4. モテ期なの?
「アントン騎士団長さんはこの街でとても人気があるんですよ。ご存じでした?」
「そうなのか。知らなかったよ。」
「今も遠巻きにお姉さん方が熱い視線を送っていますよ。ほら……。」
さりげなく周囲を見渡すと、アントン騎士団長さんの方を見つめるお姉さんたちが多くいるのが分かる。
中には男性で憧れの視線を送っている人もいる。
「まあ、騎士というだけで人気があるんだろう。騎士服というのもかっこよく見えるらしいからね。それに、いくら周囲から見られていても本当に見てほしい女性に見てもらえなければ意味がないことだ。」
謙遜するアントン騎士団長さんは、本当に見た目だけでなく性格も良いのだと感心した。
イケメンはやはりイケメンだった。
「アントン騎士団長さんは意中の女性がいらっしゃるということですね?そしてとても信じられないことに片想いだと……。」
「そうだね。その通りだよ。」
思わずといった感じでハハッと笑う騎士団長さんは、少し困ったように眉を下げていた。
「ソフィア、君のことだよ。」
………………え?
「私、ですか?」
思わず自分を指差して、目を見開き口をぽかんと開けるブサイクな表情になってしまったのは仕方あるまい。
「そう、私が自分を見て欲しい相手はソフィアだよ。君の明るさと一人ひとりに合わせて気遣いのできる優しさに、私も部下たちも日々の疲れを癒されている。できれば私だけに優しくしてもらえればと思ったこともあるけどね。年甲斐もなく年下の君のことを好いているんだ。」
金髪がキラキラと日光に反射して、眩しい笑顔を浮かべたアントン騎士団長さんがこちらを見つめながら、まるで天気の話をするみたいに自然に愛の告白などするから私は思わず頷きそうになって、そこは何とか押し留めた。
「え……っと……。驚きました。」
「そうだろうね。私は結構アピールしていたつもりだったんだが、ソフィアは全く気づく素振りも見せないし、私のことはただの客の一人だと思われていることは分かっていたことだ。」
「すみません……。」
ゆっくりと歩みを止めずに話す内容にしては、私にとっては割と頭がついていかないほどの情報量で混乱していた。
「先日、幼馴染の彼を見た時に彼のソフィアを見つめる目はきっと私と同じだと思ったから。先を越されないように牽制するなど、私も大人らしくないな。」
「そんなことは……。」
「ソフィア、返事は急がないからゆっくり考えておいて。それに、君の気持ちがきちんと分かるまでは今まで通り接して欲しい。ただ、もし私を選んでくれたなら君のこと私がずっと守ると誓うよ。」
君を守るという言葉は、騎士団長であるアントンさんが言うとこんなにドキドキするものなんだと実感したけれど、これが恋かどうかなんて分からない。
だって今日の今日までアントン騎士団長さんの気持ちなんか知らなかったし、頭がついていけてない。
「ソフィア、着いたよ。」
ぼーっとしている間に、いつの間にか店の前に着いていてアントン騎士団長さんが荷物をそっと手渡してくれた。
「どうもありがとうございました!また来ていただいた時にはサービスしますから。お仕事お疲れのところごめんなさい。」
「鍛えているからね。このくらいは大丈夫だ。では、また食べに来るから、美味しい料理期待しているよ。」
ヒラヒラと手を振りながら歩いていくアントン騎士団長さんを見送って、いつの間にか入っていた肩の力をホッと抜いた。