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49 主人公が幕を開ける

 夜会が行われる大広間。


 私と弟が足を踏み入れた瞬間、何故か招待客の皆様の視線が一気に此方へと飛んで来ました。

 そして何やらザワザワと落ち着きがない様子。


「何か私しましたかしら?」

「姉様、した…と言うか、された感じですね」

「意味が分からないわ」


 ちょっと、お耳の聞こえを良くする魔法を発動…って、出来ないんでしたわ。

 この広間には魔封じの結界があるのでしたわね。


 仕方ないですわ、自力で!

 えぇ…と?


『あのドレス…まさか』

『ではお噂は本当…次期…は』

『陛下はやはり』


 ………ドレス?

 今日着てきた、陛下から頂いたドレスの事かしら?


『王家の色を…されるとは』

『では……は王家が?』

『これは忙しくなりますな』


 まさか、王家が新しいブランドを自ら立ち上げ…とか、伯母様が実はドレスを考えられた…とか?

 ああもぅ、まどろっこしいですわね!


「姉様、姉上ー!帰ってきてください!今日は大事な日なの忘れてませんか?」

「え?…あぁ、何を言いますの、忘れてるはずないでしょう?」

「ならいいのですが、あ、ほら!兄様と殿下は彼方ですよ?」


 何やら騒がしい中ではありますけど、私はお目当ての二人、アシェリーと兄様を見つけると、あちらも私達に気付いていたようで、目線だけで合図をしてくれました。


 何故か二人とも苦笑い…と言うか、アシェリーの顔が若干青いですわね。

 「今日」と言う日に緊張?あのアシェリーが?

あり得ませんわね…では、何故?


「ヘンリー、兄様と…特にアシェリー殿下。変ではなくて?」

「あぁ、多分姉様の装いに驚いているんだと思いますよ?」

「やはり、このドレス…王家で始める新事業なのかしら」

「は?姉様何言ってるんですか?……いや、ちょっと斜め上すぎですよ?」


 ヘンリーにもの凄い残念な子を見る様な表情を向けられましたわ。

 なまじ顔がいいせいで、その表情にイラッとしますわね。


「姉様、その装いの色ですが、何なのかまだ分からないんですか?」

「私と王家の色でしょ?」

「いや、そうなんですけど、違うって言うか」


 言い淀む弟に不審げな視線を向ける私。

 だって、王家の色だから何だと言うのかしら。

 もしアシェリーとの婚約などと言う話でしたら「必要ない」と「大昔」陛下にお父様が伝えてますし、よく分かりませんわ。


「まぁ、いいわ。それより、目標は……居ましたわね」

「何かパワーアップしてませんか?」

「今は捨て置きなさいな?とりあえず、私個人のご挨拶をしながら「待ち」ましょうか?」


 視線の先の場違いな集団。


 まぁ、今は此方の用を先に済ませましょうか。

 今日は、私の個人事業である魔法薬や魔道具の取引き先の方もおいでですから。




*****




 ヘンリーを連れ挨拶回りも一通り終了。

 私達は給仕より軽めのシャンパンを受け取ると、壁際で一息。


 それにしても、あの「場違い集団」は目立ちますわね。

 自分達が世界の中心だと言わんばかりですわ。


 目立たぬよう、壁際から様子を伺ってますが、私達に気付いた様子はないですわね。

 まぁ、挨拶回り前に認識阻害の魔道具を発動させましたし、なるべく近づかないよう立ち回りましたから。


「あ、姉様……あの人、兄様に向かって行ってますが」

「あら本当。しかも取巻き付きね」


 「種」は蒔きましたし、陛下からの許可も出てますから、私達は時間が来るのを待つだけなんですが…兄様大丈夫かしら。


「あ、兄様こっちを睨んでますよ!」

「あの方、アシェリー殿下が一緒だからと嬉しそうに声を掛けに行きましたわね……まぁ、今は兄様に我慢して頂く他ないわね」

「………後が怖いですけどね」


 今の私は単なる傍観者。

 「主役」が来るまではまだみたいですし。


「本当、常識がないと言うか…世界が自分達中心だと思ってるのでしょうね」


 それにしても…分かってはいましたが、あのバカ、連絡すら寄越しませんでしたわね。

 夜会のエスコート役は「婚約者」が務めるのが定例ですのに。

 まぁ、期待は砂粒ほどもしていませんでしたけど。


 さて、と。


 私は広間の時計に目を向けると、そろそろかと口角を上げました。

 もうすぐ「主役」が登場する時間。

 幕が上がり、舞台が始まる。


 今回陛下やお父様達に力を貸して頂きましたし、上手くいけば私も自由の身。

 物語の終焉にももう少し。


さて、あの方々はどう踊ってくれるかしら。



「姉様、そろそろ」

「ええ」



 広間内に流れる優雅な音楽。

 会話を楽しむ貴族や商人。


 そんな中、陛下からのお言葉も済み、場内の雰囲気も整った。


 和やかなその空間を「異質」なものに変える「主人公」の登場。


「いらしたわ」


 開けられる広間の扉。

 それと同時に入ってきた人物。

 あの方を知る者達は、一瞬何が起きたのか分からない表情をし、一気に凍りついた。


「直接拝見するのは初めてだけど…」


 お待ちしてましたわ。

 本日は来ていただき感謝ですわ。

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