第6話_シャト
シャトは一人、与えられた自室で恍惚の境地にいた。
「良かったなあ」
あのリノヤという男とした口づけ、そしてエネルギーの吸引。思い出すだけで心地が良い。ぜひとももう一度体験したかった。
「仲間になってほしい気もするけどならないでほしいなあ。ずっと敵対するの。そしてずっと……」
考えにひたっているとドアが開くのが分かった。部下が連絡で来たのかと思いそちらの方をみると
リノヤが、いた。
「やあ、何の用だい。」
体制としては戦闘の準備をし、警戒をしている風をとる。
「読んだ覚えはないんだけれど」
実際のところは嬉しかった。また彼と戦えるのではないかと。
「いよいよ仲間になってくれたのかな。その挨拶?」
また、痛めつけることはできるのではないかと。
「それとも、ひょっとしてはるばるやられに……」
最後まで言い終わるまえに、リノヤがこちらに向けてとびかかってくる。単純なまっすぐな攻撃。これを避けて彼に一撃を叩き込む。そしてまた口づけからの吸引を、するはずだった。
「あ、……かは」
リノヤの攻撃が深々と腹につきささっていた。口から消化しきれていなかった昼にした食事がもれだすのが分かる。
速い。あの時より、確実に。
その場に崩れ落ちる前に、右足を両手でつかまれた。
「なに、を」
問いかけるのとほぼ、同時だった。
足が、にぶい音を立てた。
「あぎゃあああああああ」
骨を折られたのだと理解する時間はなかった。その前に左足も同じようにおられる。激痛に意識を失いたかったが、それは鮮明だった。
リノヤはなにも言わずに、今度は右腕をつかんでくる。
「やめろ、やめろ、やめろお」
左手で必死で攻撃を加えたが、まるで効いていない。
そしてリノヤは右手の親指を握り、つぶした。
「うあああああああ」
息つく暇を与えずに、人差し指、中指と彼はつぶしていく。右手が終わると、今度は左手の指を一つ残らずつぶす。
「やめてよお。せめて一思いに……」
懇願し、涙ながらにかつては圧倒した敵の目を見る。
「ひっ」
そして悟る。
これだけですます気はないのだということを。
「何で……誰か……」
絶望の中、助けをこうシャトに答えるものはいなかった。
暗い部屋に、靴音だけが響く。
手から自分のものではない血を落としながら、リノヤは歩んでいた。敵を締め上げて、彼は進むべき道を知っていた。そして、そこに着く。
戦闘隊形をとる彼に、それは口を開いた。
「一先ず、話そうではないか」
「誰が話すか」
「リノヤ。身寄りはいない。いや、既に使ったというべきか」
リノヤは目を見開く。
「分かっている。分かっているのだぞ少年よ。お前が私と似た存在と、彼らと同じように契約をしたのだということは。そして代価も払ってきたのだということは」
それは続ける。
「どうなのだろうか。その目的は人を救うことか。それならば問題はない。私は人を滅ぼすきはない。私の目的は、俗にいう負のエネルギーだ。怪魔が人を殺し恐怖を与え、そして同じようにお前たちヒーローが怪魔を殺す。この関係こそが理想だった。私としてはぜひともこの関係を維持したい。どうだ、取引といかないか」
それは笑う。
「お前の目的はなんなのだろうか。人を救うことか。ヒーローとしてあがめられることか。それとも怪魔を痛めつけることか。最初のものでなければ、今の体制を続けた方がいいのではないか。どうだ、ここは一つ手を組まないか」
それは、手を伸ばす。そしてリノヤは