レッツ、ロメロチャレンジ!②
「よおし! それじゃあロメロチャレンジについて説明するぞ!」
ロメロは一人嬉しそうに話し出す。
連れてこられたインベントとフラウは困り顔だ。
そんなことをロメロは気にしない。
「ロメロチャレンジは、俺から一本取れば勝ちという非常にシンプルなルールだ。
一本取れれば俺ができることならなんでも叶えてあげよう!
インベント君は……『いつでもモンスターを狩る権利』だったかな?」
「あ~……そうですね。でもそんなことできるんですか?」
「はっはっはっは。抽象的なお願い過ぎるがそんなこと簡単だ。
アイレド森林警備隊の隊長職にでもなれば、いいんじゃないか?
それぐらいならまあ、俺の力でもできるさ。多分な」
「多分なんですね」
インベントはロメロの正直な発言に笑みを漏らす。
「ま、アイレドの総隊長さんは知り合いじゃないからなあ。
だがまあ、アイレド以外の町でも良ければ隊長職に捻じ込むぐらいできるさ。
君が思っているよりも『宵蛇』ってのは力があるんだぜ?
もしくは…………君が『宵蛇』に入隊するってのもアリだな」
「『宵蛇』に入隊したらモンスターを狩れるんですか?」
「はっはっは! まあモンスター狩りだけが仕事じゃないがな!
今回のドレークのようにイング王国に発生した大型モンスターを討伐することも多い」
「大型モンスター!?」
インベントは顔を輝かせた。
「なんだなんだ? 大型モンスターを倒したいのか?」
「はい!」
「はっはっは! だったら『宵蛇』に入るのが一番だ」
「やりましょう! ロメロチャレンジ!」
「よおーし! やる気が出てきたみたいだなあ! 嬉しいぞ~」
盛り上がる二人。
『宵蛇』の末席であるフラウは、舌打ちした。
「ちょっといいっすか~? ロメロ副隊長」
「なんだ? フラウ」
「なんで今ロメロチャレンジをやるんっすか?
正直……こんなヒョロい奴がロメロチャレンジを受けること自体ムカつくんっすけど」
膨れっ面のフラウ。
「はっはっは! 見た目で判断するのは甘いぞ。インベント君は何か持ってるタイプだ。
ま、フラウみたいなタイプとは違うがな。……そうだインベント君」
「はい」
「このフラウ・ファイテンもロメロチャレンジに成功して『宵蛇』に入隊したんだよ」
「あ、そうなんですね!」
フラウは19歳。
インベントは大して歳が変わらないように見えるフラウを見て、少しだけ安心した。
逆にフラウはインベントが思っていることを察して、少しイラついた。
(アンタが思うほど、ロメロチャレンジは甘くないっつ~の)
「さて……ロメロチャレンジなんだが色々ルールがある。
といってもインベント君にはあまり気にしないでいい」
「気にしないでいい?」
「そうだ。ルールは俺に対して課すルールだからだ。
俺が本気を出してしまうとロメロチャレンジは面白くないからな」
そう言ってロメロは剣を構えた。
「その一。俺は【太陽】のルーンは使わない」
ロメロの剣が幽力を纏う。
「お、おおおお! なんかすごい!!」
「ははは、『陽剣』は伊達じゃないんだぞ~」
ロメロがゆっくり剣を振るうと、木がまるで溶けるように切断される。
「すごい……バンカース総隊長の【保護】に似てるけど……攻撃力はけた違いだ!」
「はっはっは! 幽力を具現化させるルーンは色々あるが、攻撃力は圧倒的に【太陽】なんだよ。
とはいえ、【太陽】を使うと相手が危険だし、なによりロメロチャレンジが面白くないからな。
だから【太陽】は使わん。
次にインベント君――」
ロメロはナイフをインベントに渡す。
「ナイフを俺に向けて投げてくれ」
「はい!」
フラウはドキリとした。
(ちゅ、躊躇しないのかよ?)
インベントはすぐにロメロに向けてナイフを投げた。
――ピキン
ロメロの肉体にナイフが触れる前に、ナイフは弾かれてしまった。
「おお! 凄い!」
「はっはっは、俺ぐらいになると幽壁を自在に操れるようになるんだが……これも使わない。
当たりそうな攻撃を幽壁で弾いてしまうと面白くないからな!
逆に言えば俺に幽壁を使わせた時点でインベント君の勝ちってことだ」
ロメロはナイフを拾い上げ仕舞う。
「そして最後に、ロメロチャレンジは期間中に何度挑んできてもいいぞ。
俺も予定があるから毎日ってわけじゃあないが、空いてる時間はいつでもオッケーだ!
期間は……一か月ぐらいかな? それ以上はおそらく『宵蛇』はアイレドを離れてしまうだろう」
「わかりました」
「それじゃあ……早速やってみるかい?」
「はい!」
インベントは木剣を手に取った。
「あ、武器は何を使ってもいいからな」
「え?」
「剣でも槍でも使うと良い」
「でも……」
インベントは「危ないですよ」と言おうとしたが――
「大丈夫さ。当たらないから」
と自信満々に笑うロメロ。
インベントは「わかりました」と言いつつ少しやる気が出てきた。
「それじゃあいいですか?」
「ああ、いつでもおいで」
余裕綽々のロメロに対し――
(ちょっとムカつくな~! 頑張っちゃおっかな!)
対人戦では中々燃えないインベントだが、たったの一撃を食らわせただけで報酬が貰えるのだ。
これからのモンスターハントライフのために本気になった。
「――いきます」
敢えて何も持っていないように見せた右手。
目にも止まらぬ早業で収納空間からナイフを取り出す。
そしてナイフを投げた。
だがロメロは右手でナイフを摘まんだ。まるで止まっているナイフを摘まむように。
再度ナイフを投げた。
ロメロは右手のナイフを投げ、撃ち落とす。
【器】から早業で取り出したナイフに、全く驚いていない。
全く優位にたてていない。
「くっ!」
インベントは盾を矢継ぎ早に三枚投げた。
ロメロはスーっと剣を伸ばし、剣先で払う。やはり全く優位にたてていない。
(高速換装で驚かしてやる!!)
インベントは飛びかかりながら、剣から薙刀に持ち替えた。
武器の射程を一気に変化させることで、ロメロを少しでも驚かせようとしたのだ。
驚かせようと思った時点で、一本とれないことをインベントは本能的に理解している。
それでも突破口にはなるかもしれないと思い、決行した。
遠巻きで見ていたフラウはポツリと呟く。
「幽結界……」
インベントの肩先にいつの間にかロメロの剣が触れていた。
そして優しく押し戻される。
「――え?」
ロメロはニコニコしている。
「ふふふ、いいね。インベント君。
君のルーンは【器】かな? 空を飛べると聞いていたけど、色々面白いことができるんだね」
インベントは息を飲んだ。
「まあ、俺に陽動や奇襲の類は効かないぜ?
俺の間合いに入ったら全て止めちゃうからな。ははは」
インベントはゾクリとした。
(この人……本当にヒトか?)
インベントが知る中で一番強い男は、バンカースかノルドである。
まともに戦えば絶対に勝てない相手。
だが策を弄すれば突破口はある。可能性はあるのだ。
だが――このロメロという男には絶対的な何かを感じていた。
ロメロ・バトオ。
『宵蛇』最強の男であり、イング王国最強の男であることをインベントはまだ知らない。
ロメロさんは最強です。
色々理由はありますがとにかく最強生物です。
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