☆3☆転校生はイケメン君(3)
「野球できる?」
いきなり隣から聞かれたのは、学校からの帰り道。
河原の近くを通っている時、いきなり言われた。
「はあ?」
「だから、野球できる?ルール知ってる?」
みんなは知らないと思うけど、あたしは結構男っぽいところがある。
野球が好き。オヤジみたいに、白熱して応援する。
「…知ってますけど…。」
「だからさ、敬語やめよーゼ!オレ苦手なんだよ〜。」
しばらくの沈黙…
「…で、ルール知ってるからなに?」
「お、いきなりだな〜。」
いきなりなのはそっちだろーが!
「まあいっか。じゃさ、野球やらね?ほれ、あっこで。」
岬が指さしたのは、野球のグラウンド。
「いいけど…て、え?二人で!?」
「なんだよ、悪いか?」
え〜〜〜〜〜…
コイツ、なんとも思わないわけ〜〜???
ふつう女子と、二人っきりで野球やるなんて言ったら、その、恥ずかしくないの?
「いくらなんでも、二人っきりで、あんた…はっ…!」
やばい…!
たたかれる…!!!!
「ぶっはははははは!!なんだそりゃっ!!あっはははは…!!!岬でいいってばっ!」
良かった…
ほっとした…
「じゃ、いくか!」
「えちょ、いきなりっ…!」
でも、二人でもいいと思った。
このときだけは、なぜか思えたんだ…
グラウンドには、人はいなかった。
「ほれっ!」
岬がグラブを投げた。
投げる力が強くて、こけそうになった。
「ははっ!バ〜カ!!」
何なのよコイツゥ〜〜〜!!!
意味不明だよ〜っ!!
「てん…み、岬が投げたんでしょっ!!」
「お、やっと言えるようになった?」
ん?
何がだよ、って顔をしたら、
「ははっ!おまえさ、ちゃんとオレのこと、『岬』とか、『岬君』とかって呼んでくれなかったじゃん。でも、さっきは読んでくれたからさっ!」
「…あっ、そうゆう意味ね。」
「まあ、いいや。んじゃ、まずはキャッチボールから。」
そう言って、どこからかとりだしたボールを、岬が投げた。
体に衝撃が走る。
「うっ…いったあ〜…」
尻もちをついた。
…すごい…
こんなに速くて、衝撃がある球を投げるなんて…
「ん?大ジョブかよっ!」
「…あたし…。」
「何だ?どーした??」
「いや、あたしさ…あん…岬にさ、驚かされてばっかだよ。」
「…は?」
「だって、見かけによらずヤンキーでさ、漫画読んでるの見えちゃったし。それにさ、掃除サボってたし。あたし、ヤンキーはスポーツとか好きじゃないと思ってたからさ。でも、すごいよ。岬は。天才的に速かった。…あたしの眼では。」
思ってたことがすらすら言える。
こんなに簡単だったなんて!!!
「…それはどうも。でもオレ…ヤンキー?に見えた?」
「ヤンキーってか、悪ガキ…?カナ。」
「なんだそりゃ!!オレはガキかよ。」
二人で笑った。大声出して。
あたしって、中身は、こんなに『やな奴」だったんだ!
でも、『やな奴』でもいいかもしれない。
そのほうが、幸せに生きられるかもしれない!
「やっぱりな…。」
「ん?なに?」
「お前の中身、全部わかった!」
…心をとみとった?まさか…。ね?
「お前、一見真面目そうだけど、あ、オレもはじめてみたとき思った。でもさ、お前って、意外と面白くて、はっちゃけてる?っていうのかな?なんつうか…うん、そんな感じ。」
「は?意味不〜!!でも、『ぱっと見真面目そう』ってのは、あんたも同じよ?」
「うん、お前、こっちのほうが好き!」
す…き?
あたしのこと?
いや違う…
岬は、「ちょっとはっちゃけてるほうがいい」って言ったんだ。
何なのよ、今日中。頭がずっとへん。
でも…岬。あたしは今日から変わるよ。
思いっきり、この夏を楽しむよ!!
勿論、あんたのそばで…