モテない男の逆恨み
俺はリヒター・ラクレット、何処にでもいるごく平凡な冒険者の一人である。
そして今、正に男としての一世一代の戦いの場に立っている所だ。
冒険者ギルドのカウンターまで足を運ぶ…目の前には当ギルドきっての可憐でスタイルも良く笑顔の絶えない美人な受付嬢が対応する。
「リヒター様ですね、どの依頼になさいますか?」
受付嬢は、いつもの様に笑顔で語りかける。
「いや、今日は依頼じゃないんだ。」
受付嬢はキョトンとした表情になる。
「俺と付き合って下さい!!」
その瞬間、「お断りします!」と少し苛立った返答をされた。
「え! 何で?」
「この際、ハッキリ言いますが昨日と同じ事してるじゃないですか!」
「何度、告白されても答えはノーです!
お仕事の邪魔するなら帰ってください!!」
その瞬間、周りの冒険者達から「あいつ良くやるなぁ」とか
「正に勇者だわ、悪い意味で」など嘲笑う声がギルド内に響き渡る。
恥ずかしさのあまり、ギルドから出て家に帰る。
「はぁ…」溜息がもれる。
「ん、リヒター今日の告白はどうだった?」
父親から、心配する様な声で語りかけられる。
「駄目だった…」
「そうか…、やはりな。」
父親は意味深な態度で呟く。
「父さん? もしかして俺がモテない理由を知っているのか?」
そう聞くと父親は重い口を開く。
「実はな、お前がモテないのは呪いのせいなのだ…」
「呪いだって!? 一体誰が?」
「無論、魔王だ!」
「魔王!?」
「一体何の為に、そんな事を?」
「分からんか? 実はお前は伝説の勇者の血筋なのだ!」
「な、何だって! そうか! そう言う事か!!
つまり魔王による究極の嫌がらせということか!!」
「己、魔王許すまじ!!」
このままでは、一生モテない人生を送る事が確定してしまった俺は呪いを解くべく家の扉を勢いよく開き、魔王討伐の旅へと出発する。
後ろからは、父親が何か大声で手を振りながら声援を送っているように見えた。
(やべぇ…冗談なのに、本気にさせちまった。)
と内心、父親の顔は青ざめるのだった。