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プロローグ

 晴れの日…だと言うのに、気分が冴えないわ。


「……はぁ」


 私は持っていたグラスを軽く回し、少なくなった中の果実酒を溜息混じりで見つめた。

 含まれていた炭酸はすでに抜け、気泡すら無い。


「クスッ……まるで、今の私ね」


 現在、この場所には国中から集まった貴族に加え、友好国からも要人が多数。

 王城の大広間と言う空間の中、今日と言う晴れの日を祝う賛辞が飛び交いつつ、腹の探り合いが至る所で行われております。


 なんだが……本当に面倒くさい。


 この国、アリストラ国の侯爵令嬢である私、フィオラ・ドロッセルは、現在目立たないよう、壁の花に徹している最中です。


 今日は、朝から気合いが入りまくりの侍女を宥め、なるべく派手でないドレスを選んだ。

 髪型もハーフアップにし、落ち着いた感じにしてもらった。


 ただでさえ、面倒な事になりそうなのに、これ以上目立ってなるものですか!


 今日はこの国の建国記念日。


 動乱の世が収まり、レモンド・アリストラ様が初代国王として、自身の盟友達と更地から建国した我が国。

 今日は、その千年目を迎えた記念すべき日。

 この大陸において、この国は二番目に古い。

 その国土は、最古の国である大陸一の国力を有するイリア帝国の次に大きい。


 ……そして、それに比例して、同盟国や友好国はかなり多いのだけど。

 何が友好国かしら?

 腹の中では何を考えているのか…。本当に、狸の化かし合いね。


「あら?」


 そんな魑魅魍魎が渦巻く会場ですが、流れていた音楽がピタリと止みました。

 そして、広間奥の壇上脇に立つ宰相閣下。


「国王両陛下ご入場でごさいます!」


 宰相閣下自らお言葉にされ、陛下と王妃様がご入場なさいました。

 その瞬間、この国の各貴族は一斉に頭を下げます。

 無論、私もです。


「皆、よく集まってくれた。今日は心ゆくまで楽しんでもらいたい!」


 ナイスミドルな陛下が、にこやかにご挨拶なさいました。

 そして、その視線が……。


 まずいですわね、猛禽類みたいですわ。

 此方を見るのだけは勘弁して頂きたいですわね。


 陛下は、柱の影に隠れるように立っていた私に視線を向けるなり、猛禽類のごとき目力で凝視されました。


 そして。


「フィオラ嬢、此方に」


 せっかく隠れておりましたのに!壇上からここまで何メールあるとお思いですの!

 陛下の視力は鷹並みですか⁉︎

 あぁ、王妃様まで。

 その慈愛に満ちた笑顔はおやめくださいませ!


「今日は、フィオラ・ドロッセル侯爵令嬢、そなたに話がある」


 陛下のそのお言葉に、会場内がシンッと静まりました。

 皆興味津々で私に視線を向けられています。

 その中を内心舌打ちをしながら陛下の御前に向かいました。


「陛下、フィオラ・ドロッセル参上致しました」


 皮肉を込めた満面の笑みの私と、腹黒さ全開の陛下の笑顔。

 まぁ、私達の笑顔の意味を理解なさっているのは、王妃様と、今日一緒に来ていた私の父と兄、後は………両陛下の側で冷や汗を流しまくりの「王太子殿下」だけですわね。


「本日はよく参った。さて、今日と言う晴れの日に合わせ、そなたに申す事があってな」


(あら陛下、今から「何」を言われるおつもりですか?)

(さぁ?なんだろうねぇ笑)


 お互いの笑顔の下では見えない火花が散っております。

 不敬?そんな言葉、今はゴミ箱にポイですわ!


「フィオラよ」

「はい」


 私の返事に、陛下はニヤリと口角を上げられました。


「王太子である我が息子、アシェリーと婚約してはもらえないかな?」

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