37 お話し合いですわ②
「とりあえず、皆にはコレを付けてもらいたい」
アシェリーの言葉で、各々指輪を通してゆきます。
キラキラと輝く、金色の指輪。
ヘンリーとベルバラは、意図して左手の「薬指」にはめていますわ。
私は……どこにはめましょうか。
お揃いとは言え、私まで左の薬指なんて、単なる痛い姉ですからね、小指に通す事にしましたわ。
魔道具であるこの指輪は、フリーサイズです。
指に通した瞬間、ピッタリサイズに変わりました。
作成者は間違いなくアシェリーですわね。
ついである私とのギフトの影響で、彼の魔力を嫌という程感じます。
あぁ、ヘンリーたちが羨ましいですわ。
この違和感を感じずに済むのですから。
王家のギフトと繋がる我が家のギフトが嫌な作用を及ぼしています。
まるで、指輪から魔力の鎖をかけられている感覚ですわ。
「はぁ………何だか屈辱」
アシェリーの「物」になったみたいで……嫌な気分ですわ。
あら、弟とベルバラは、そんな私に不思議そうな表情ですが、アシェリーは気付いたみたいですわね。
「………すまない」
「何がですの?」
まぁ、謝罪の意味は分かりますが……一応お聞きしましょう。
「いや、あの女のギフトに対抗させる為に、私の魔力を使ったからな……一応、念の為にマルクにも持たせたんだが…はめた瞬間、思いっきり嫌そうな顔をされた」
あら……まさかの兄様にも渡されるとは。
と言っても、兄様はアシェリーの側近ですから、素直にとはいかないでも、ちゃんと受け入れられたのではないかしら。
「兄様も我が家の固有ギフト持ちですからね。そのお気持ちは痛いほど分かりますわ」
「まぁ、だが納得はしてくれたよ」
でしょうね。
現宰相のお父様の弟君であるアムリス公爵様には、お嬢様しかおられませんし、確実に将来は兄様が宰相になられるはずですわ。
ですから、アシェリーの魔力を拒否される事は決してないでしょう。
それに。
「マルクもあの女から狙われない保証はないからな……ドロッセル家の人間と言うだけじゃなく、並の貴族では太刀打ちできない程の容姿を持ってる……あの女ならやりかねん」
そう、ですからアシェリーにしてはグッジョブですわ。
「まぁ、確かに兄様でしたらありえますわ」
兄様は生きたお人形と称される程の美形ですものね。
あのお母様譲りの美貌と、王家の血を引くお父様のいいとこを存分に吸収してお生まれになった、全てにおいてチートな存在。
いっそ、ラスボスと言ってもいいのではないかしら。
………あの小娘は見境がないですからね。
それに、好きマジのサブ攻略キャラには、ドロッセル家の血縁者がいましたから。
小娘が、その人物と兄様を置き換えても不思議ではありませんわ。
「とりあえず、この指輪は王家のギフトが作用した品だ。あの女のギフトを無効化するし、ギフトが成長しても問題ないだろう……」
一応、私達だけでも正常な判断が出来るように……ですわね。
今後あの小娘のギフトは成長し、周りをどんどん巻き込んでいく可能性が高いです。
その時、あの小娘を止める人間が必要ですし、人数は多いに越した事はありませんわ。
それにしても、アシェリー………貴方先程から、小娘の事「あの女」って。
よほど嫌いになられたのね。
クルクルと、おかわりの紅茶に砂糖を溶かしながら、思わず溜息が出ました。
それにしても、あの小娘、本当におバカさんですわね。
攻略キャラと思っているなら、自分から好感度を下げてどうするのかしら。