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新しい女と飽きられた女

この物語はドロドロの不倫関係を描いたデスラブストーリーです。

「あ、そうだ二人とも。これをあげよう」


 ロメロはインベントとアイナに袋を手渡した。


 じゃらじゃら――


 アイナの好きな音がする。

 開けてびっくり、大量のお金が入っていた。


「あ、お金だ」


「う、うひょー! すげえ!」


「どれぐらい渡せばいいかわからないんだが、とりあえず渡しておこう。

 足りなくなったら言ってくれ」


 ロメロはお金持ちなのだ。だが使い道が無い。

 財布の紐はゆるゆるの足長おじさんロメロ。


 アイナは少しだけやる気がでた。


****


 フラウがモンスターを探知し、インベントがモンスターを殺しまくる。


 危険区域だがアイナとロメロは暇だ。さて――


『旦那』


「ん?」


『一応確認しときますけど。

 インベントを強くしたいのは、()()が楽しみたいからですよね?』


「……そんなことないぞ」


『まあいいや。せっかくお金も貰ったしちょっとは働きますかねえ。

 ちいと体動かすんで手伝ってくださいな』


 アイナは剣に手をかけた。

 つまりアイナが――――やる気を出した!?


「お、おお! いいぞいいぞ!」


『かる~く手合わせしてくださいな。かる~くですよ!』


「ああ!」


 アイナは剣を構えた。


(変態たちに触発されて、ちょっとだけやる気だしちゃうなんて……アタシも馬鹿だなあ)


「いつでもどうぞ」


『そいじゃあまあ』


 アイナは剣を抜いた。

 片刃、細身の剣。軽くしなるタイプの剣だ。


「ふふ、これが二回目だな」


 一度目はロメロチャレンジの際に、武器破壊を試そうと一度だけ剣を握った。


『まあ、あれはお遊びでしたけどねえ』


 アイナが前線にいたのは二年前だ。

 カイルーン森林警備隊から逃げて二年経過している。

 そして二年間だらけまくった。


(どこまで……体がもってくれるかな――っと!)


 強襲。

 そして喉を狙った突き。


 二年間のブランクがある動きではない。

 だがロメロはいとも簡単に払う。


 アイナも防がれるのは想定内。

 何度も何度もロメロの動きは見ている。

 殺すつもりでやっても殺せない男。


 払われた次の瞬間に、アイナはクルリと回転している。

 回避からスムーズに攻撃に繋げる、回転を加えた重い一撃。


 受け止めるロメロは、小柄なアイナからは想像もできない重い攻撃に頬が緩む。


「ほうほう! いいな! これが本来の動きかな? 面白い!」


 アイナは小柄で筋力も無い。

 ルーンも【アンスール】であり、戦闘の補助をするルーンではない。


 だが彼女は小柄な体型を活かしたフットワークと回転で攻撃の威力を増しているのだ。


『あ~! しんど!』


 ロメロは基本的に剛の剣である。

 それに対しアイナは剛と柔を組み合わせて戦うスタイルだ。


「いいな! 回転しているのに隙が無いぞ!? うははは!」


 回転すれば瞬間的とは言え相手を視界から外してしまう。

 だがアイナにとって回転は基本戦術である。

 何度も何度も練習した動きであり、回転で隙を与えたりはしない。


『だったらもう少し、体勢崩してもらえませんかねええ!!』


「あっはっは!」


 下段、中段、上段と回転を伴う三連撃を使った後――剣が手からすっぽ抜けた。

 そして座り込んだ。



「はあー! し、しんどお!」


「はっはっは、体力不足だなあ」


「まあ……まともに剣を振ったのは二年ぶりですしね」『かったるう』


**


 【嫉妬】

 自分の愛する者の愛情が他に向くのを恨み憎むこと。



 ロメロは楽しそうに剣を振っていた。


 アイナはサボりたい気持ちと、どうにかできるならばポンコツな自分を脱したいという秘めた思いがある。

 だからこそ全盛期――サボる前の二年前の動きを再現して剣を振った。


 ロメロとアイナは踊るように楽しそうに戦っている。

 少なくとも一人の少女の眼にはそう映った。


(ロ、ロメロさんが楽しそうにしてるっす……!!)


 フラウ・ファイテン。


 ロメロに憧れ、ロメロを目指して、ロメロを追いかけてきた少女。

 ロメロがとにかく大好き。


 だから「探知をしろ」と言われれば頑張って探知している健気な女の子。

 四六時中探知なんてしたくない。でもロメロが言うからやっているのだ。


 それなのに――


(私が頑張ってるのに……女の子と楽しそうに遊んでるっす!!)


 断じて遊んではいないのだが、ロメロにとってはアイナの戦い方は新鮮なのだ。

 ロメロにとってアイナとの戦いは、まるで新しい女の子と付き合い始めた時のように心躍る時間。


 昔、そのポジションにいたのはフラウだった。

 ロメロチャレンジに挑戦して見事クリアして『宵蛇よいばみ』に入隊したフラウ。


 ロメロチャレンジの最中はロメロはフラウに夢中だった。

 フラウの暴れるような攻撃と楽しく戯れるロメロ。

 フラウは体中にアザだらけになったが、嬉しかった。

 鋭い攻撃を繰り出せば繰り出すほど、嬉しそうに捌いて反撃してくるロメロの笑顔が大好きだった。


 傷つくたびに、アザが増えるたびに、フラウの心は熱くなった。

 端的に言えば、ドMなのだ。



 だが最近、ロメロが冷たい。

 インベントなんていう男の子に夢中なのだ。

 フラウが剣の稽古を申し込んでも、華麗にスルーされてしまう。

 あろうことか『宵蛇よいばみ』本隊から離れて分隊を作ってしまう始末。


 ロメロは飽きた女に餌をあげるようなタイプではない。

 新鮮で楽しい経験がしたいのだ。


 ロメロ・バトオ。

 罪作りな男である。



**


「ろ、ロメロ副隊長!!」


「んあ? どうしたフラウ?」


 プンスコしているフラウに首を傾げるロメロ。


「わ、私とも稽古して欲しいっす!!」


「ん? あ~また今度な」


「た、探知すれば私とも稽古してくれるって約束じゃないっすか!!」


「ん~、お、そうそう! 探知しないとだめじゃないか。インベントがひとりで戦ってるぞ」


「あの子大丈夫っすよ! すごい強いじゃないっすか」


「いやまあ……強いっちゃあ強いけど探知はしてあげないと危ないぞ?」


「だってだって! 私が頑張って探知してるのに!

 ふたりは楽しそうに遊んでるじゃないっすか!」


 へたり込んでいるアイナは「遊んでねえし……」と言うがフラウは聞いていない。


「私とも遊んで欲しいっす!!」


「わかったわかった。もう少しでお昼休みだろう?

 お昼休みに相手してやるよ」


「や、やったあ!」



 ロメロちゃんは遊びたい。(新しい女と)


 フラウちゃんも遊びたい。(ロメロと)


 インベントちゃんも遊びたい。(モンスターと)


 アイナちゃんは疲れたので酒でも飲んで眠りたい。


「ハア……かったるう」

実はこっそりインベントのお母さんの名前を変えました。

ペトラ・リアルトさんになりました。


本日気付いたのですが元の名前は……「アイナ・リアルト」

誰にも指摘されなくてよかった(笑) 恥ずかしや恥ずかしや。


あ、ポンコツな著者ですが、ブックマークと評価よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 変態は2人だと思ってたら、実は3人だったの巻 4人になるのも時間の問題か?(笑)
[良い点] 一気に読んでしまった 面白すぎる 工夫や研究して強くなるのすき
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