快楽殺人ならぬ、快楽殺モンスター系主人公
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探知などやったことの無いフラウ。
ロメロがやれというので、どうにかやってみるフラウ。
(あ~……なんか……来るっす!? だけど……?)
モンスターの気配を察知したフラウ。
「あの~」
「どうした? フラウ」
「モンスター……いましたよ。多分」
「ははは、やるじゃないかフラウ!」
ロメロに褒められて少し顔が紅潮するフラウ。
インベントは「うひょう!」と声をあげた。
「でも……なんか変なんすよね。ヨロヨロしてるっすね。
もうダメージを負ってる感じっす」
「んん? モンスターがダメージを負っているだと? それは妙だな」
ラットタイプのように知能が低い場合を除き、モンスター同士では基本的に群れないし戦わない。
モンスターがダメージを負うのは基本的に人間が攻撃した場合のみだ。
「よし、見に行くか」
「あ、いや。こっちに来てます」
「むむ? それもまた妙だな」
モンスターは警戒心が強い。
また自分自身のテリトリーを守るタイプのモンスターが多い。
テリトリーに侵入したわけでもないのに近寄ってくるモンスターに違和感を覚えるロメロ。
な~んにも考えずワクワクしているインベント。
「あの木の陰から来るっす」
フラウが指差した木。
出てくるモンスター。
「お、おおお!?」
久しぶりのモンスターにインベントが歓喜の声をあげた。
灰色のウルフタイプのモンスター。
ところどころにぶち模様があるように見える。
黒い斑なぶち模様。
だが、ただのぶち模様ではない。
「――あれ、怪我してるな」
「そうっすね」
モンスターは数カ所に傷を負っていた。
流れた血がぶち模様を形成していたのだ。
「ふ~~む、人間相手にやられた傷ではない気がするな」
『この辺は森林警備隊も来ないですよ』
「ふむ……妙だな。ナニがアレに傷をつけたんだ??」
ロメロは不可解なウルフタイプモンスターに首を傾げる。
モンスターはアイナ隊の面々に気付き、威嚇してくる。
とはいえ、ロメロとフラウにとっては手負いのウルフタイプモンスターなど脅威ではない。
そして――
「た、倒しちゃっていいですか!?」
モンスター狩り欠乏症のインベントが、その時を今か今かと待ちわびている。
「うん。そうだな。インベントに任せよう」
「やったあ! 作戦とかあります!?」
「特に無いな。手負いだけど、特殊能力持ち(イレギュラー)かもしれん。
気は抜くなよ」
「はあーい!」
元気よく飛び出すインベント。
『え!? インベントひとりに任せちゃうんすか!?』
驚くアイナ。
手負いとは言えモンスター相手にインベントひとり。
Cランクに分類されるウルフタイプモンスター。
本来ならば、状況に応じて逃げることも選択肢にはいる。
だがロメロはアイナの不安を一蹴した。
「はっはっは、インベントひとりで十分だよ。
なにせロメロチャレンジを二度もクリアした男なんだぜ?」
**
インベントは飢えていた。
ロメロという人型モンスターとの戦いは面白かった。
だが、ホンモノのモンスターとはやはり違う。
幽結界を破るために疾風迅雷の術を開発したが、モンスター狩りはスピードだけではだめだ。
分厚い筋肉の鎧や、幽壁をぶち抜く火力が必要である。
ロメロチャレンジは一撃を喰らわせるだけでよかったため、火力を求められなかった。
そのため殺傷力の低い棍棒や、軽い剣を使っていた。
だが今、インベントに求められるのは総合力。
モンスターの攻撃に対応しつつ、屠る火力も必要だ。
(モンスター狩りといえば……火力も重要だもんね!)
インベントはモンスターに真っすぐ接近した。
不用意な行動のようにも見えるが、いつでも回避できるように疾風迅雷の術は準備している。
(なんだ。動かないんだ)
手負いのモンスターはインベントを威嚇しつつも、動かず攻撃してこない。
(ま、いいけど。
ほら盾だよ~)
インベントは盾を一枚投げた。
モンスターは弾き飛ばす。
(はい、次は丸太だよ~)
長さ二メートルの丸太を続けて二本、あえてスピードを落とし倒れかかるようにモンスターめがけて出した。
モンスターは驚きつつも、簡単に弾き飛ばした。
(はい~、新作の人型人形だよ~)
丸太二本。
そのあとは丸太を細工し人を模して造られた人形をモンスターの右側に投げた。
モンスターはすぐに、人形が人間ではないことに気付く。
だが同時に――
(サッキノヤツ、ドコイッタ?)
インベントは目の前にいない。
眼前には盾と丸太と人形が転がっている。
完全にインベントを見失ったモンスター。
だが人間の臭いは残っている。
ただその人間の臭いは、人形から発せられている。
人形にはあえてインベントが寝間着に使っていた服を着せたのだ。
困惑するモンスター。
――困惑が最後の感情になるとも知らずに。
**
インベントは宙にいた。
丸太と人形を出した後、すぐに縮地でモンスターの頭上に飛んだのだ。
盾も丸太も人形も、全てはインベント本体を隠すため。
(人間と違って――わかりやすくていいなあ、モンスターは)
インベントを探しているモンスターを見て、インベントは嗤う。
(探知能力は――多分無いね)
紅蓮蜥蜴は広範囲の探知能力を有していた。
死角となる真上であっても居場所を探れるモンスターは存在する。
だから油断はできない。
ただ、インベントがこれまでに対峙してきたモンスターから統計的に考えると、探知能力があるモンスターはごくわずかだ。
(疾風迅雷の術――ベータ空間)
疾風迅雷の術を使い、モンスターの真上で停止するインベント。
ちなみにアイナに猛反対されたため、忍者装備はお蔵入りとなった。
さすがに忍者装備は、この世界では奇抜すぎた。
インベントとしては不服だったが、アイナが怒るので従った。
だが忍者小手だけは継続して利用している。
疾風迅雷の術は汎用性が高いからだ。
さて――
(出でよ――――究極武神大剣!)
インベントは神話の時代から受け継がれる武器である、究極武神大剣を召喚した。
――いや収納空間から重量級の剣、クレイモアを出した。
重さが10キロ近くある大剣クレイモア。
森林警備隊で一般的に使用されている剣が一~二キロ程度なので規格外に重い。
そもそも森林警備隊では移動の邪魔になるから重量武器は好まれない。
そんな重量武器である究極武神大剣をインベントはどこから持ってきたかというと、ロメロチャレンジで使用したフルプレートメイルとセットだった大剣である。
それは剣というにはあまりにも大きすぎる……と言うほどではないがインベントが扱える代物ではない。
もちろん収納空間無しでの話だ。
(よいっしょっと!)
空中で制止し究極武神大剣を両手で剣先が天を向くように持った。
(本当は、回転斬りをやりたいんだけど……やると俺の肩が抜けると思うんだよね。
ま、これでいいや。武器加速・小)
究極武神大剣を収納空間を使い、剣先を少~しだけ加速させた。
重量武器である究極武神大剣をそのまま武器加速してしまうと、威力は大幅に上がるのだがインベントの肉体が耐えきれない。
なのでかなり加減して武器加速を使う。
とはいえ10キロの究極武神大剣が振り下ろされるわけである。
いかにモンスターでもまともに喰らってはひとたまりもない。
ただモンスターには幽壁がある。
危険を感じた時、自動的に発動する幽力の盾。
幽力はモンスターのサイズに比例するため、大きければ大きいほど幽壁を削るのは大変だ。
大きいことは強さに直結する。
だが、幽壁は危険を感じた時に発動する。
たった今、モンスターはインベントを探している。
インベントは――
いや人間は――
羽の生えていない動物は大地から逃げられないはずなのだ。
だから困惑しているものの上からの攻撃に危機感など持てるはずが無かった。
モンスターの意識外から、インベントの剣がモンスターの腰部分に触れた。
そして肉を裂き、背骨を叩き割り、腹から剣が抜けた。
モンスターはいつの間にか真っ二つになっている。
「うふふ、致命的一撃究極武神大剣だよ」
命を刈り取る感触が手に残っている。
久しぶりの感覚に恍惚感を覚え、ニヤリとするインベント。
モンスターを狩る。
それだけで彼は十二分に満たされるのだ。
インベントは気づいていませんが、戦闘力がかなり上がっています。
とはいえ、範馬の血や勇者の血を引いているわけではないので、急激なパワーアップ展開はございません。
ジワジワ成長系です。