閑話_4もといエピローグ
「大丈夫ですか」
顔を覗き込まれているのは分かっていたが、それでもしばらくは嘔吐をやめることは出来なかった。
「まあ、お気になさらずに。ゆっくりと気のすむまでどうぞ。何しろアレは私から見ても酷かったですから」
しばらく続けてようやく一息ついたときに、ようやく聞くことが出来た。
「きみ、誰?」
彼女は名前をラワと言った。自分と同じくリノヤにやられたらしい彼女は背中をさすってくれた。
「とりあえずお疲れ様でした」
「なんというか、随分知っている様子だね。自分から見ても酷いって」
「はい。見れる場所があるんですよ。何なら案内しましょうか」
そう言うとラワは歩き出す。
「随分と落ち着いているね君は。自分も酷い目にあったんだろう」
「そういわれるとそうなんですけれどまあ過ぎたことですから」
「ボクが言うのもなんだけれど未練はないのかい。家族もいるだろうに」
「家族はねえ、両親が逝ってしまってるんでバカ兄貴だけだったんですけれどその兄もさっき来ましたから」
「ああ、そう。それは悪いこと聞いたね」
「大丈夫ですよ。お気になさらず」
くだらない話を続けながら歩き、そしてその場所につく。
「ね、ここから見れるし聞けるんですよ」
彼女の指した先にはリノヤがいた。リノヤはあの方と話している。そして……。
「はは、はは」
思わず笑ってしまう。
「なんというかバカだったんだなボクらは。結局、いや分かっていたけれども利用されてたんだ。そしてこの先も利用されて終わるんだ。畜生。畜生」
目の前がぼやける。どうやらこちらの世界でも涙は出るらしい。
「あのお」
おずおずととラワが話しかけてくる。
「その件なんですけれどね、そう簡単に進まないかもしれないんですよ」
は、と思わず聞き返す。彼女は先ほどの情景を見ていなかったんだろうか。
「セマカって知ってます。私より前にリノヤに挑んだ」
「知らないよ。大体そいつも君と同じ一般兵だろう。そいつがどうしたんだ」
「ええ、そうなんですけどね。生きてるんですよ、そいつ。」
こうやったら移す場所変えられるんですよ。といって彼女が操作をすると、確かに移されている現場は変わった。
一人の男が筋トレらしきことをしめているのが分かる。
「328、329、340……」
やられて、ぶっとばされたんですけどね、命だけは助かったみたいで。ラワが続ける。
「最初は倒されたくやしさからだったみたいなんですけどね。同期の私がやられたと知ってさらに気合が入ったみたいで。まあそれを言うと私の後にフィスがやられたのもあるんですけどね。とにかく仲間がやられたと知って気合が入って入って」
「それで?」
「絶賛修行中です」
溜息が口から出るのが分かる。
「それで?」
「いやあ、あいつ単純というか分かりやすいですからね。これからどうするか大体想像がつくといいますか」
「何するんだい」
「シャト様含む3幹部の皆様がやられてますます気合が入ると思うんですよね。そして絶対リノヤは倒すべきだと決意する。命令どうこう関係ない。単なるこれから同胞が打たれるのを防ぎたい、兼敵討ちという奴で」
横目でラワを見る。
「その為に仲間をつどうと思うんですよね。で、仲間を集めて皆で修業して。強くなって。あいつを倒そうとする」
「君はそれが出来ると思うのかい」
「どうでしょうね。どこまで友情パワーが通じるのかって奴ですけど」
彼女は微笑んでいる。
「でも、そっちの方が熱い展開だと思いません?」