フラウの恋模様① 無表情に生足を見続ける主人公
「ハア……一回だけだぞ」
「はーいっす!」
ロメロとの模擬戦。
フラウにとって模擬戦は待ちに待ったデートの時間だ。
デートといってもお昼休憩中なので、インベントとアイナが観戦しているが。
(見てろっすよ~! あんなチビッコ隊長なんかに負けないっすからね!)
アイナは身長152センチでどことは言わないがぺったんこ。
アイナに比べフラウはムチムチしている。
特にかなり発達した太ももは、好きな人は好きであろう。
まあどうでもいいのだが。
「行くっす!」
「はいはい」
フラウは剣を構えた。
対するロメロは木剣を構える。
フラウは一気に距離を詰める。
フラウのルーンは【馬】と【猛牛】。
ともに身体能力を向上させるルーンであり、【馬】は特に脚力を強化する。
そして肉体的な鍛錬も怠っていないフラウのスピードはノルドに匹敵する。
ノルドがしなやかな速さだとすれば、フラウは豪快な速さと言っていいだろう。
思わずアイナが「速っや」と呟く。
「ハアア!!」
思い切り振るう剣からは、風圧がインベントたちにまで届きそうな攻撃だ。
だがロメロは押し負けない。
単純なパワーではフラウが上だが、剣に力を伝える技術はいくらでもある。
「オラ! オラ! オラア!!」
普段は温厚なフラウだが、戦闘時は感情をモロに出して戦う。
振った剣が折れそうなほどに暴力的な攻撃。
インベントは「うわ~怖いな~」と驚いている。
だがアイナは――
(なんだ……この子?)
なんとも言えない違和感を覚えるアイナ。
模擬戦は続く。
フラウの暴力的な攻撃を、つまらなそうに受け止めるロメロ。
一分ほど経過した後、ロメロは落胆の溜息を吐いた。
そして――
「オッ! おっ!?」
フラウの斬撃に対し、一歩前進し攻撃の初動の段階で止めた。
一気に窮屈さを感じるフラウ。
一歩後退し間合いをつくり、再度踏み込んでからの一撃。
それに対し、まるで全ての動きが見えているような行動をとるロメロ。
スタスタと二歩進む。
「ぐ!?」
フラウは剣を振る前に再度後退した。
ロメロはフラウが攻撃することができない場所に動いたのだ。
なぜそんなことができるのかフラウにはわからない。
「ハア。やめだやめだ」
「え?」
「今のお前はつまらん。馬鹿なことはやめてちゃんとしろ」
ロメロの心無い発言。
恋するフラウは撃沈した。
久しぶりのデートでお気に入りの服装を強烈に否定されてしまったような気分のフラウ。
そんなときインベントが「ああ、なるほどお」と呟いた。
インベントはロメロがつまらないと思う理由に気付いたのだ。
「ほほう。インベント何か気付いたのか?」
「あ~まあ~大したことじゃないですけど」
「そうかそうか。インベントも今のフラウはつまらんと思うだろ?」
フラウは苦い顔でインベントを見た。
フラウからすればインベントに「つまらない」なんて言われる筋合いはない。
だがインベントは正直者なのだ。
「そうですね。つまんないですね」
「あ、アンタなんかに言われたくないっす!!」
フラウが怒るのは当然である。
「ははは、フラウ。今のお前だったらインベントにも負けちゃうぞ」
「……それは聞き捨てならないっす」
「だったらやってみろよ。インベント、木剣持ってるだろ」
インベントはめんどくさそうな顔をした。
「持ってますけど……俺はやりたくないですよ」
「まあそういうな。たまには俺以外とも対人戦したいだろ?」
「いえまったく」
「はっはっは、まあまあ一回だけだ」
ロメロは押しが強い。
一度決めたら基本的には押し通してくる。
「はあ~気乗りしないけど……まあいっか」
そう言ってインベントは木剣を二本出した。
(あ……あれを試してみるかな~)
インベントは試作中の技を試してみることにした。
フラウは格好の相手だからだ。
一本の木剣をフラウに渡し、インベントは構えた。
対するフラウは柄が変形するぐらい木剣を握りしめた。
「ロメロチャレンジみたいに、どんな武器を使ってもいいっすよ!」
フラウは数回ロメロチャレンジを見ているし、インベントの戦い方も見ている。
インベントにとって武器交換や空間抜刀は十八番の一つだと知っている。
「あ、使わないですよ。木剣だけでいいです」
インベントは新技の実験をしたいので木剣だけでよいと言った。
だがフラウからすれば――
(わ、私には本気を出すまでも無いってことっすかああーー!?
ぶ、ぶっ殺すっす!!)
ナチュラルに煽るインベント。
「それじゃあ始め」
ロメロの合図とともにフラウは一気に間合いを詰める。
そして斬撃を繰り出した。
「うひゃあ!」
フラウの豪快な斬撃に驚くインベント。
だが妙に簡単に避けた。
そしてじぃ~っとフラウの下半身を見つめている。
ちょっとキモイ。
そして「ふむふむ」とおっさんみたいなリアクションをするインベント。
「余裕っすか!?」
フラウは連撃でインベントを追い詰める。
インベントは華麗に避けて、反発移動で距離をとった。
そして再度下半身を観察するインベント。
そんな様子をみてアイナは――
(なんか目つきが気持ち悪いな……無表情で足ばっか見てねえか?
それより……あいつあんなに回避巧かったか? いつもみたいにギュンギュン動いてねえし)
インベント覚醒!?
そう思うぐらいインベントは簡単にフラウの攻撃を躱す。
まるで何度も戦ったことがあるかのように。
(うん……やっぱりそうだね。だったらこれで決まるかな)
インベントは左手に剣を持ち、右掌を上向きに開いた。
その様子はまるで――
(こ、『来いよ』ってことっすか!? 馬鹿にしやがってー!!)
まったく挑発する気は無いのだが、なぜかフラウを挑発することになってしまうインベント。
だが本人はいたって真面目だ。
(多分……これで大丈夫だ)
フラウは一気に間合いを詰める。
そして木剣を振りかぶる。
インベントは足を止め、フラウの動きに集中する。
(一歩……二歩……ここだ!!!)
フラウが木剣を振り下ろす直前、インベントから二メートル離れた場所をフラウは踏み抜いた。
いや踏み抜こうとした。
次の瞬間――
(せ、世界が傾いていくっす!?)
フラウは何が起こったか理解できなかった。
よもや自分が傾いているとは思えなかったのだ。
まるでこの世界が傾き、地面が持ち上がっていくような摩訶不思議な感覚。
そしてフラウの顔面に向かって地面が近寄ってきた。
インベントはただただその状況を見下ろしていた。
フラウが倒れていく様をじっくりと観察し、そして――
「うまくいった。よかったよかった」
そう言った。
インベントの勝ちは明らかな状態だ。
だが模擬戦の勝利なんてインベントにとってはどうでもいいことだ。
思った通りの結果が得られ、今後のモンスター狩りに活かせると思いニコニコしている。
惨めな気持ちで地面に伏せているフラウの気持ちなど知らずに。
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