レッツ、ロメロチャレンジ!⑤ かったる~いけどやってみよう
インベントは任務から戻ってきたロメロのもとに向かう。
三日ぶりの再会だ。
「ふむ? インベント君のガールフレンドかな?」
本日はインベントの数少ないお友達のアイナが一緒にやってきた。
アイナは愛想よく笑う。
「あ、私、アイナって言いますぅ~。ロメロさんの大ファンなんですぅー!」
声高く。明るい笑顔。上目遣い。
アイナらしさはゼロである。
「キモいよ……アイナ」
「き、キモい言うな!」
「だってキモいもん。変な喋り方してさ」
「う、うっせえ!」
二人やり取りをみてロメロは笑う。
「ははは、中々面白い子だね」
アイナは髪を軽くクシャクシャした。
「ハア~、まあいいや。
すんません、ロメロチャレンジってやつを見てみたくてですね……見学してもいいですか?
ダメなら帰ります」
ロメロチャレンジは人気のない場所で行なっている。
むやみやたらとロメロチャレンジを見せる気はロメロは無いからだ。
というよりもロメロの戦いが見たい人はたくさんいる。
『陽剣』のロメロは伊達じゃない。
「いや。構わないよ。
インベント君の作戦参謀ってところかな?」
「いやいや~。ただの野次馬ッスよ~」
「ふ~ん」
ロメロはじぃっとアイナを見た。
「い、いや~ん。スケベな目で見ないでくださ~い」
「……ははは。これは失礼」
**
ロメロチャレンジが始まり、インベントは挑みかかる。
だがことごとく攻撃は弾かれる。
幽結界の中には入れない。
もしもインベントが二人いて二人がかりでもロメロチャレンジは成功しないであろう。
それぐらいロメロの技術は卓越していた。
そもそも現状、ロメロはインベントに怪我をさせないようにできる限り優しく幽結界から退場させている。
まだまだロメロに余裕がある証拠だ。
そんな様子をアイナはじいっと見ていた。
そして――
「かったりいな~」
と呟きつつ、あることを思いついてしまった自分が嫌になった。
そして思いついた衝動を放棄できない自分自身を軽く自己嫌悪するアイナ。
試してみたい好奇心が捨てられない。
仕方なく、小休止のタイミングでロメロに声をかけた。
「あの~」
「なんだい? アイナさん」
「私も……ロメロチャレンジ、やってみてもいいですか?」
「ほお~! 構わないよ! 君の腕には興味があったんだよね」
「……そんな大したもんじゃねえっすよ」
インベントは驚いている。
「あ、アイナが戦うの!?」
アイナが戦うことに? ――否。
「あ、アイナがやる気出してるー!!」
アイナの口癖は「かったる~い」だ。
アイナはめんどくさがりだ。
アイナはサボり魔だ。
昨日終わらせた仕事を、今日終わらせたフリしてでもサボっちゃう女の子だ。
サボリーマンならぬサボリ隊員である。
「うっせえうっせえ!」
「だ、だって!」
「ホレ。黙って軽い剣を寄こせ」
「う、うん」
アイナは軽い剣をインベントから受け取り、感触を確かめる。
(剣なんて持つのはひっさびさだわ)
アイナは軽く剣を振う。
その動きを見ただけでロメロは理解した。
「いいねえ。やはり筋がいいな」
「ロメロさんほどじゃあないっすよ。
あなたは剣の才能もルーンの才能もその他諸々全部持ってるんでしょ?」
「ははは、それはそれで……面白くないんだけどねえ」
「へっ! 贅沢なお人ですねえ」
アイナは構えた。
相手に背中が見えるほどの一見バランスの悪そうな独特な構え。
「ほほう……見たことのない構えだ!」
「それじゃあまあ、行きますよ?」
「来たまえ!!」
インベントから幽結界に関して聞いていたわけではないが、アイナは幽結界のギリギリまで接近した。
インベントとの戦いを眺めつつ、ロメロの癖や間合いを見ていた。
そしてロメロが四メートル以内に侵入してくるタイミングで対応していることをアイナはすぐに理解した。
実際問題、ロメロは幽結界の中に入ってこない限り攻撃しないわけでは無い。
ただ、ロメロチャレンジ中はスリルを楽しむために待ちの姿勢なのだ。
アイナは結界の中に――踏み込んだ。
自動的。
機械的。
まるでパターン化されたような動きで、ロメロは踏み込んできたアイナを排除する動きを見せた。
インベントでは剣で防御することができないほどの速度。
(ここだ!!)
アイナは剣を振う。
ロメロの恐ろしく速く鋭い剣戟にギリギリ間に合う。
ロメロとアイナの剣が交差する。
衝撃が両者の剣に走った。
「いったああああーー!!」
アイナは激痛で剣を手放した。
ロメロの一撃はアイナの想定以上に重かった。
そしてアイナの握力では、ロメロの斬撃を持ちこたえることはできなかった。
「はっはっは。随分とサボっていたのかな?
動きに身体がついてこれていないぞ?」
「て、手首折れるかと思った……! かあ~こりゃあ無理ですわ~」
「いやいや、かなり筋がいい」
ロメロは若い才能に触れ、軽く興奮している。
アイナの剣の才能は、ロメロを喜ばせるレベルの才能があるのだ。
「しかしまあ……これがアタシの限界っすね~。
後はインベントに任せますわ~」
「ふふふ、突破口は見つかったかな?」
「ん~……まあ……でもなあ……」
アイナはロメロチャレンジの突破方法を思いついていた。
しかしアイナは頭を悩ます。
「ちなみに、アイナさん」
「ほ?」
「君の想定は正しいよ。このロメロチャレンジを突破する方法の一つ。
それは…………『武器破壊』」
「……いいんですか? 答え言っちゃって」
「構わんよ。ロメロチャレンジを突破したのは今のところ二人だけ。
『妖狐』レイシンガー・サグラメントと、フラウだけだ。
レイシンガーはルーンの力で突破した。そしてフラウは武器破壊で俺から一本とった」
アイナは考える。
そして――
「そのフラウって人……強いんですか?」
「粗削りだけど結構強いさ。剣のセンスはアイナさんが上だと思うが身体強化系のルーンとしなやかだが鍛えられた肉体。
持久戦を挑んできて、さすがに木剣では捌ききれなくてね。あれは楽しかったなあ」
アイナは「あ~かったりいなあ」と呟いた。
「『武器破壊』の路線は悪くない。
だけど――」
「インベントにできるか? って話ですわな~。いや~無理ゲー……」
「はっはっは! 彼は面白い。収納空間の扱いに関しては右に出るものがいないだろう。
というよりも収納空間を戦闘利用しようとする発想は……どうやって思いついたんだろうね」
インベントが収納空間を戦闘利用するに至った経緯は大きく分けて二つある。
一つ目はモンブレの世界を知っていたこと。
モンブレの世界の収納空間は、容量制限が無くこの世界よりスペックが高い。
超大型の剣から大型ボーガンに瞬時に換装することも可能だ。
モンブレの世界と同じレベルで収納空間を使おうとすれば、この世界の収納空間の制約に引っかかってしまう。
インベントはスペックの差を埋めるために異常なレベルで収納空間を使い込み研究してきた。
だからこそインベントは収納空間の扱いに関しては比類できないほど熟練の腕を誇っている。
そしてもう一つが、使い込んだ故にこの世界の収納空間の優位性を見つけたことだ。
反発移動のような反発力が発生することや、ゲートを手元以外に出せることなどだ。
元々凝り性な性格のインベントは収納空間の使用方法のみを鍛えてきた。
逆に言えば武器の扱いをはじめとした肉体の扱いに関しては未だ低レベル。
ロゼやフラウに負けず劣らない剣術の才能があるアイナだからこそ、ロメロの攻撃に剣を合わせることができた。
インベントに同じ動きを求めるのは酷だった。
「……ま、対策考えてきますかね~」
「楽しみにしておこう」
そう言ってぼーっと座っているインベントの肩をアイナは叩いた。
「今日は撤退するぞ~旦那~」
「え? そうなの?」
「ちっと作戦会議だ」
「うん、わかった。それよりもアイナって剣使えたんだね!」
「あ~はいはい。その話はしなくていいからね~」
ロメロは笑いながら二人の背中を見ていた。
そろそろインベントの反撃が始まります。
そういえば最近、ガンダムZZを見ました。
まあ本編には全く関係ない話ですよ(意味深
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