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17 王妃様の里帰り

 皆様ごきげんよう。

 フィオラでございます。


 今日も、元気にピンクの小娘が、「空想」の私から嫌がらせにあったと苦情を言いに来ていましたわ。


 あの方、本当にお暇ですのね。

 もうすぐ定期テストですのに、お勉強は大丈夫なのかしら……そんなだから、Bクラスから上がれないのよ。

 好きマジのヒロインは、ゲームの中では一応Sクラスでしたのにね。

 やはり、ヒロイン補正があるとか勘違いなさって、お勉強を疎かになさったんでしょうね。

 本当に残念な脳みそですわ。


 この世界は、「現実世界」ですのに。




「只今帰りましたわ」


 学園が終わり、屋敷に戻ると、侍女やメイド達が慌ただしく動いておりました。


 先程見た馬車は……。

 やはり帰って来てらっしゃるのかしら。


「お嬢様、お帰りなさいませ!申し訳ございません、王妃様がお帰りでして」


 やはり、叔母様でしたか。

 この様子だと、先触れ無しだったみたいですわね。

 何かあったのかしら。


「ララミー、カトレアはどうしましたか?」


 ララミーは、私の二人いる専用侍女の一人。

 カトレアと同じく、私が幼少期からそばに置く者です。

 見た目は天使、中身は小悪魔な、ちょっと困ったさんですわ。


 それにしても、カトレアはどうしたのかしら。

 いつもでしたら、私の帰宅に合わせて一番に迎えてくれるのに。


「カトレアは、今王妃様のお相手をしております。奥様が侍女長を連れて出てらっしゃいまして、現在屋敷にいるのは旦那様と、急遽別宅から来られた大旦那様だけです」


 はい?


 叔母様は、急な里帰りに付け加え、お祖父様を呼び出されたのですか?

 まさか、侯爵をお母様に譲り、御隠居なされたお祖父様までとは……。


「何かあったの?」


 何かよくない事でもあったのでしょうか。

 急な里帰りに、急なお祖父様召喚。

 嫌な感じですわね。


「よくは存じ上げません。ただ、お三人様が客間に入られてから、かれこれ二時間弱ですわ」

「長いわね」


 でも、私が口を出す事ではないでものね。

 ……気になりますが、仕方ありません。


 あら?


「姉様?どうしたのです。玄関先で立ち止まって」


 ヘンリーも帰宅したみたいですわね。

 ガチャリと開いた玄関から、弟が入って来ました。


「いえ、何故か叔母様が先触れなくお里帰りされ、お祖父様まで召喚されたみたいなの。今お母様はお出かけ中で、お父様がご対応なさってるみたい」

「何かあったんでしょうか」

「分からないわね。でも、私達が口を出す事ではないでしょう……もし呼ばれたら向えばいいわ」


 まぁ、それ以外選択肢がないですから。

 少し困り顔をした私に、了解したと頷く弟。


「とりあえず、部屋に戻りましょうか?」

「ですね」



*****



 ー 時間は巻き戻り、二時間半前 ー




「只今帰りましたわ」


 ばーんと、開かれた馬車の扉。

 私は御者の手を取り、颯爽と馬車を降りました。


 先触れを出さなかったせいで、馬車の到着と共に屋敷中の使用人が慌てだしました。

 まぁ、気持ちは分かりますが……私の立場が立場ですから。


 やはり、ちょっ……と、不味かったかしら。


 そんな慌てる使用人達の中、バンッと、勢いよく玄関の扉が開きました。

 それと同時に、現侯爵である妹の旦那様。つまり、私の義理の弟であるアニキスが飛び出して来ました。


 赤銅色の髪に、赤い瞳。そこにはいつも掛けている、愛用の金の片眼鏡。

 久しぶりに会いますが、お変わりない様で何よりです。


 妹が好きすぎて、玄関先で「婿養子でもいいから結婚してくれ!」と、土下座をした元公爵令息です。

 今でも夫婦仲はとても良好。

 むしろ、その暑苦しさが年々増してきていると噂で聞きましたわね。


「義姉上、お帰りになるなら先触れを出されてください!」


 この義弟、私が王妃になろうと、態度が昔と全然変わりません。

 急に帰宅した事を、いきなり叱られました。

 まぁ、此方としては気を使われない方が楽ですから良いのですが。


 ………流石は、元王弟殿下の子息。

 普通なら、絶対こんな事は言えませんわ。


 そう、この義弟の父君は、前国王陛下の弟君なのです。

 つまり、アニキスは、アズラエル様の従兄弟と言う事です。


「アニキス、そう怒らないで。悪いとは思っていますよ?でも、私いてもたってもいられなかったんですもの。だから、外交が済んで、直ぐに此方に参りましたの」


 そう、昨日まで友好国との外交で、私は城から出られない状態でした。

 ですから、お客様が帰国された翌日の今日、時間を無理やり作って里帰りしたのです。


 先触れは……確かにしなかった私が悪いとは思っていますが、早くしないと今度はお父様が隣国に行かれてしまうのですもの。

 明後日には、隣国にお母様とご旅行と聞きましたわ。


「はぁ……で?何用で里帰りを?フローラや子供達に会いに来た……と言う訳でもなさそうですし、何かお話しがあるのでは?」

「流石はアニキス。とりあえず、ここでは何ですから、中に入れてくださらない?そろそろ大丈夫でしょ?」


 急に来ましたが、そろそろ接客の用意も済んだ頃でしょ?アニキス。


 ニッコリと笑う私に、アニキスはやれやれと、苦笑しました。


 アニキスは、私と少し立ち話をして、その間を使って侍女達に接客の用意をさせていたみたいですね。

 迅速な対応に、よく回る頭。

 王家の血を持つ者って、何でこんなに小憎たらしいのかしら。

 アズラエル様もそうですが、アシェリーも総じて同じように頭の回転が速いです。

 普段はヘタレ気味なくせに、実は…な感じが本当にもぅ…逆に笑えますわ。


 私達は、玄関ホールを抜け、そのまま応接室に向かいました。


 そういえば、妹のフローラが見当たりませんね。


「そうそう、フローラは、侍女のターニャとラミエルと一緒に街へ買い物です」

「そう、まぁいいわ。仕方ないもの……先触れ無しで来てしまったし」

「えぇ、全くです!」


 あぁ、その呆れ顔……アズラエル様そっくりね。

 何だがアズラエル様に叱られているみたいだわ。


 応接室に通されると、ソファーに着席。

 フィオラの侍女が紅茶を用意してくれました。


「ありがとう。フィオラはまだ学園かしら」

「はい、お嬢様はまだお帰りになられておりません」


 まぁ、当事者になるフィオラにも話した方がいいとは思うけど。

 アズラエル様が変なやる気を出されてらっしゃるから、まだ言う事が出来ないのよね。


 さてどう切り出しましょうか……。


 と、考えを巡らせたその時。


 勢いよく応接室の扉が開かれましたわ。

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