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ワン・ヒーロー・ストーリー  作者: 砂道ルク
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第4話_シキセ

街の中。だがそこに人の姿はほとんどない。当然である。怪魔が闊歩しているので、街に住んでいた人々は急いで避難したからだ。

一方怪魔もそれを追いかけたりはしない。目的の人物は目の前にいるからだ。

「この前は随分手ひどくやられたってのに、堂々と出てきてくれたわね」

怪魔、シキセが目の前の人物に問いかける。

「ねえリノヤ」

 リノヤはその問いかけに何も答えない。ただゆっくりとコツコツ靴音を響かせながらシキセに近づいて来る。

 シキセはその姿を観察する。先日負わせたはずのケガは全て直っているようであった。ボロボロになっていたはずのボディスーツも綺麗に修繕されている。この前の敗北を全く感じさせない全快の姿であった。

 面白くないわね。内心でシキセは呟く。もっとトラウマにして怯えてくれていてもいいじゃない。

 見た目はこの前会った時と同じ。ということは、少なくとも外見上は以前と何も変わっていないということだ。自分たちに手ひどく敗北した時と。あの時は3人がかりでの戦いであったが、正直自分一人でも十分に倒せたというのが感想だった。もちろん姿が変わっていないだけで、以前のように何か能力を手に入れているかもしれないが、恐れるには値しないだろうとシキセは考えていた。


 いよいよ手を伸ばせば届く距離になる。今だ。奴に電撃を浴びせかけてやる。そう考えて手を振り上げた瞬間、リノヤの姿が消えた。

 戸惑ったが、考える暇はなかった。

 背後からリノヤが攻撃を仕掛けてきたからだ。電撃という攻撃を。

「嫌ああああああああ」

 シキセが悲鳴をあげてのたうち回る。あきらかに自分のそれよりも威力が高い攻撃だった。


 何なのよ。心のうちでシキセは問いかける。何なのよ一体あなたは。

 相手を、リノヤを仲間に引き込むということになり、本格的にリノヤのことを調べさせた。しかしリノヤについて分かることは何一つなかった。

 両親や友人を人質に取れればと思ったのだが、彼の周りにそれらしき人物が見当たらない。正体不明の存在、それがリノヤであった。

 そして今彼はまた新たな力を手にしている。そして身体能力も以前よりはるかに上がっている。彼はただの人間ではない。では一体彼は何なのか。


「あぐあああああぁああぁぁ」

リノヤからさらに電撃を浴びせかけられ、シキセは悶絶する。このままだと殺されるのは確実であった。

「お願い。お願いやめて」

 だからシキセはリノヤに縋りつく。

「命だけは取らないで。そうだわ。あなたを私たちのボスのところに、総統のところにつれていってあげる。あなたにとっても良い話でしょ。ねえ、だからお願い。殺さないで」

嘘ではなく、本心であった。総統ならばリノヤを簡単に倒して見せるはずだ。何なら直接説得してリノヤを仲間に引き入れて見せるかもしれない。とにかくこのまま殺されることを避けたかった。

「今の話、本当か」

 逆光でか、リノヤの顔がよく見えない。何を考えているのか分からない。だがそんなことはどうでもよいとシキセは頷く。

「本当、本当よ。あなた達人間にはなくて、わたし達に……怪魔って呼ばれてたわよね、にだけ使えるルートがあるの。あなたも通してあげるわ」

「連れていけ」

 再度、シキセは頷いた。


 「そこ」にシキセとリノヤは到着する。

「ここよ。この奥に我らが総統がいるわ」

 これで案内は終わり、とリノヤに声をかける。

「あそこに何人かいるわね。まあ気をつけて」

 怪魔の姿が何人かあった。そのうちひとりは同じ三幹部のスルマであった。

 ああ、スルマと駆け寄ろうとした瞬間だった。

 体が、燃えていた。

「あああああぁああああああぁぁあ」

 絶叫し、のたうち回るシキセ。リノヤに攻撃されたのだと考える余裕はなかった。絶叫とともに、シキセは燃え尽きた。


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