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43 好きのマジックを貴方に!(フレア)

 あー、気分がいいわ!

 何て清々しい日なんでしょう。


「理由は分からないけど、ホント超スッキリ!」


 学園帰りの馬車の中、私は満面の笑みで上機嫌に鼻歌を歌う。


 あ、改めて「私はこの世界のヒロイン」よ。宜しくね。

 可愛くなびくピンクブロンドの髪が特徴的な、超絶美少女とは、私フレアちゃんの事!


 ホント、神様はやっぱり私の味方だったわ。

 好きマジのストーリーにそった行動がことごとく不発な毎日を送る中、理由はまったく分からないけど、急に時計が動き出すようにストーリー通りに世界が回り出した。


 悪役令嬢フィオラはちゃんと私を虐めだしたし、アシェリー殿下もどんどん私への好感度を上げている。

 しかも、ずっと超塩だったマーシャル先生が私に笑いかけてくれるようになった。

 昨日なんて、「フレア君の笑顔はいつも癒される」とか、あのクールな顔で微笑む様なんて最高。


 ……スマホが無いこの世界を恨むわ。

 記録としてマジ残したかったわね。


「明日はお昼寝イベントね!ちょっと早めに中庭に行かなきゃ」


 全ストーリーが頭に入ってる私に死角はないわ!

 じゃんじゃん好感度上げをして、お目当てのアシェリーを堕とすんだから!


「それから「犬」との距離はそろそろ考えないとなぁ…」


 私の本名は「王太子妃」になる事だから、主要攻略者と必要以上の関係もつつもりは無い。

 とりあえず、キスくらいまでは許してあげてるけど、これ以上強請られるのは困るわね。

 王太子の婚約者が乙女じゃないなんて、絶対ダメでしょうし。


「そうね。そろそろ彼らには「とっておきアイテム」を渡す頃合いね」


 とりあえず帰宅したら市場ね。

 現世で作るのは初めてだけど、まぁ…大丈夫でしょ?前世では趣味でよく作ってたし。


「楽しみね。みんな喜んでくれるかしら」




*****




「ユリウス、アイゼン、フリード!」


 私は登校すると、いつもの三人をみつけ、満面の笑みで駆け寄った。

 きっとゲームだったらバックにキラキラエフェクトがかかってるわね。


 周りにいた知らない生徒達の顔が赤くなってるわ。

 可愛いって罪ね。皆んな私に注目してる。


「嬉しいからって急に駆けたら危ないじゃないか!」

「あれぇ?そんなに会いたかったの?」

「怪我をしたら僕悲しいです!気をつけてくださいね」


 三者三様の言葉とともに、私に笑顔をくれる「犬」達。ホント、よくここまで好感度が上がったものだわ。

 ゲーム内では味わえない程の充実感。現実ってすごいわね。


 ちょっとの距離だったけど、私はあえて息を切らし、疲れた表情を作りながら花が咲くほどの笑顔を向けた。


 (どう?可愛いでしょ?)


 三人はそんな私にとろけるような笑みをくれる。


「ご、ごめんなさい!三人にどうしても受け取ってもらいたいプレゼントがあって!」


 そう言いながら私はカバンから可愛くラッピングされた袋を三つ取り出した。


「日頃のお礼にクッキーを作ったの!ぜひ食べてね。自信作なんだから!」


 そう、昨日帰宅すると同時に作ったもの。

 それはクッキー。

 実はこれ、「好きマジ」のキーアイテムの一つ。

 好感度をマックスにした攻略キャラにプレゼント可能な「マジッククッキー」だ。

 ゲームの題名にある「好きのマジックを貴方に」のマジックはこのクッキーと繋がっている。


 「好きマジ」の世界では、主要キャラを全員攻略しないと王太子を堕とせない仕様になっている。

 でも、難儀な事に王太子の攻略を本格的に開始すると主要キャラの好感度が落ち始めるという謎なシステムが発動するのだ。


 それを止めるのがこの「マジッククッキー」。

 定期的にこのクッキーを渡す事で、好感度は維持される。

 つまり、王太子を堕とすまで、私は三人にクッキーを渡し続けないといけない。


 (ホント、面倒極まりない仕様よね)


 しかも、このクッキーを作り出すには、私の魔力をある程度まで上げ、クッキングスキルも天井まで上げる必要があった。


 クッキングスキルはまぁ、クッキー作りに必要なのは分かるわ?でも魔力上げは本当に苦労したわね。

 現実に魔力上げするのってあんなに疲れるものだとは思わなかったわ。

 ゲームだったら魔力上げは、魔物退治とかアイテム作りとかの作業で上がってたけど、現実は無理。

 貴族令嬢である私が魔物退治なんてもってのほかだし、アイテム作りをする機会なんて授業位。

 以前授業でアイテム作りを頑張ってみたけど、オニババ教師やお祖父様からやりすぎて叱られたから出来なくなっちゃったわ。


 そのせいで、私は魔力枯渇と回復を繰り返すという、荒行をするはめになった。


 魔力枯渇をすると、次に回復した時「少し」だけ魔力量が上がる。

 それを私は毎日寝る前に繰り返した。

 寝れば少しは回復するとはいえ、全回復には程遠いため、お小遣いの半分は回復ポーションに飛ばしたのが、ホントに痛かったわ!


 でもこれも「王太子妃」になるため!

 絶対に私はやり遂げるんだから!!!!!





「美味しくてビックリするわよ?」


 三人は、私からクッキーを受け取ると、満面の笑みを返してくれた。

 受取ったって事は、やはり好感度はマックス。


 あとはマーシャル先生だけね。

 まだマックスとはいかないでしょうけど、このままいけば、間違いなく受け取るはず。



「三人とも、また作るから「絶対」食べてね♡」



 本当、アシェリーが私に跪く日が楽しみだわ。

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