15. 売り上げに貢献
店の扉が開いて、そちらに目をやると先日小麦畑というかゾヤ畑で出会ったフィリップさんがキョロキョロと周りを見渡していた。
「いらっしゃいませ!フィリップさん!」
「ソフィア嬢!」
ソフィア嬢だなんて呼ばれたことないから、カーっと顔が熱くなった。
「フィリップさん、こちらのお席へどうぞ。」
「ありがとう。」
フィリップさんを一人掛けの席に誘導して、メニューを説明した。
「ソフィア嬢のお店に是非来てみたくなってね。それで、讃岐うどんとやらをいただけるかな?」
「ありがとうございます。すぐにお持ちしますね!」
またソフィア嬢なんて呼ぶから今度は少しだけ頬が熱くなったけど、パタパタと手で仰いで誤魔化した。
周りに気づかれていないかなとさりげなく見渡すと、アントン騎士団長さんとロルフ船長がこちらをジッと見ていて、赤くなった顔を見られたと思うと恥ずかしくなって急いで厨房へと向かった。
「フィリップさん、これが讃岐うどんです。まだ醤油はできていないのですが、フィリップさんの畑の小麦粉を使っています。」
フィリップさんはまだ箸は使えないだろうから、フォークをつけて出した。
「へえ……。これは初めて見る料理だな。いただくとしよう。」
「……どうですか?」
「これは初めての味だね!小麦の風味も残っているし、この魚の風味もまろやかでとても美味しい。」
「良かった!フィリップさんの小麦粉のおかげで以前よりもっと美味しくできたんです。これからもよろしくお願いします。また追加の大豆も買いに行きますね。」
フィリップさんの小麦粉のおかげでとても麺が美味しくなったから、すごく感謝していて。
「ソフィア嬢、また大豆が必要ならば近々私がこの店に持って来よう。」
「そんな、悪いです。」
「いや、どうせこの街に用事があるからついでだ。今日は美味しいものをありがとう。」
フィリップさんが微笑むと精悍な顔立ちが緩んで、その時周囲のお姉さん方からため息が漏れた。
この店もイケメンが揃って大変なことになりそうだけど、正直……店的には助かる!
「ソフィアちゃーん!麦酒三つお願い!」
「はーい!」
閉店後に両親に聞いたら、最近の売り上げは以前の倍近くなっていると言う。
それは讃岐うどんだけの力ではないと思った。




