14. もうすぐメニューが増やせるのかな
ゾヤを持ち帰って、早速醤油作りを始めた。
作り方は前世のおばあちゃんが知っていたから良かったけれど、大豆がなかったらどうしようかと心配してたからフィリップさんの畑で見つけた時はすごく嬉しかった。
醤油は出来上がりまで時間がかかるから、すぐには使えないけれど、これからのことを想像するととても楽しみだった。
しばらくはこの新しい小麦粉でうどんを作って、醤油が出来上がったらまたメニューを色々増やしてもいいかも知れない。
「ソフィアー!お前明日のこと覚えてんのか?」
私が庭で鰹節を作っていると、トーマスが隣の窓から顔を覗かせて言った。
「覚えてるよ。午前中お祭りに行くんでしょ?」
「覚えてたのか!」
「あのね、そこまでボケてません。」
「明日、十時には迎えに行くから準備しとけよ。」
毎日色々としているうちに、はや明日は街のお祭りの日となった。
トーマスと午前中にお祭りを見に行って、午後は騎士団に差し入れを持って行こうと思っている。
「明日は楽しいけど、忙しい一日になりそうだね。」
明日の差し入れを考えながら鰹節を作ったら、すぐに夕方からの店が始まりまたお客さんがたくさん来てくれて忙しくなった。
「「いらっしゃいませ!」」
今日はアントン騎士団長さんは部下の方と来ていて、少し離れたところにロルフ船長と乗組員の方々がいた。
あれから二人が話すところを見てはいないけど、二人とも特に態度も変わりないし、気にしないでおくことにした。
「讃岐うどん、なんか前より麺がうまくなったな。」
「ロルフ船長、さすがです。小麦粉を変えたんですよ。よく分かりましたね!」
「そりゃあ毎日食いにきてるからな。ソフィアが一生懸命力入れてるメニューだし。」
「ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。」
ロルフ船長は、あれから毎日乗組員の方々を連れて食事に来てくれるけど、いつも讃岐うどんを注文してくれるようになった。
そういえば、箸もここの常連さんたちは皆上手に使えるようになって、店にも専用の箸をオーダーしてたくさん作ってもらった。
「本物のうどん屋さんらしくなってきた。」
仕事の合間なのにそれだけで嬉しくてニヤニヤしながら呟いてしまう。
「ソフィア、お前何ニヤニヤしてんだよ。」
「ロルフ船長、内緒です。」
「何だよそれ。」
「船長、女の子には秘密がつきもんっすよ!あんまり聞くとソフィアちゃんに嫌われちゃいますよー。」
「……ジャック、お前今日自腹だからな。」
「えー、ひどいっすよ!」
相変わらずロルフ船長と乗組員の会話はコントみたいで面白い。
ふふっと笑って仕事に戻った。




