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52 天国からの

 物語には「居ない」。

 確かにその通りだわ。

 でも、クズインは本質をまったく理解していない。


 だって、そうでしょ?


 この「世界」はゲームに「酷似」してはいるものの、「現実」なんだもの。






 少女のように、そして悪女のように微笑み、自分の娘をコケ下すララベル。


「それからね?今日この場に招待してくださった方…この方は「神官様」なの」


 会場に一緒に入場したエスコートの男性に、にこやかな表情を向けるクズイン。


「光の精霊が現れた日に、彼が屋敷に来てくれたの。ちょうどお父様は外出してらしたみたいだけど…。その時に今夜の夜会への招待もされたのよ?」


 本当、嬉しそうですわね。

 正直脳内お花畑は小娘といい勝負ですわ。

 本人達はどう思っているか分かりませんが、正に親娘ですわね。

 たまたま性格が似たような二人が親娘として転生したのでしょうけど、やはり似すぎてますわ。


 まず「おかしい」とは思わなかったのかしら。

 精霊もですけど、神官の存在に疑問一つ持たないなんて。


 イベントすら何もこなしていない中、急に精霊が現れて、その日に神官がやってくるなんて、普通に考えたらおかしいでしょうに。


「お初にお目にかかります。私、神官を務めておりますアルスと申します」


 クズインの視線の先、「神官」と呼ばれた男性、アルス様は優しく微笑むど、胸元から神殿関係者のみに許された証の首飾りを出して、此方に向けられました。


 その光景にまたもや会場がざわつきます。

 客観的に見れば、この状況は「神殿公認」と見てとれますものね。


 その現場に、小娘の表情から色がどんどん抜けていきますわ。


「ちょっと!何で…ありえない、あり得ないわ!あ、アシェリー達も何か言ってよ!あの女が「愛し子」なわけがないわよね?」


 焦りを滲ませながら、アシェリーの腕に自分の腕を絡ませ訴える小娘。


 ちょっと不敬にも程がありますわね。

 言うに事欠いて、王太子殿下を呼び捨て…しかも無断で触れるだなんて。

 こんな公の場で……馬鹿ですの?


 …………あぁ、馬鹿でしたわね。


 しかも、馬鹿は小娘だけではありませんでしたわ。

 小娘の一言に、アシェリー以外の三馬鹿が一斉にクズインを睨みつけましたわ。

 なんて残念なオツム達なのかしら。


「愛し子ならフレイ以外あり得ないだろ!お前は偽物だ!」

「あれぇ?オバ様の分際で若い娘に嫉妬かなぁ?」

「残念ですが、貴女はフレイに負けたんですよ?」


 お三方各々好きに言われてますが、この会場には貴方達の「ご家族」もいらしてるのに…頭大丈夫ですの?

 特に「我が婚約者様」……本当にザンネンですわ。本日は、ご家族の方々、皆さん総出でご招待を受けてますのに。


 いくら、小娘に魅了されたとは言え、本人に争う意思があればここまでお馬鹿にはなりませんのにね。

 本当、終わってますわねご愁傷様ですわ。


「まぁ、こちらとしては有難いですけど…」


 思わずポツリと落とましたが、残り一名、呼び捨てにされた「巻き込まれアシェリー」ですが。


 ……あらあら。


 そのお顔久しぶりに見ましたわ。

 これは……楽しくなりそうですわね。


 吠える三馬鹿とは打って変わり、アシェリーの周りだけ温度がマイナスになってますわ。


「君は…誰の許しを得て私の名を呼び捨てにしたのかな?しかも…チッ!」


 あまり良い事ではありませんが、盛大な舌打ちをしたアシェは、忌々しげな表情で小娘を睨みながら絡まれた腕を引き抜きました。


 やっぱり、そうなりますわよね~。


 何せ、親族でもない、王族でもない、対等とは程遠い者から呼び捨てにされた挙句、ベタベタと触られたんですもの。

 相手が「自分が嫌う者」なら尚更…。


「あ、アシェリーさま?え、だって、私アシェリーの「恋人」でしょ?呼び捨てにしてもいいはずよ?」


 アシェの態度にオドオドとしながら口を開く小娘。

 何て勇者。

 その度胸にだけは褒めて差し上げるわ。


「は?何を言っている。君と恋人?考えただけで虫唾が走る。学生としての繋がりしかない君にそんな権利は無い。不敬にもほどがある!」


 吐き捨てるように言うアシェリー。


「だいたい、君と行動していたのはそこの三人を含めた危険人物の監視のためだ!」


 よほどストレスが溜まってらしたのね。

 もういいと思ったのか、事実をぶちまけてしまいましたわね。

 まぁ、この作戦を始めてからずっと無理してましたから、仕方ないと言えば仕方ないのかしら。

 もう少し我慢して頂きたかったですが、収集がつかなくなりそうですから、先に進めましょう。


 氷点下まで機嫌が下がりまくったアシェに近づき、深くお辞儀。

 優しく微笑み、無言で落ち着くように促します。


 そして。


「どうでもよろしいですけど、あなた方、この場がどういった場所だかお忘れですの?」


 ドレスの裾をさばき、一歩前に出る私。

 背筋を伸ばし、侯爵令嬢として凛とした視線を見せます。


「マリアナ…ではないのね?彼女かと思ったけど、年齢的に変だし、雰囲気もちょっと違うわ」


 私の言葉にまず反応したのはクズイン。

 彼女は小首をコテンと傾げながら口を開きました。


「えぇ、私は王妃様ではございませんわ……それより、ララベルさん?でよろしいかしら。もう貴族ではないですし。……ララベルさん、貴女、精霊と本当に「契約」してますの?虚偽は重罪ですわよ?」


 チラリと神官であるアルス様にも視線を向け、疑問を投げつけます。

 そんな私にアルス様は笑みを見せ口を開かれました。


「あれ?私はララベル嬢が「愛し子様」とは一言も言っていませんが?」

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