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57 そろそろ、よろしいかしら?

「なんで悪役令嬢が光の精霊と契約してんのよ!」


 ……ちょっと聞き捨てならないセリフですわね。


 元を辿れば、私を「勝手」に悪役令嬢認定しておいて、自分の思い通りにストーリーが進まないからってキレます?


 だいたい、私だって途中から今日まで「悪役令嬢役」を我慢して演じてあげたんですのよ?少しは有り難く思いなさいよね!


 ……って、思わず愚痴ってしまいましたわ。

 よく考えたら、このピンクの花畑には通じない事でしたわね。


「貴女、何を言ってらっしゃるの?悪役令嬢?何ですのそれ?それから、私と精霊が契約している事は貴女には関係ございませんでしょ?今更ですけど、個人的な事ですわ」


 失礼にも侯爵令嬢である私に指をさし、大声で叫んだ小娘。

 因みに、母親である本来のヒロイン…もといクズインは、現状に頭がついていけないようで、オロオロとしたまま動けずにいますわ。


「意味わかんない!だいたいアンタだって「転生者」なんでしょ!悪役令嬢ポジって理解してるなら、物語にそった動きをしたらどうなの!」


 ちょっと貴女、余計な事言い過ぎですわよ?

 ただでさえ「ワタリ人」なんて言葉が飛び出してるのに、追加要素をぶち込まないで頂けますか!


「………何の事か分かりかねますが、もうはっきり申し上げますわ。貴女、頭は正常ですの?」


 うん、言ってやりました。


 もう面倒ですし、話どんどん外れていってますし、そろそろいいですわよね?

 元々、ピンク親娘と三馬鹿をサクッとまとめてヤッてしまう予定でしたのに、思いの他小娘が煩くわめき散らすものだから、予期せぬ事が山積みになってしまいましたわ。

 全くもって私、大反省ですわね。


「あ、アンタ!私がバカだって言いたいの!」


 私の言葉に顔を赤めながら、プルプルと怒りに震える小娘。

 そんな彼女に、私は扇子で口元を隠しながらため息混じりに口を開きました。


「何て品のない。お馬鹿とは申しておりませんわ。ただ、愚かだとは思いますけど……だってそうでしょ?貴女、先程から聞いていれば何ですの?貴族としてありえませんわ。私と貴女では身分が違う事をお忘れ?」


 本当に、そろそろ思い出して頂きたいわ。

 ここがどこなのかを。

 ここは「王城」。学園ではありませんのよ?


「貴女は伯爵令嬢……私は侯爵令嬢ですわ。それなのに先程から貴女の態度はどうなのかしら。それから、お忘れ?この場は王城。そして、国王陛下はじめ上流階級の方々が集まる夜会ですのよ?恥を知りなさいな」


「え…あ、え」


 その瞬間、小娘はハッとした様に周囲を見渡しました。

 今更遅いのよ。


 この騒動が始まって、皆様遠巻きにこちらを注目されてましたが、私の言葉で現実に戻られたみたいですわ。

 一気に騒めき始めましたもの。


“これはマズイのでは?”

“……陛下のお耳に入り次第、お家取り潰しだな”

“…あの方、アシェリー殿下に不敬を…なんて事!”


 上流階級での噂話は格好のエサ。

 皆様明日にはある事ない事尾ひれをつけて触れ回られるんでしょうね。


「わ、わたし…、でも、でも!私はヒロインの娘で、物語の次の主人公で!光属性だし、みんな私を好きになったわ!それに、ここはゲーム世界じゃない!ゲーム通りにヒロインが幸せにならなきゃオカシイわ!」


 胸に当てた両方の拳を握り、かがみ込むような体勢で叫ぶ小娘。

 目には涙を浮かべていますわ。


「いい加減、現実をみたらいかが?この世界は貴女の「箱庭」ではありませんのよ?この世界は現実世界。みな心を持ち、自分の意思、力で生きる世界ですわ」


「ウソよ!ならなんで「好きのマジック」が効くのよ!現実世界なら好感度上げなんか出来ないはずよ!みんな私に好意を持ってくれたわ!」


 「好きのマジック」……ゲーム名の中にも含まれた言葉ですが、好感度を意味する言葉です。


 だいたい、みんなって……貴女。


 はぁ…今この場で私が説明するのはおかしいですわね。

 ここは立場上「上司」にお願いしませんと。


「アシェリー殿下?申し訳ございませんが、宜しいでしょうか?」


 小娘が何故上手くストーリーをなぞらえてこれたのかちゃんと理解させなくてはね。


 ふわりと腰を折り、アシェリーより一歩後ろに下がります。

 王太子としてのアシェリーに、小娘がビクリと体を震わせました。


「ドロッセル嬢、ご苦労だった。後は私が引き受けよう。さて、ラファエロ嬢……君は何か勘違いしているようだ。君は「みな」が君を好いていると言った……そこに理由があるとは思わなかったのか?」


 冷めた瞳で小娘を見るアシェリー。

 周囲からは唾を飲む音が聞こえましたわ。

 本当に、陛下そっくりで嫌になりますわね。


「君には「魅了」のギフトがある。伯爵は君を神殿に連れて行かなかったようだね。母親含めて隠すためだったのだろうが……そのせいで、こちらは大迷惑だよ」


 スッと、アシェリーが視線を動かした先。

 ラファエロ伯爵が真っ青な顔でガタガタと震えていますわ。

 事の重大さに今更気付いたところで、もう遅いのですけど。


「魅了系のギフトは人々を惑わす。よって、神殿の管理下に置かれるのは子供でも知っている事だ。伯爵含め、そこの親娘の罪は重い……。ラファエロ嬢、理解は出来たか?」


 突き放すように放たれたアシェリーの言葉に、ガクリと崩れるフレア。

 ララベルと伯爵も顔面蒼白を通り越して、真っ白ですわね。


「ど…う言う事?魅了?何…それ。管理下って…ゲームじゃそんなの無かったじゃない!ちょっと、どう言う事!知らない知らない知らない!ヒロインは愛されるのが当たり前なのよ!魅了の力なんて知らない!」


 まったく、愚か…ですわね。

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