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翻弄される少女(38歳)

第五章最終話です。

※後書きは嘘だらけです

「ああ~、しんどいし~」


 アドリーは立ち上がった。

 丸太を腰部に喰らったが、幽壁でガードしていたので腰部にダメージは少ない。

 だが丸太での攻撃は想定外であり、吹き飛ばされた際に数か所打撲を負う。


「あ~あ。武器を作り出すルーンなのかと思ったが、まさか丸太とはねえ。

 大太刀でも投げてくるかと予想してたけど、外れちゃったし」


 アドリーは嗤いながら、倒れているインベントを見降ろす。



 インベント同様、アドリーも戦いの中でインベントを観察していた。


 インベントが丸太を奥の手として隠していたように、アドリーも奥の手を隠していた。


 一つは技の発動可能範囲の偽装。


 アドリーは地中の根を操作することができる。

 もちろん手を触れた場所で発動すれば、精度も威力も上がる。

 だが、四メートル程度離れた場所から発動することも可能だ。

 地中で根は繋がっているのだから。


 あえて手を触れた場所から技を発動し、発動可能範囲をインベントに勘違いさせた。

 そしてインベントが背後から迫るタイミングで、インベントよりも更に背後からナイフ状に加工した根を正確に心臓に刺したのだ。



 そして二つ目、それは――


(この子……幽圏ゆうけんは知らなかったみたいだしね)


 幽圏ゆうけん

 対象者の周囲数メートル以内を探知する能力。

 不意打ちを無効化する能力である。


 つまりロメロの幽結界かくりけっかいと同じ能力をアドリーは持っていたのだ。


 インベントは何度かアドリーの視覚的な死角を突いた。

 だがどうしても仕留めきれなかったのは、幽圏ゆうけんで接近するインベントを把握していたからである。


 逆に、アドリーはインベントが幽圏ゆうけんを使えるかどうかを観察していた。

 年齢を偽装しているのではないかと思うぐらい強いインベントが、幽圏ゆうけんを使える可能性は十分考えられたからだ。



(結局、この子は視覚に頼った回避だったしね。

 しっかし……二回も幽壁を使わされるなんて。はあ~さっさと帰るし)


 アドリーは幽力を消費しすぎていた。

 【ベオーク】のルーンが燃費が良くても、幽壁は燃費が非常に悪い。

 肉を切らして骨を断つならぬ、幽壁を切らして心臓を突いたアドリー。


 早急に休息が必要なのだ。



 アドリーは再度、ピクリとも動かないインベントを見た後、この場を立ち去ろうとした。

 だが――



 カーンと高音が森の中に響いた。

 振り向いたアドリーは驚愕する。


 一人の小柄な男が、岩の上に立っている。


 髪は全て白髪で顔の皺は深い。一見すれば60代に見えるが異常に眼光が鋭く、肉体は若々しい。

 何かしらの武芸に精通しているであろう凛としたたたずまい。

 そしてイング王国では見ない、甚平のような紺色の着物と、一本歯の下駄を履いている。

 それも一本歯の高さは20センチあり、立っているのさえ難しい下駄を履いている。


 アドリーは「クラマ……」と呟いた。

 小柄な男は「ほう」と言う。


「こんなところに人形のようなガキがいるとはのう。

 それにワシのことを知っとるようじゃのう?」


「……クラマ・ハイテングウは超有名人だ」


 アドリーは幼女のフリをせず、憎しみたっぷりな口調で話し出す。


「ふ~ん、で、おまえさんこんな場所で何しとる?」


「言わねえし。それよりもどうしてここに?」


「答えないくせに質問はするんじゃのう。悪い子じゃ。

 黒い煙が上がってたからのう。急いで飛んできたわい」


 アドリーは「煙? そういうことか」と呟く。


 先刻、インベントが焔手裏剣でアドリーが創った茂みを燃やした。

 燃え広がらないようにしたものの、燃え尽きるまでかなり時間がかかったのだ。

 意図せずクラマを呼ぶ狼煙のろしとなったのだ。


「未開の場所から黒煙が上がれば、何かあったと思うのは普通じゃろう?」


「ハッ! 普通は見えねえし!」


「ま、ワシは『星天狗ほしてんぐ』じゃからのう。

 ……で、色々聞きたいことはあるが、そこの少年はお前が殺したのか?」


 地に伏せるインベントと、インベントを刺したであろう地面に突き出した根に目を向けるクラマ。


「ヒヒッヒッヒ、やっぱりお前の知り合いか?」


「いや知らん」


「本当か~? 空を飛べるやつなんてお前の弟子か何かと思ったし」


「……空を飛ぶじゃと?」


「なんだ、本当に知らないのか」


「ふ~む……ソイツがそうなのか……ふ~む……困ったのう」


 ポリポリと頭を掻くクラマ。

 だが――


「ま、死んじまったものはしゃーないのう。

 そんなことより――お前だ」


 射貫くような眼光にアドリーはびくりとした。


「オセラシアとルーンの間で暗躍しとるのはお前だな?」


「さあね~知らないし~」


「中々尻尾を掴ませんからのう。本当に困っておったんじゃ。

 や~っと見つけたぞ」


「ちっ。何も答えてやらねえし」


 アドリーは地中から剣を創り出した。

 木剣だが、人を殺せる切れ味を持つ剣だ。

 だが戦うためではない。自分を殺すための剣。


 アドリーは嗤う。


「本当はお前みたいなクズ野郎、追い込んで追い込んで殺したかったし。

 でもまあ無理だし。もう幽力が無いし。あのガキのせいで人生計画が狂ったし……」


「悪いようにはせん。早まるな」


「うるせえし。お前に情けをかけられるぐらいなら死んだ方がマシだし」


「ふ~む……なんでそんなに嫌われとるんかのう」


「ヒッヒッヒ、死ぬ前に教えてやるよ。

 私の名前は――――」


 そう言いかけたその時――


「ぐあ……あ」


 インベントが呻き声をあげた。


 クラマは驚いた。

 だがそれ以上にアドリーが驚いた。


「ば、馬鹿な」


 インベントは死んだはずなのだ。

 心臓を刺してから五分近く経過している。


(ありえない。心臓を突き刺したんだぞ?

 幽壁? 馬鹿な。背後から刺したんだ。発動できるわけが無いし。

 それに刺した根にはべっとりと血がついているし。ど、どういうことだ?)


 クラマはすぐにインベントの元に駆け寄った。


「おい、小僧。聞こえるか?」


 呼んでもインベントは反応しない。

 だが生きている。


「衣服の上から刺されたとはいえ……心臓を貫かれとるのう……。

 この小僧……なんでまだ生きとるんじゃ?」


 この場にいる誰もインベントが生きている理由がわからない。

 だがインベントは生きているのだ。

 生きているのならば――助かる可能性があるのならば――


(助けるしか……ないのう。それも一分一秒を争うかもしれん。

 もう手遅れかもしれんがの)



 クラマはとにかく傷口を布で押さえた。

 少しでも出血を防ぐために。


 そんな様子を見ているアドリー。

 少し前までは自ら死ぬ覚悟していたアドリーだが――


「ヒーッヒッヒッヒ! ハッハア! こりゃあ傑作だ!」


 睨みつけるクラマ。


「まさかまだ生きてるとはねえ。変な奴だったし、計画ぶち壊しだし、翻弄されちまったけどさあ!

 まさかまさか、殺しても死なないとは思わないしー! ヒーッヒッヒ!」


 アドリーは最後の力を振り絞り、自身の両脇から木を生やした。

 クラマは「【ベオーク】か……それも」と呟く。


「やっぱり死ぬのはやめるし!

 さあ~! 戦おうじゃないか! クラマ! クラマ・ハイテングウ!!

 私はしぶといよ~! 何分かかるかな~!? その間に~その子は死ぬかな~?」


 クラマは黙ってインベントに応急処置を施す。

 そして背負う。


「ヒッヒッヒ! いいのかい? もう二度と私たちの尻尾は掴めないかもしれないよ!?

 でもその子放っておけないよねえ! 大変だし~! 正義の味方は大変だしー!」


 煽るアドリー。


「ハア」


 クラマは着物の袖。アドリーからは見えない場所から、幽力の弾を飛ばす。

 弾は袖を貫き、アドリーを襲う。


 だがアドリーは木を操作し防いだ。


「ヒッヒッヒ! ムダムダ! アンタのことはよーく知ってるのさ!

 戦い方も! 考え方もね!」


「――必ず。潰してやるからのう」


「やってみな。ペテン師」


 クラマはこの場所を去ろうとする。


「おっと最後に、私の名前を教えてやるし」


 クラマは黙っている。


「私は、アドリー。

 アドリー・()()()()()


 『ルルーリア』を強調しアドリーは言い放った。



 その後、すぐにクラマは飛び立った。

 インベントを抱え、大空に舞い上がったのだ。

『第五章 翻弄される少女』終わりです。

翻弄されたのはまだまだピチピチのアイナちゃんと、38歳ロリータのアドリーちゃんでした。


五章はインベントが落ち込んだり、ジョブチェンジしたりで停滞気味でした。

打って変わって六章では、チートスキル『死に戻り』を会得したインベントがニュータイプとして覚醒していきます!

更にスケベな五つ子のヒロインが登場し、ハーレム展開突入です。


またロメロから高額な慰謝料を得たインベントは、全ての問題を『お金』で解決していきます。


六章のテーマは『金』です!


今後の展開が気になる方はブックマークと評価をお願いいたします。

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毎日投稿がんばってますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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