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42 さて、どうしましょうか?

 さて、あのお花畑はこの状況をどう見たのかしら。


 「好きマジ」の世界に小娘をご招待して数日が経ちましたわ。


 最近の私の流行りは、小娘を庇う三馬鹿にイヤミを言いつつ、嫌がるアシェリーにベタベタする事かしら。


 アシェも演技が上達したみたいで、私に対して嫌悪を出すのがかなりお上手になりましたわ。

 その度に、小娘がキラキラした眼差しをアシェに向けておりましたわね。

 ……アシェ、骨は拾って差し上げますから頑張ってくださいな。





「………はぁ」


 私、今は学園から帰宅し、自室のソファーに体を沈めております。

 思わず、盛大に溜息を吐いてしまいましたわ。


「お疲れ様です。お嬢様」


 そんな私の様子に、カトレアが静かにお茶をテーブルに置いてくれました。


「案外……疲れますわ」


 一応「シナリオ内」のセリフや行動を抜粋してあげてはいますけど……サービスしすぎてるかしら。


 発案者は私ですし、文句を言うのは可笑しな話ですが、「悪役令嬢」と言うのは本当にストレスが溜まりますのね…。

 あえて、態々、面倒でも、あの小娘に絡まなくてはならないなんて……シナリオ内の悪役令嬢を尊敬してしまいますわ。


「お嬢様、今晩はエステフルコースになさいますか?」

「そうね……お願いできるかしら」


 本当に、毎日聞く「私が何をしたって言うんですかぁ!」や、「フィオラさまはそんなに私がお嫌いなんですか!」には、疲れますわ。


 何も知らずに巻き込まれている生徒の皆様ですら、ドン引きしている状況ですもの。

 平然としているのは、私達を除き、頭の可笑しな三馬鹿と「理由」を知っている「先生方」だけですわ。


 実は今回、この作戦を実行するに際し、私は学園長にも協力をお願い致しましたの。

 おかげで、学園の教師の皆様もご協力頂ける事になりましたわ。


 学園長には、ラファエロさんが「魅力系」のスキル保持者である事や、ラファエロ伯爵家が犯したであろう罪などを細かく説明し、ご協力をして頂く事にしました。

 まぁ、学園長は「王弟殿下」ですし、私とは親戚と言う事もあり、このお話はとてもすんなり通りましたわ。


 「いい膿出しになるね」と、にこやかに笑われた学園長のお顔を見て、流石「腹黒魔王様」の弟君と思ったのは、ここだけのお話ですわ。


 それから、国王陛下には、嫌でも勝手に「マーシャル先生」から情報が行ってますでしょうから、あえてご報告はしませんでしたわ。

 案の定、昨日陛下から「楽しそうで何より」と、書かれたお手紙をアシェ経由で受け取りましたし。


 ………あの時のアシェのお顔、面白かったですわ(本人には絶対言えませんが)。


 さて、そろそろ次のステップ…ですわね。

 三馬鹿もどうにかしませんといけませんし。


 明日はお休みですし、恒例の作戦会議ですわ。




*****



「で、何故私まで会議に参加なんだ?」


 早朝、お仕事がお休みのマルク兄様と、私と同じく学園が休みな弟のヘンリーとの三人での朝食の場で、私はにこやかに口を開きました。


 お父様とお母様はお仕事で、今日既に屋敷を出ていらっしゃいます。

 いつも忙しい我が家ですが、兄弟とだけでも団欒な時間をとる事ができるのは、本当にありがたいですわ。


「兄様、まだあの「お花畑」に直接会った事がないでしょ?」

「無いが……会う気は毛先程もないぞ?」


 ………本当に嫌そうですわね。


 彼女と会った事はありませんが、散々私達から話を聞いていますものね。

 かなりの嫌悪感をもっていても不思議ではありませんわ。


「兄様、実はあの令嬢、例の三家のみならず、我が家の事も調べてあるみたいなのです。……他にも、マーシャル家など、多分、自分の母親が伯母様達に起こした「惨劇」を繰り返したいのではないかと」


 惨劇…と言うか、「喜劇」ですけど、兄様にはふんわりとお伝えしなくては。

 事実は私と伯母様だけが知っていれはいいですわ。

 ゲーム世界や乙女ゲームなんて、言っても理解できませんからね。


「あの惨劇には、我が家の分家の者も巻き込まれそうになったと聞きました。兄様に何かあったらと思うと…」


 そう、実はゲームの隠しキャラはドロッセル家の分家の人間。

 つまり、現在のドロッセル家の子息が誰か引っ張り出される可能性もある。

 幸い、小娘の母親の時子息が巻き込まれる事はなかった。

 ………けれど、転生者確定のあの娘の事。何をしてくるかは分かりませんから。


 マルク兄様は、アシェの側近ですし、あの花畑がアシェに「会いたい」と言い出しても不思議ではないわね。


「まぁ、確かにアシェリーから「コレ」を渡されたが…」


 普段、城では決して呼ばない呼び方でアシェを呼ぶ兄様。

 私生活では従兄弟として接してますからね。


 自身の小指に付けた指輪(魔道具)を見せながら溜息を吐く兄様。

 うん、色気が凄い…ではなく、ものすごく面倒くさそうですわね。


「はぁ……まぁ、仕方ない。私も参加しよう」

「ありがとうございます。嬉しいですわ」


 大切なお兄様に手を出されてたまるものですか!

 兄様にも充分注意して頂きますわ。


 私はほっと一息。

 カチャリと静かな音をたて、満足顔でお茶を口に運びました。

 そして、ニコリと目を細め、「彼女」に視線をむけるのでした。

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