第5話_スルマ
部下たちと話していてスルマは内心毒づいていた。総統はいまだにあのリノヤを仲間に引き込みたいらしい。今まで何回もやっていて失敗しているのにどうしてだろうか。前回の戦いで、そこまで強くないことも立証されているはずなのに。
そんな中で、シキセの声がした。その為振り返ると
何かが燃えていた。
悲鳴がそれはシキセであるということを示していた。そしてゆっくりと近づいて来る影は、シキセを燃やした犯人は今話していたリノヤに違いなかった。
「野郎……」
何故だ。何故リノヤが、向こうの奴が此処にいる。シキセが連れて来たのか。では何故。仲間に引き入れることに成功した。とは考えにくい。今彼女を燃やしたのは彼に違いない。
ならば彼女を仲間になるとだましていたのだろうか。それも考えにくい。その手を使うならば、これまで仲間にならないかと勧誘している時に乗る振りをすれば良かったはずだ。
実力だ。実力で彼女を上回ったのだ。以前にも何回か報告されたように、また何等かの方法で力を手に入れたのだ。そして彼女を脅してここへ連れてこさせたのだ。
「随分と余裕な顔してるな、おい」
ポキリポキリと音をさせながらリノヤを迎え撃つスルマ。
相手はシキセを倒して油断しているに違いない。その油断している間に、短期決戦をつけるつもりだった。
ふいに猛スピードでリノヤに向かって走り出すスルマ。そして敵を殴る。殴ろうと、した。
「なっ」
眼前の状況に、言葉を失うスルマ。殴りかかろうとした右腕の肘から先が、消えていた。
一瞬遅れて痛みが襲い掛かってきたが、こらえて相手との距離をとる。流れ出す大量の血が、切られたのだということを示していた。前回の戦いでも使用してきた鎌鼬か。だがあきらかに威力が違う。
「お前ら、おっぽまいてとっとと逃げろ!」
背後の部下たちに命令したのはとっさの判断だった。今の状態では到底守り切ってやることは出来ない。
後ろでまごついているのが分かるので、声を荒げる。
「何してんだてめえら、ぶん殴られてえのか!」
は、はいという震えた返事を残し彼らは去っていく。
安心する暇などなく、敵からの第二撃が襲い掛かってくる。今度は左足が切断された。そのままその場に倒れ伏す。
激痛に身を震えさせながらも敵を睨みつける。
「け、随分とやってくれるじゃねえか」
リノヤは何も答えない。ただ腕を振るい、残っていたスルマの左腕と右足をも切断する。
悲鳴をあげそうになるのをこらえて、スルマは続ける。
「何だよてめえ。ひと思いに首を切断すればいいじゃねえか。それとも何だ、ドSだったりするのか」
だが今の言葉は腹にすえかねたようだった。
「黙れ!」
激高した声とともに、今度は腹を攻撃される。図星だったのか、とさらに続けて皮肉をいってやりたかったが、声は出てくれなかった。
最後に首を切断され、スルマは絶命した。