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17. 悩みがあるのは仕方ない


 ピンク色のジュースを買って来てくれたトーマスはさっきの出来事には気づいてなくて。

 すごい人混みだから見えなかったみたい。


「良かった……。」

「何だよ?何が良かったんだ?」

「いや、何でもない!」


 何となく後ろめたい気持ちになって、それでもトーマスは今日はいつもより優しくて、その後のお祭りも楽しめた。


「じゃあ、騎士団の詰所に差し入れ行かないといけないから。またね。今日は久しぶりだったから楽しかったね!」

「……そうだな。ソフィア、俺待つって言った限りは待とうと思ったけどさ。それでも結構キツイ時ある。」

「え?」

「お前が騎士団長とか最近は漁師とか他の客と仲良くしてるの見かけるからさ。そうなると焦ってくるんだよな。」

「まあ、お客さんだからね。」


 ちょっと雰囲気が変わったから誤魔化すような言い方をしてしまった。


「俺のこと、やっぱ幼馴染以上には見れないのか?」

「トーマス……。」

「少しも希望はないのか?」

「……恋なんかしたことないから分かんないよ。」


 トーマスが少し大人びて見えて、いつものトーマスじゃない気がして。

 この幼馴染との関係が変わってしまうのが、急に怖くなった。


「私、トーマスとはこれからも幼馴染でいたいの。今まで通りに軽口叩いて、仲良くしたい。無理なの?」

「……。」


 震える拳を握ったトーマスは何も言わなかった。


「ごめんね、今日は本当にありがとう。」


 そう言って店の前で黙ったままのトーマスと別れた。




「はぁー……。」


 ついため息が出るのは仕方ない。

 トーマスに告白されてからも、普通に友達のように接してきたし、やっぱり私はトーマスには幼馴染でいてほしい。


「傷つけるくらいならもっと早く返事すれば良かったのかな。」


 でもすぐに返事はいらないって言ったのはトーマスだし。

 どうするのが正解だったのか今となっては分からない。



 結局、気持ちの沈んだまま騎士団の詰所にクッキーとフィッシュ&チップスを差し入れに行った。


「皆さんお疲れ様です。これ、差し入れなので良かったらどうぞ。」

「わー。ありがとう!ソフィアちゃんもお祭り見て回ったの?」

「はい。変わったお店がたくさんで楽しかったです。」

「そうなんだ!気をつけて帰ってね!」


 詰所にいた騎士さんたちに差し入れを渡して、やっぱりアントン騎士団長さんは居なかったから多分忙しくしてるんだろうと思って通りを歩いていたら声をかけられた。


「ソフィア?差し入れしてくれたの?」

「アントン騎士団長さん。お疲れ様です。差し入れ詰所に預けてますから、また良かったら食べてくださいね。」

 アントン騎士団長さんが一人で詰所の方角へと歩いて来ていた。


「元気ないね?なにか困りごと?良かったら話してみて。」

「いえ、大丈夫です。アントン騎士団長さんお仕事中だし。ありがとうございます。」

「今ちょうど休憩中だから。ほら、あっちのベンチで話してみて。」


 アントン騎士団長さんの流石の巧みな誘導に乗ってしまい、ベンチまで来てしまった。



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