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24 ギフト(アシェリー)

 私は王太子と言う立場上、学園内であっても媚びを売る集団に囲まれる事が多かった。

 本当に鬱陶しいとしか言えない。皆、私の機嫌をとり、上部だけの賛辞を口にする。


 その丸見えな野心に愛想笑いで流す毎日。


 その為、自由になれる昼の時間は、なるべく一人を選んでいた。まぁ、最近はどこかの令嬢のせいで窮屈な思いをしているが。

 本当にアレには参る。なぜ毎日毎日あの令嬢は…。


 そんな中、今日は珍しくフィオラから昼食に誘われた。

 たまには従兄弟同士お昼でも…との事だが、多分日ごろを見ている彼女なりの気遣いなのだろう。


 昼休憩に入ると、私はいつもフィオ達が昼をとっているガゼボに向かった。


 「今日は、我が家の料理長が沢山お弁当を作りすぎたのでアシェも一緒に食べてくださる?」と、何とも彼女らしい誘い方だったのには、思い出しただけで笑いがでそうになる。

 本人に言うと拗ねてしまうが、そんなところが彼女の可愛さだったりする。

 皆には完璧な令嬢と言われているが、実は恥ずかしがり屋な一面があったり、情にもろかったりと、「女の子」らしい性格も持ち合わせている。


 まぁ、そんな彼女だからこそ………私は。






「アシェリーさまぁ、あのぉ、実はお渡ししたいものがありまして」


 若干現実逃避をしていた私だったが、「彼女」の言葉に、現実に引き戻された。


 ガゼボに向かう途中、私は例の伯爵令嬢、フレア・ラファエロ嬢に呼び止められた。

 いつものように、男ウケがいいその容姿を最大限に活かし、庇護欲を誘うように微笑む彼女。

 こんな女は、今まで腐るほど見てきた。

 自分に絶対的な自信をもち、此方が堕ちるのが当たり前と思っているイカれた思考の女。


 本当に、舐められたものだ。

 私を後ろにはべらせている男どもと同じように見るとは。


 それにしても、ユリウス・ラングレー、アイゼン・アレクシス、フリード・カジラエルか…。

 まるで「昔父上から聞いた話」のようではないか。


「渡したいもの?」

「はい、あ、あの……実はアシェリーさまにプレゼントがあるのです」


 頬をピンクに染めながら、恥ずかしそうに俯く令嬢。

 はっきり言って、気持ち悪い以外の何者でもない。


「すまないが、私は君からのプレゼントを受け取れない」


 私の言葉に、一瞬彼女の表情が歪む。

 はぁ……一瞬だが「地」が出たな。分かりやすくて逆に笑えるぞ?


「何で…どうしてですか?私は、いつもお世話になっているお礼にと……ぐすん」


 目に涙を溜めながら、庇護欲を誘う表情をする令嬢。

 客観的に見れば、儚げで手を差し伸べてやりたいと思うだろうが…。

 後ろの令息達が全て台無しにしているな。

 どう見ても尻軽な女にしか見えない。


 後、私はこの令嬢に「お世話」をした記憶はない。


 それにしても、この男共は分かっているのだろうか。

 先程から私に対して意見を述べているが、王族が得体の知れない物を安易と受け取るはずがない事に何故気付かない。


 さて、どうするかなぁ。


 先程彼女に呼び止められた瞬間、念の為、防衛用に「アレ」を発動させたが。


 ………すまんフィオ。


 魔力感知でフィオとヘンリー、そしてベルバラ嬢が近くにおり、しかもフィオは「縫いとどめ」られているのが分かった。


 だが、今「解く」のも危険だ。


「悪いが、君達は私が「王族」だと言う事を忘れてないか?」


 私の言葉に一瞬たじろぐ令息達。だが対照的に私の言葉に小首を傾げるラファエロ嬢。


「王族の方とは言え、気持ちを贈るのはいけないのですか?」

「君のは「それ」だけではないだろう?」


 気付かないとでも思っているのだろうか。


「ラファエロ嬢、私は「君のソレ」には惑わされないよ?」

「何の事ですか?」


 これは…無意識か。

 本当に分かっていないみたいだな。


 日に日にその力を強くするラファエロ嬢。


 全く、何故こんな「能力」をもつ女を野放しにしているんだ。

 神殿側の怠慢だな。

 それとも、彼女は神殿で祝福を受けなかったのか?


 この国の人間は、六歳で神殿にて祝福を受ける。

 その時、貴族の子供は己れの属性を一緒に調べてもらう事になっている。

 そして、それと同時に神からのギフトを調べるのだ。


 ギフトとは、神から頂いた固有のスキルのようなものだ。

 私なら「統治者」。王族固有のギフトで、民を導き従わせるカリスマ性のスキル。これは国王である父も持っている。


 そして、彼女…ラファエロ嬢のギフトは、おそらく「魅了せし者」。

 統治者と同系統のギフトで、自分が好意をもつ者を魅了する力がある。


 まぁ、「魅了せし者」は、「統治者」の下位ギフト。私には効かないのだが。


 振り撒かれるこの力が、周囲に広がらないよう、先程、呼び止められた瞬間に私のギフトを展開して結界を作った。

 そして、案の定この女は話し始めると同時にスキルを発動し始めた。


 おそらく自覚無しにだろう。


 魅了系の最上位ギフトである統治者を持つ私には、彼女が先程から纏う魔力がよく見える。

 だが、逆に統治者以外にはこの魔力は見えない。


 神に仕える神殿の人間ですら「見る」事が出来ないギフト。

 普通ならば、このギフトを持つ者は、分かり次第、神殿預かりになる。

 それだけ厄介なギフトなのだ。


 だが、現状は野放し状態。

 祝福は受けていないとみた方がいいだろうな。


 本当に……父上には困る。

 あの方の事だ、この件を知らないはずがない。

 絶対に何か企んでるな。


「ラファエロ嬢、何度も言うが迷惑だ。私は王族、そして王太子だ。婚約者でもない君からの好意は受け取れない。いい加減分かってもらえないだろうか?」


 最近何度言ったか分からない、同じセリフを言う。


 だが彼女の返答は斜め上だった。


「では、私がアシェリーさまの婚約者になれば、全て解決ですよね?やだ!私頭いい!」


 …………はい?

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