上げましたわ。


「………なっ!」


 その瞬間の彼女の表情に、少しだけですけど溜飲が下がりましたわ。


「では、ごきげんよう。「次」があるなら、今度は見誤りませんように」


 彼女が連れて行かれる瞬間、満面の笑みでお見送りして差し上げましたわ。





 さて、一つは解決……残るはこの方達だけ。


 私はアシェリーに視線を送ると、一つ頷き、怯えたような瞳で立ち尽くしている「三人」に顔を向けました。


 あの親子も大概でしたが、この三人も救いようがありませんものね。

 特に我が婚約者様。

 まぁ、私としては縁が切れそうなので有難いですけれど。


「………はぁ」


 思わず溜息が出てしまいましたわ。


 さてと……。


 そろそろですわね。


 アシェもそろそろだと分かっているようで、視線を広間の奥へと移しました。

 大広間に降りる大階段の上、その壁に掛かる大きな鏡の向こうにいる両陛下と私のお父様に向かい、合図を送ります。


「さて、そろそろ陛下方がお越しの時間だ。後の事は陛下にお任せする」


 アシェの言葉と共にタイミングよく開かれる扉。

 大広間を見下ろすかたちで登場された両陛下と宰相様。

 因みに宰相様は現公爵。お父様の弟君ですわ。


 あら?そう言えばお父様が…いらっしゃいませんわね。

 陛下達とご一緒に待たれると伺ってましたのに…。


「皆、静粛に」


 宰相様の言葉に、ざわついていた広間がシンと静まりました。

 そして、コツコツと靴音を鳴らしながら大階段を降りて来られる陛下方。


「さて、何やら楽しい事が起きていたようだね」


 とても楽しそうな陛下の笑顔。

 そして、それに応えるかのように同じく笑顔のアシェリー。


 何ですの!超怖い。


「陛下、大変お待たせ致しました。思ったより時間が掛かり申し訳ございません」

「あぁ、大丈夫だよ。私もあそこまで酷いとは思わなかったからね。アシェリー、フィオラ嬢、ご苦労だったね」


 蛙の子は蛙……ピッタリハマりましたわ。


「さて、皆騒がせて申し訳ない。今宵の夜会で「まさか」あんな事が起こるとは思ってもみなかった。先程の事態、報告は受けている。後はこちらで処理する故、皆は残りの時間を有意義に過ごしてもらいたい」


 穏やかな声色で、諭すように発せられた陛下のお言葉。

 これ、ギフトの力を言葉に上乗せしてますわね。

 皆様、騒ぎの前のような穏やかさを取り戻されましたわ。


「さて、会場は元に戻った……残るは、君達だね。君達?後程使いを出すから、両親同行の元集まるようにね?」


 今から両陛下は顔見せがありますものね。

 三人への「お話」は、後程と言う事みたいですわ。




***




 陛下と王妃様が、各貴族、商人と挨拶を交わされる為にその場を解散され、ほっと一息。


 と、いきたいところでしたのに。


 私、現在広間のバルコニーに呼び出されておりますわ。

 お相手は我が婚約者様。クズ男こと、ユリウス・ラングレー侯爵子息。

 先程まで残り二人と小娘にくっついていましたのに…今更何用かしら。


「ユリウス様、私疲れていますの。お話なら手短にお願いしますわ」


 どうせ、この後別室で話し合いがあるのだから、今でなくてもいいでしょうに。

 まぁ、この方が言わんとする事はだいたい想像できますけど。


「フィオラ、お前には僕を守る権利がある!」


 開口一番に何ですの?

 権利?何を言っているのかサッパリですわ。


「ユリウス様、意味が分からないのですが…守る権利?何故私が貴方を守らなくてはなりませんの?」


 思わず額を抑え頭をかかげる私に、ユリウス様はお顔を真っ赤にされてますわ。

 怒り心頭…と言った所かしら。


「お前は僕の婚約者だ!僕の「物」なんだから言う事を聞け!僕はフレアに巻き込まれて陛下から罰を受ける。だからお前が守れ!お前は陛下の姪だし、お前の事を陛下は気に入られている!」


 は?


 このバカは何を言ってますの?


 しかも僕の「物」?


 寝言は寝てから言って頂けるかしら?それに、お前お前って、失礼にもほどがありますわ。

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