19. 悩みは解決しました
最近騎士団の皆さんも、アントン騎士団長さんも店に来る頻度が減った。
連日のように『名もなき義賊』のことが街では話題になっていて、悪徳貴族の船を襲っては貧しい人々を救っていると市井の人々の間では人気になっているほどだ。
「ソフィア……。いいか?」
「トーマス!うん、裏口回るね。」
あれからトーマスは配達に来なくなり、トーマスのお父さんが来ていたけど今日は久しぶりにトーマスが配達に来たから、急いで裏口へと向かった。
「トーマス!久しぶり。」
「ああ。なんか悪かったな……。お前は悪くないのにさ。」
「ううん。私こそ、我儘言ってごめんね。」
また涙が零れそうになって、急いで上を向いた。
「俺さ、考えたんだけど。お前に怒るのは筋違いだし、これは俺の気持ちの問題だからお前は悪くないし。だからさ、今まで通りこれからも幼馴染でいてくれよな。」
「トーマス……。ありがと。ごめんね。」
「謝るなよ!ソフィアは悪くない。だからこれからも笑って冗談言い合おうぜ。」
トーマスが私の肩をポンっと叩いて笑った。
「ありがとう。」
私の大事な幼馴染は、私よりずっと成長してるように見えて眩しく感じたけど……それは恥ずかしくて言えなかった。
ずっと鉛のように心の底の方で重かった気持ちが軽くなって、また仕事に精を出した。
「よう、ソフィア。麦酒とマトンのパイ、それと普通の讃岐うどんを頼むな。」
「ロルフ船長。いらっしゃいませ。今日は一人ですか?」
「まあな。それよりお前泣いてたのか?目が赤いぞ。」
「ちょっとゴミが入って痛かったんです。注文の品、少しお待ちくださいね。」
なんだかいつもロルフ船長が鋭いのは、大人だからかな?
「いらっしゃいませ!あ、フィリップさん。」
「ソフィア嬢、こんばんは。この街に用事があったからまだゾヤを持って来たよ。」
「ありがとうございます。」
フィリップさんはあれから何度かゾヤと小麦粉を馬車に乗せて持ってきてくれた。
ついでだからと言ってくれたけど、申し訳なくて品代を上乗せしたけど正規の品代しか受け取ってくれなくて、結局店に来た時には讃岐うどんをご馳走すると言うことで話がついた。
「讃岐うどん、種類が色々増えたんだね。かけ、わかめ、きつね、ぶっかけ?あと天ぷら?」
「はい。フィリップさんのところの小麦粉でうどんは作ってるんですが、以前から買ってた小麦粉も余ってたので天ぷらに使ってるんです。」
「天ぷらってどんなものなのかな?どれでもいいからおすすめをきつねうどんと貰える?」
「はい!お待ちください。」
そう、あれから醤油がうまくできて讃岐うどんのメニューも増やしてみた。
天ぷらに使っているのは以前から使っていた薄力粉で、フィリップさんのところの中力粉はうどんだけに使っている。
「はい、お待たせしました。きつねうどんと野菜の天ぷら盛り合わせです。」
「天ぷらってこういうものなんだね。本当にソフィア嬢は不思議な人だよね。こんな料理見たことないよ。」
「たまたま異国の料理を食べる機会があって……。」
「それにすごく美味しいね。醤油が出来上がってから最初の讃岐うどんより随分と味が変わったよ。最初も美味しいと思ったけど、今のと比べたら全く違うね。」
お客さんたちも、新しい讃岐うどんを求めて国外からも人が来るくらいこのフォンドールは人気店になった。




